第28話 試すこと、試される心
毎週月曜日の朝に定期更新。
筆が乗ったら不定期に追加更新してます。
次は剣豪の番だ。
治癒ネズミと交代するように正解のパネルに立つ。
「ふと思ったんだけど」
剣豪が2人に問いかける。
インゴットは不思議そうに聞き返した。
「なんですか?」
「あそこの横道を行くと中ボス戦があるって言ってたじゃん?」
「ええ、そうらしいですよ」
インゴットは事前に掲示板で情報を仕入れてきているので、それは間違いない。
なにしろ、ダンジョン攻略の掲示板は、日本国のダンジョンを管轄する中枢組織が管理運営している。
国が発信する情報に間違いがあってはいけない為、厳重な審査と調査の元、攻略情報として記載されているのだ。
「魔物をここまでおびき寄せて、蹴り飛ばしてパネルに乗せたら正解かどうか分かるんじゃね、って思って」
「!」
突飛な発想だが、トラップダンジョンの攻略としてはたまにある戦法だ。
たとえば感圧式の床を踏むと落とし穴が作動する、という一度きりの罠を、魔物に踏ませることで解除する、というシチュエーションは存在する。
今回の地雷に関しても、確かに、正解か否かの判別には役立ちそうだ。
だが、インゴットはばつの悪そうな顔で否定した。
「あー、既に試した人がいるのですが、仕様上できないようです。中ボス戦の部屋に入った時点で出入口が閉鎖されて、敵を殲滅するまで開かず、魔物の死体は残らないので使えない……のだとか」
それを聞いた剣豪はあっけらかんと笑う。
「そっか〜。ま、それならしゃーないね〜」
2人の会話を聞いていた治癒ネズミは、ひとり静かに衝撃を受けていた。
(……! ダンジョン攻略って、そんな自由な事をしても良いんだ……)
魔物と戦って勝つか負けるか。
地雷を踏んで爆発するか不発になるか。
2つに1つ、そういう解しか無いのだ、と。
治癒ネズミはよくも悪くも真面目だった。
その真面目さによって助けられる事もあったが、真面目さ故に視野が狭まっていたのだ。
今、彼女の視界は開けた。
(──それなら。自由な発想を試しても良いのなら)
1つだけ、我儘を。
自分の番になったら言わせてもらおう、と。
治癒ネズミは密かに思った。
「そんじゃ行きまーす えいっ」
剣豪は一歩踏み出し、次のパネルに乗る。
……爆発しない。
正解の床だったようだ。
感想、レビューなど、とても励みになっております。
気軽にブックマークや評価をしていただけると嬉しいです。




