第21話 運と度胸のダンジョン
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ダンジョンの話をしていると、インゴットはふと思い出す。
そういえば、若者の間で度胸試しに流行っているダンジョンがあったな……と。
自分と行くかは別として、ひとまず思いつきを提案してみる。
「治癒ネズミさんは[運否天賦の地雷迷宮]をご存知ですか?」
「……? いえ、初めて聞きました」
[運否天賦の地雷迷宮]──近頃、若者の間で流行っている難易度☆3のトラップダンジョンだ。
名前が示す通り、地雷が地中に埋まっており、運が良い者は踏まず、運が悪ければ爆発して強制帰還で戻される。
このダンジョンで手に入る報酬は、難易度に見合って豪華な物だ。
「そうですか。度胸をつけたい、というのであれば最適なダンジョンかなと思いまして」
「なるほど……。でも、その……わたし……」
治癒ネズミは少し考えた後、言い淀む。
けして急かさず、インゴットは返答を待った。
「……わたし、ダンジョンでは足手まといなんです。スキルが治癒士だから……」
「それは……」
近年では薄まりつつあるが、つい数年前までは治癒士差別という社会的な問題が存在していた。
この世界のダンジョンにおいて、自分や味方を回復させる技というのは軽視されやすい。
軽い怪我であれば薬師の作った回復薬、つまりポーションなどで事足りる。
瀕死の怪我は、そもそも瀕死の状況になる瞬間に強制帰還が発動するので、治す機会が無い。
☆4や☆5の高難易度ダンジョンでは、ダメージを伸ばすことに特化した攻撃役や、盾役、味方の火力を上げる強化役で構成された火力編重のパーティーばかりが結果を残している。
つまるところ、
「瀕死になっても入口に戻されるだけなんだから、回復より殴った方が良いよね」
という、脳筋プレイが主流なのだ。
スキルは、生まれ持った先天性の能力だ。
これが欲しいあれが欲しいと望むものではなく、また努力によって獲得するものでもない。
故に、回復のスキルを持っている者は、火力に直結するスキルを持っている人よりも劣るとされ、差別的な扱いを受けることが多かった。
「そうでしたか……」
「……はい。学生時代に、その……いじめってほどではないんですが、こんなわたしとじゃ誰もパーティーを組んでくれなくて」
「……」
インゴットもまた、自分のスキルを振り返る。
ダンジョンに鍛冶師なんていらない。
そう、言われ続けてきた。
もっともだ。
武器を作るなら安全な所で時間をかけて作れば良い。
武器を使うなら持ち込めば良い。
パーティーを組んでくれる人がいないから、インゴットはソロでダンジョンに潜っている。
同じ不遇スキルを持っている治癒ネズミの境遇に、インゴットは共感を示していた。
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