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それにしてもルーク君に友達いたのね。
いじめられているんじゃないかと心配していたので友人がいることにとても安心してしまった。身分の差はあるようだが男同士の気安い会話からは二人がルーク君に悪意を持っているようには感じないし、ルーク君も二人に遠慮しているようには見えない。
「何で笑っているんですか?」
「え、やだ。私笑ってた? ルーク君のお友だちに会えたのが嬉しくてにやけちゃったのかも」
「友達っていうか……ただクラスが同じだけの知り合いですよ」
「ロアーノ君とグリム君って言ったよね……二人とも良い子みたい。貴族の子供なの?」
ルーク君の説明によると二人とも貴族なのだが変わり者で、平民で孤児のルーク君によく話しかけてくるとのことだった。最初は他の貴族と同じでルーク君を見下しているのかと思い、無視をするか適当にあしらっていたらしいのだが、それでもロアーノがしつこく話しかけてくるため今では一緒に行動することも増えてきたとか。グリムは無口だが強くて優秀な男で、今度行われる学校交流大会の選出候補生徒の一人だったらしい。
つまりルーク君のライバルの一人だったわけだが、学校長と同じで「優秀な生徒が選ばれるべき」とルーク君を後押ししたそうだ。
ルーク君から話を聞けば聞くほど私の中でロアーノとグリムの好感度は急上昇していく。
やっぱり良い子達のようだ。
その後も私達は日が暮れ始めて肌寒くなるまで王都を二人で散策した。
くしゅんとくしゃみをすると早く家に帰りましょうとルーク君が私の手をしっかりと繋ぎ直す。
「昨日の夜、孤児院寒かったですよね? もしかして風邪を引いたんじゃないですか?」
「大丈夫。寒くないようにってミーシャちゃんが一緒に寝てくれたの。布団もたくさん貸してもらって温かいくらいだったわ」
ルーク君の世界の夜は本当に真冬のような寒さだった。
寒さで何度か目が覚めたが、一緒に寝てくれたミーシャの身体がホッカイロのように温かくて何とか眠りにつくことが出来た。昨晩のことを思い出しただけでもう一度くしゃみが出てしまい、ルーク君の歩くスピードが少し上がった気がする。
「ねぇ、ルーク君」
「なんですか?」
「学校交流大会に本当に行ってもいい?」
「もちろんです。俺、頑張りますから絶対に見に来て下さい」
「うん。あ、お弁当持って行ってもいいかな? 何食べたい」
「え!?」
お弁当と聞いて目を輝かせるルーク君。
「ルーク君の好きな唐揚げに、あ、お弁当だから厚焼き玉子も作って……お米とパンどっちがいいかな」
「俺お米が好きです」
「じゃあおにぎりかな?」
メニューを考えていると私までうきうきしてきた。
成長期の男の子のための満腹弁当。どんなものが喜ばれるだろうかとまだ先のことだが頭の中で献立を作り始めていた。
早歩きだったからか、あっという間にルーク君の部屋についた。
壁に触れて二つの世界を繋げて自分の部屋に戻る。ふぅと息を吐きながら床を見て悲鳴をあげそうになった。
玄関の方からぽつぽつと床に血痕が続いている。一瞬「え、何これ!?」となったが、自分の血かとすぐに思い出す。
「どうかしましたか?」
立ち止まったままの私の背中の方からルーク君の声がする。
「いや、ちょっと自分の血にびっくりしちゃっただけ……結構血が流れてたんだなぁって。あっ! 私、ルーク君の部屋も汚しているんじゃないの?」
振り返ってルーク君の部屋を見るがルーク君の部屋はあまり汚れていなかった。
「あ、俺の部屋は大丈夫です。あの、すぐに抱きかかえたので……」
それは本当にごめんなさいだ。
「ちょっと先に掃除しちゃおうかな。夜ご飯は買い物に行けていないからあるもので適当に作っちゃう……ちょっと待っててね」
「俺は大丈夫なので」
「ごめんね……それにしてもあっつ! え、ちょっと待って! 何でこの部屋こんなに暑いんだろう」
室内がサウナのように暑い。そして何だか埃っぽい。
一瞬で額に汗が浮かび、それを拭いながら少しでも涼しくて新鮮な空気を求めて窓を開けた。
「ひえっ! 外も暑い!」
いくらなんでも六月でこの暑さはない。
これじゃあ、まるで真夏の暑さだ。慌てて部屋の冷房をつけて涼しくなるのを待った。とてもじゃないが自分の部屋には居られず、その間はルーク君の部屋に避難していた。
部屋はすぐに涼しくなったが、何だか違和感がある。
とりあえずと部屋の明かりとテレビを点けてみた。
夕方のニュース番組で、天気予報のお姉さんが明日の天気について話している。
『お盆期間中もまだまだ暑い日が続きそうです。皆さん熱中症にならないように十分水分を取るようにしてください。続きまして一週間の天気です』
ん? お盆?
聞き間違いかと思った。
だって数日前に梅雨入りしたというニュースを聞いたばかりなのに、お盆が過ぎたってどういうこと?
テレビ画面には一週間の天気が表示されているのだが、真っ赤な太陽が汗をかき猛暑日を教えている。しかも日付の表示はやはり八月のもので……
「え? うそ?」
手に持っていたテレビのリモコンを床に落としてしまった。
リモコンの蓋が外れて電池がむなしく転がっていく。
「どうしたんですか? さっきから何か変ですよ?」
「ルーク君、変なの……何かね、ふた月くらい過ぎてるんだけど」
一昨日は間違いなく六月だったはずなのだ。




