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04話 城郭都市へ

 森の街道を歩いて少し経った頃。

「なあ。こんな夜中に歩き回るのはもうやめようぜ、いつ襲われるか分かんねえだろ?」

 確かに不気味な感じだが、この老人をはやく安全な場所に送り届けるのが先だ。それにこいつが逃げたくて仕方がないのは体の動きでわかる。


「つべこべ言うな、お前がやったことのせいだ」

「俺はその爺さんは殴ってねえ、殴ったのはあの二人だ!」

「はあ…何言ってんだ。それより後どれくらいで着く?」

「この森から抜けたら街が見える。それよりあんた、本当に俺を突き出すつもりか?あんたを助けてやったんだぜ?それに免じて見逃してくれよ。な!」


こいつ恩を売ってるつもりか?本当に腹立たしい奴だな…

「お前は何も反省してなさそうだ。集団で家に上がり込んで暴力を働くなんて立派な犯罪行為じゃないか。もう黙ってろ」

「違う!俺はなにもやってねぇ!お前がアンデットだって言いふらすぞ!」

「別にいいぞ。違うからな。それにあの墓場になんの用があったんだ?って聞かれるだけだ。墓荒らししてましたって自分から言いたいなら、まあいいんだが」

「結局俺は何も盗ってねえんだ、悪いことはしてねえ。クソ、あのハゲ偉そうに威張り散らしてたが、あいつが女を犯しなんかしなけりゃギルドもクビにならなかったんだ!」

「嘘をつくな!街で聞いた話じゃ三人で襲ったって聞いたぞ!それにワシの小屋に居座っとったのを見つけたらいきなり襲ってきた、お前らが悪い!殺されて当然だ!!」

 興奮する物質が入ってる薬のせいで、妙に気が立ってる。


「おい、あまり怒ると…」「それに、通りかかった行商人を襲って犯してしてやったと自慢しとっただろ!それに…」「うっせえぞこのジジイ!てめえも襲われて命乞いしてたじゃねえか!ああ!あの女行商人も犯してやったさ、いい声で鳴くからすげえ興奮したぜ、まあ今頃泣きながら神様に祈りでも捧げてるだろうよ!」


「お前、他にも色々やってたんだな…これは本格的に痛い目みないとダメだな、相手の気持ちも考えれないクズが」

「うまくいかねえのが全部悪いんだ!お前だってそんな強ぇ魔法使えんなら、もっとうまく使えよ!なんでもできるんだぜ、女も子供も年寄り供も武器をちらつかせれば何でも差し出すからな!」

「なに言ってやがる!このワシが殺してやる!」

 そう言って、背中で暴れ出す。確かにこいつは最低のクズ、気持ちはわかる、だが武器を捨てて投降する姿勢を見せたなら殺すことはできない…この地にどんな法律があるかは知らないが、こいつに相応の罰を下されるはずだ。


「おい、暴れるな、あんたは怪我してるんだ…」

「なら、あなたが殺してくれ!あんなクズ野郎、生かす価値もないじゃないか!」

「悪いが俺の私刑で終わらせていい問題じゃない。こいつはいろんな被害者を生み出してる。あんたもその一人だ、あんたはこいつの処遇を笑ってやればいい。それも出来ないぐらい傷ついた人もいるはずだ」

「クソ、クソ、クソ!なにが傷ついただ、偉そうに説教しやがって!どいつもこいつも!」

「お前はもう黙れ。街が見えてきた。そこに着いたらお前は終わりだ」

目の前に石の壁で囲まれた街が見える。あそこに着けば全部終わらせれるだろう。

「クソ!俺は悪くねえ!悪くねえんだよ!!指示されただけなんだよ!」



門をくぐるとすぐさま衛兵が寄ってくる。

「そこの者、止まれ!そいつは… 見覚えがあるぞ、あんたが捕まえたのか?」

「ああ。そうだ」

「よし、詰所まできてくれ、そのご老人は怪我してるのか。よしこっちで預ろう、聖堂まで連れて行く」

そう言って、金属の鎧を身につけた衛兵が老人を抱えてくれた。このクズ野郎は衛兵に掴まれながらずっとクソクソ言ってる。

「待ってくれ!見知らぬ方、最後に名前を教えてくれないか?」

「俺はアルヴィ・アーセナルだ。あんたは?」

「わしはリックバーグだ、この街で木材屋をやってる。また会いにきてくれ、何か礼がしたいんだ」

 そう言いながら手を差し出してくる。握手を交わした後、衛兵に連れられていった。これで任務は完了だ。


「後はお前か…」

「えーよろしいですか?アルヴィ殿?詰所まで参りましょう。そこで話を聞かせてください」

「そいつ、有名な犯罪者なのか?」

「こいつはニック。この街で強姦事件を起こして追放されたんですがね、外でも犯罪を繰り返してると聞いていました」

そう言いながら、背中を押して歩かせている。

「ところで仲間が二人いたはず。そいつらは?」


「襲ってきたから、殺した。応急処置もしてやれたが、あの老人が見えたんでそっちを優先した」

「そうでしたか。そいつは向こうに収容します。では、少しお待ちください」

 そう言い残して、ニックとか言ったか?まあどうでもいい、そいつを連れて中に入って行った。その後すぐに別の衛兵がやって来て、待合室に案内してくれた。

「ここで、お待ちください。審問官と衛兵長を呼んで参ります」

 これは、事情聴取をされるだろう。しかし、墓場に居た理由を聞かれるとな…正直に言うしかないか…

「こちらへどうぞ。身につけている武器と鞄を外してくだい、それとその兜も」

 久々にヘルメットを外す、空気の汚れがないことは『hello』が伝えてくれていた。ガイガーカウンターが鳴っていないのが何よりもの証拠だ。


 指示通りに全てを外し、その後奥の部屋に案内される。そこには立派な髭を蓄えたいかにも聖職者といった風体の男と、厳しい顔をした、屈強な体つきの騎士が居た。

「そちらにお座りください」

 強面の男の指示に従い、席に着く。なぜか追い詰められている気がするな…月明かりが差し込む部屋は緊張感に包まれている。そして目の前の男が口を開く。

「それでは、始めましょう」


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