遅くなりまして
「あけましておめでとうございます、だね」
「今年もよろしく」
「いやー、二幕終わったけど閑話が書けなかったというのが原因だね」
「そりゃ作者の事情だろ」
「そうだろうけどさ」
「三幕ってまだ中盤だよね」
「八万文字書いてるがまだそうらしい。他のも書いてるせいかどうにも後回しにされる」
「こういっちゃなんだけど、この作品が一番人気あるんだよね」
「まぁあとは二次創作の方も書いてるというのもあるだろうが、」
「一番は動画に集中しちゃっておろそかになってるところだろうね」
「職探しもあるのにな」
「……でさ、」
「ん?」
「ぶっちゃけ僕たちの完結ってどこだろうね?」
「そんなこと俺らが知るか」
「だろうけどさ。君、頑なになる気ないんだろう? 平行線じゃないか」
「だなぁ……ひょっとすると卒業するまでに何かしらの変化がある可能性もあるんじゃないか?」
「未来は不確定って? そうだけどさ」
「まぁともかく。これからは本当に遅くなるかもねっていう報告会はこれぐらいかな?」
「あいつもなんで昔はすらすらかけていたのか疑問らしいしな」
「頑張っていきますんで」「よろしく」
「……」
「……」
「帰るか」
「そうだね」
年を越して三が日を過ぎたある日。
朝起きて飯を食べてから俺は急いである場所へ向かった。
その途中。町に住む爺たちが年甲斐もなく徒党を組んで前方をふさいでいた。……どうやら今年は俺を行かせないことに重きを置いたらしい。
また厄介な集団で来たなと内心で舌打ちしながら走ってる俺は、衝突する少し前の距離で地面を踏み出す足に力を込めて塀の上に飛び乗りそのまま駆け出す。
『なんじゃと!?』
盲点だったのか驚く一同に対し内心で『相手にしてたら思うつぼだろ』とツッコミをいれつつ無視する。
そして、続く関門に心当たりがあった俺は走りながらも深いため息をついた。
この光景は俺が小学生になってから続いている風景の一つで、俺が商店街へ行くのを阻止するという、言葉にすればひどい、けれど実際見るともっと大人げないものである。
こうなったのは商店街でいつも通り買い物をしていた時だった。
当時お年玉をもらえてうれしかった俺は、一部をもって商店街の福袋を買いに行った。
その結果何が起こったかというと……赤字覚悟の福袋が俺の手のもとに収まり、それを奪い取ろうとするやつらを返り討ちにして帰るということが続いた。
すると今度は商店街側が『つとむを妨害して福袋を売り切らせたら賞金を出す』とか言いやがったのがすべての始まり。
それに歓喜した住人の連中がこうして妨害してくるわけである。
とまぁ事情の説明をこれくらいにして場面を戻す。
塀の上を走ってから屋根の上に飛び乗ると、今度は矢木組の連中が大きく取り囲むように屋根の上に立っていた。
ある意味予想できていた俺は思わず顔をしかめる。
「まじかよ……」
「マジだ。悪いが今回だけはおとなしく足止めされてくれ」
頭がそう言ったと同時。囲んでいたやつらが素早い身のこなしでこちらに迫ってきたので俺はジャンプしてよけ、着地する際に一人の顔面を思いきり踏んで飛び越える。
「悪いな」
「くっそ……おい! なんとしても俺達で足止めしろ!! でねぇと賞金一千万がパーだ!」
「一千万!? 今年の商店街馬鹿じゃねぇのか!?」
ちらっと聞こえた商品に俺は思わず叫ぶ。
すると今度は携帯電話が鳴ったので走りながら出る。
「なんだ!」
『あ、お兄ちゃん? 買い物行くんだったら雑煮に使う食材よろしくだって』
「分かった! あと今日ちょっと忙しいから今から少しの間電話かけてくるなよ!」
そういってすぐさま電話を切る。少しのタイムロスが命取りになるのだから。
そろそろ商店街につくなと思いながら屋根の上を飛んでいると、下の方から左右同時に矢が放たれ、こちらに向かってきたので殴って落としながら移動していると、「ふはははははっ!」と高笑いをしている鉢巻をまいたやつがいたので問答無用で金的する。
「!? ふごぉぉぉ!!」
崩れ落ちていく様すら素通りした俺は、もうすぐ商店街につくので屋根から飛び降りた。
「はぁ…はぁ……はぁ………なんとか、商店街についたな」
人でごった返している商店街の前に来れた俺は息を整えながらそうつぶやき、勝ったと思い紛れた。
結果。旅行代理店の福袋で一泊二日の国内旅行ペアチケットが手に入ったので、悔しがる商店街の連中を尻目に雑煮の食材も買って帰った。
ペアチケット? ありゃ親父達に渡したよ。俺使わねぇから。
三幕は……本当、ちょっと待ってください。




