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哀玩人形  作者: ちぐ
12/12

最終話  崩壊続行

 「スミレってね、スイートバイオレットとブルーバイオレットがあるんだって」

 「へぇー? 何が違うの?」

 「……わかんない……」

 「あはは、まぁ、さ、そのうち分かるよ!」

 「……うん……!」



 スミレが咲き乱れる頃。


 俺は春の病院の庭に来ていた。


 でもそこは小窓がある場所じゃなくて、もっと人目につく所。


 隣には彼女が居て、にこにこして話している。

 可愛いなぁ。

 あぁー駄目だ俺!! 我慢だ俺!!



 冬が終わる頃から、俺達は毎週のようにここで人形劇をするようになっていた。

 お客さんは入院している患者さん。

 彼女はまだまだ緊張してるけど、皆に楽しんでもらえて嬉しいみたいだ。

 バイオレットは、まるで生きているかのように動いてる。

 でも、もうあの時みたいな感情は抱かない。



 あの夏の日。

 彼女は俺をあの崩壊から救ってくれて、やっと現実を見させてくれた。

 つめたいものに囚われていた俺に、温かい血が通うのは、会って話せる、会って触れられる人だと教えてくれた。





 崩壊は崩れ、また始まって……





 「今日はここまでです! 皆さん、ありがとうございました……!」

 「ありがとうございましたー」














 「……あのね、スミレの話なんだけど……花言葉は知ってるの。英語の辞書に書いてあったから……」

 「ふ、英語の辞書かよ!」

 「な、悪かったですねーっ!」

 「はは、ごめんごめん、それで? なんだったの?」

 「もー……それでね、花言葉は……スイートバイオレットが『素朴』、ブルーバイオレットが『愛』と『忠実』なんだって」

 「じゃぁキミはスイートバイオレットだな! 素朴だし……くく……」

 「ちょっと、笑わないでよーっ!! 塚松君みたいに格好良い人とは違って、どーせ素朴ですよ!でみつあみですよ!」

 「みつあみは可愛いからいいよ」

 「!! ……ホント?」

 「ホントホント」


 変わったなぁ。

 もう言葉に怯えは無く、真直ぐ俺を見つめてくる。


 愛しい君は、目の前に居る、菫。



 「っていうか、塚松君はバイオレットが『愛』とか『忠実』とか言いたいんでしょ?」

 「そうだなー、菫はバイオレットみたいに忠実じゃないからなー」

 「えぇー!? ホントにっ!?」

 「あはは、冗談だよ。でもさ、忠実じゃなくてもいいだろ? 菫は、変わるから」

 「? どう言うこと?」

 微笑んで言うと彼女は怪訝な顔をした。

 愛おしくて、また笑ってしまった。






 変わるから。崩壊するから、俺達は生きてける。


 崩壊続行。


 生きてる限り、それは続く。










 「菫がスイートバイオレットなら、俺は虫かな。」

 「虫!? 何で!? 虫は嫌ーー!!」

 「おいおい……そんなに嫌がんなよー……甘い方に、虫は行くだろ?」













 あたたかい春。



 哀しさはきっと消えないけれど、



 君が居るから、俺はもう大丈夫だよ。




 キミは、愛する事を願ってくれる?













 ♪














 哀玩人形はだんだん崩れて、愛願人形になってゆく。












 誰もが崩し崩され、今日も世界は変わってく。

 君の世界をもっと素敵なものに変えられるように、少しでもいいから変われるといいな。




哀玩人形はこれで終わりです。
いかがでしたでしょうか?何かを感じていただけていたら幸いです。
ここまで読んで下さって、本当に本当に、ありがとうございました!!

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