宿屋の正面玄関から
アストリッドは付け髭と帽子をとると、ヨハネスを静かに見つめた。
輝くようなアストリッドの美貌が巻き起こる風に煽られる。
ヨハネスが目線を送ると、美麗隊が、周囲の視線からアストリッドを遮るような位置につく。
「アストリッド様、心配はご無用なのですよ。
実は、このボンクラがその気になれば、辺りの者など……まあ、いいでしょう。」
ヨハネスは艶のある微笑みを浮かべて、カイから手を離す。
アストリッドがヨハネスの目の前に立つと、ヨハネスは流麗な仕草で片膝をついた。
「ヨハネス隊長様。もう一度申し上げます。
わたくしは、護衛を望んでおりませんわ。
そのように、ご命令を発した方にお伝えくださいまし。
そして――」
アストリッドが片手を差し出すと、ヨハネスはその手をとる。
「もし、護衛以外の目的がおありでしたら、
宿屋の正面玄関から堂々と、
宿屋の親父アスティに、お申し出なさいましとお伝えくださいませ。」
「このヨハネス、しかと承知いたしました。」
ヨハネスはアストリッドの手に口づけする……
別作品も書いています。
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※完結しました




