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宿屋の正面玄関から

アストリッドは付け髭と帽子をとると、ヨハネスを静かに見つめた。

輝くようなアストリッドの美貌が巻き起こる風に煽られる。


ヨハネスが目線を送ると、美麗隊が、周囲の視線からアストリッドを遮るような位置につく。


「アストリッド様、心配はご無用なのですよ。

実は、このボンクラがその気になれば、辺りの者など……まあ、いいでしょう。」


ヨハネスは艶のある微笑みを浮かべて、カイから手を離す。


アストリッドがヨハネスの目の前に立つと、ヨハネスは流麗な仕草で片膝をついた。


「ヨハネス隊長様。もう一度申し上げます。

わたくしは、護衛を望んでおりませんわ。

そのように、ご命令を発した方にお伝えくださいまし。

そして――」


アストリッドが片手を差し出すと、ヨハネスはその手をとる。


「もし、護衛以外の目的がおありでしたら、

宿屋の正面玄関から堂々と、

宿屋の親父アスティに、お申し出なさいましとお伝えくださいませ。」


「このヨハネス、しかと承知いたしました。」


ヨハネスはアストリッドの手に口づけする……



別作品も書いています。

長めのお話がお好きでしたら、こちらもどうぞ。

■『神鼠の大王は猫を愛せない―美貌すぎる少年王は天敵の猫族少女を絶対に手放しません 』

https://ncode.syosetu.com/n9295ms/

■『BL終局の悪魔―俺を利用するはずの白髪高官が、なぜか俺の目を美しいと言ってくる―』

https://ncode.syosetu.com/n4565ml/

■『元公爵令嬢の小さな宿屋―年下の町医者が、客でもないのに今日も会いに来ます』

https://ncode.syosetu.com/n8605mt/

※完結しました

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