エピローグ:終わらない借金地獄(兆)〜第一部完〜
王立中央銀行の総裁就任から数日後。
俺たちは限界ニュータウンの広場を貸し切り、盛大な祝賀会(宴会)を開いていた。
「いやー、長かった! ついにスライムの干物生活から脱却だ!」
「アルト、最高級の霜降りミノタウロス肉よ! どんどん食べなさい!」
親父も母さんも、クロエもゴードンさんも、みんな笑顔で肉を焼き、酒を酌み交わしている。
俺の手元には、魔王軍経理部からの祝儀として贈られた最高級の「魔導コーラ(ヴィンテージ樽仕込み)」がある。
一億ゴールドの借金はチャラになり、名誉男爵の地位まで手に入れた。これ以上のハッピーエンドはないだろう。
「ふぅ……(ようやく、俺の異世界スローライフが始まるんだな)」
俺が安堵の息を吐きながらコーラを煽ろうとした、その時だ。
ダダダダダッ!
広場の入り口から、全身泥だらけの騎士が転がり込んできた。王家の紋章をマントに刻んだ、王国直属の密使だ。
「アルト総裁! アルト・ネオ・フロンティア男爵はいらっしゃいますか!!」
「俺だが、なんだ? 今日は祝日だぞ。労働基準法(魔王軍準拠)に違反する呼び出しなら受けないぜ」
密使は青ざめた顔で、ガタガタと震えながら一枚の羊皮紙を俺に差し出した。
「財務管理官のデップ様からの言伝です! 『銀行の引き継ぎ書類の中に、うっかり渡し忘れていたものがあった』と……!」
「……渡し忘れ?」
嫌な予感しかしない俺の【せいしん】ステータスが、警報を鳴らし始める。
恐る恐る羊皮紙を受け取り、そこに書かれた数字を目で追った。
『王国政府発行・国債残高証明書』
そこには、王立銀行が抱え込んでいた――つまり、新しい中央銀行総裁である俺が丸抱えすることになった「国の借金」の総額が記されていた。
「えーっと……いち、じゅう、ひゃく、せん、まん……」
桁が多すぎて、一瞬脳の処理が追いつかない。
俺は自作キメラ魔導PCの演算機能をフル稼働させ、その数字を正確に弾き出した。
ピロリンッ!
【新規メインクエスト:『傾国の大借金(国債)』が発生しました!】
【現在の借入残高(国庫): 3,000,000,000,000 G(3兆ゴールド) 】
「…………は?」
「デップ様からのメッセージは以上です! 『あとはよろしくね☆』とのことでしたぁぁっ!」
密使はそう叫ぶなり、脱兎のごとく逃げ出していった。
静まり返る宴会会場。
肉を焼く音だけが、虚しく響いている。
「さん、ちょう……?」
クロエが持っていたジョッキを落とし、親父が白目を剥いて泡を吹いて倒れた。
1億ゴールドの借金を返すのに、どんだけ苦労したと思ってるんだ。
3兆ってなんだ。魔王軍を丸ごと買収してもお釣りが来るレベルの特大負債じゃねえか。あのゆるい財務管理官、一番ヤバい爆弾を俺に丸投げして逃げやがったな!?
「だぁぁぁぁぁっ!!(ふざけんなクソ国家!! 絶対にあのポンコツ財務官どもを自己破産させてやる!!)」
俺の絶叫が、限界ニュータウンの夜空に吸い込まれていく。
異世界スローライフの夢は、3兆ゴールドの重圧と共に儚く散った。
俺の本当の戦い(デスマーチ)は、ここから始まる――!
(第一部・限界ニュータウン借金返済編 完)
(第二部・王国デフォルト阻止編へ続く……?)
ここまで読んでいただきありがとうございました!
まさかの3兆ゴールドの借金エンドです(笑)。アルトの胃穴が空くのが先か、国家が破綻するのが先か……。
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