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絶対にダメージを受けないスキルをもらったので、冒険者として無双してみる  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第10章 咆哮の獣騎士

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11 「誓え」

 さあ、僕のしもべになれ──。


 先ほどのレヴィンの声が、脳内で反響する。


「ぐっ……ぅぅぅぅ……ぅぁぁぁああああ……っ……!」


 意識が薄れ、別の何かに塗り替わっていくような感覚に、ジャックはうめいた。


 苦痛はない。

 不快もない。


 むしろ、甘美な心地さえある。


(これが、あいつの……力……!)


 レヴィンにすべてを委ねたいという衝動が込み上げる。

 彼の足元に跪き、忠誠を誓いたいという願望が湧きあがる。


 あまりにも甘く、妖しい誘惑だった。


 あらゆるものを隷属させる、絶対支配の力──。


 それに抗うすべはないのかもしれない。

 レヴィンのスキルの効力が及べば、自分も彼のしもべになってしまうのだろう。


 彼の命令のままに動き、意に沿わぬ言動を強いられ、あるいは戦い、殺し、壊し──。


 レヴィンの王国実現のための手駒にされる。


(俺は、そんなことはしたくない……絶対に!)


 ジャックは意志を振り絞り、強化スキルをかけ直した。


 まず自身の脚力と、触覚を強化する。


 同時に、自身の視力と聴力をマイナス方面に(・・・・・・・)強化した。

 何も見えず、聞こえない状態へと。


「くっ……ああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁっ!」


 ジャックは咆哮した。


 視覚と聴覚を閉じた状態で、全身をたわめ、四足獣さながらの姿勢を取る。


 床を撃ち抜くほどの勢いで、駆け出した。

 たとえ目と耳が効かなくても、強化された触覚で空気の動きを感じ取り、爆発的な脚力で疾走する。


 体にぶつかる空気の抵抗感が、流れが、自身の速度と位置を教えてくれる。

 前方に漂うわずかな空気の揺らぎは、おそらくレヴィンの声だろう。


 驚きの声か、動揺か。

 それとも怒号か。


 いずれにせよ、ジャックの行動に対して反応し、声を発しているのは間違いない。

 そこを目指して、黒き獣騎士は一直線に奔る──。




『僕と目を合わせ、言葉を聞いた者は、たとえ何者だろうと僕の支配下に置かれる。いずれは神や魔さえも従え、跪かせてみせる──』




 先ほどのレヴィンの言葉を思い返す。


 つまり支配のスキルは一定程度の時間、相手の目を見て、言葉を聞かせなければ効果を発しない。

 そして、おそらくある程度距離が近くなければ使えない。


 いずれも推論だ。


 だが、もしそういった制限がないのであれば、ジャックが冒険者たちと戦っている間に、レヴィンは容赦なく自分を支配していたはずである。


 だから、この推論が正しいと仮定すると──支配のスキルを防ぐ方法が見えてくる。


 視覚と聴覚を一時的に封じ、戦う。


 ジャックにはそれができた。

 触覚を強化し、封じた二つの感覚を補うことで。


 ──次の瞬間、何かにぶつかった感触があった。


 ジャックの体当たりがレヴィンを正面から捕えたのだ。

 死なない程度に加減してあるとはいえ、常人をはるかに超える速度を持つ彼の突進の勢いをまともに受け、レヴィンは大きく吹き飛ばされる。


 同時に、強化率をマイナスまで下げていた視覚と聴覚を元の状態に戻す。


「ぐ……ううぅ……ぅ……」


 前方には床に倒れてうめくレヴィンの姿があった。


 先ほどの体当たりの衝撃で苦痛にうめいている。

 ジャックはその胸板を足で踏みつけ、動きを封じた。


「終わりだ。この距離なら、お前が支配のスキルを使うより、俺の攻撃の方が速い」


「くっ……」


 劣勢を悟った少年は唇を噛みしめる。


「……待て、話し合おう。僕は君に、何も──ぐ、あっ!?」


「妙な動きをするな。妙な言葉を話すな」


 ジャックは踏みつける力を強め、釘を刺した。


 少しでも気を抜けば、レヴィンは支配のスキルで即座に反撃するだろう。


 その前に封じる必要がある。

 彼の力を。


 そう、二度と使えないように。

 完全に──。


 そのためには、まず恐怖を与えておくことだろう。

 脅しなど柄ではないが、もはやそんなことは言っていられない。


「俺がほんの少しでも力を込めれば、お前の体なんて簡単に砕ける」


 みりっ、と足元で骨が軋む音がした。


「あ……がぁ……ぁぁっ……」


 レヴィンは秀麗な顔を歪ませ、苦痛の声をもらす。


 ジャックは容赦しない。

 本気で殺すつもりだという気迫をこめなければ、脅しにはならない。


「ま、待て、待ってくれ! こ、こ、殺すのか、僕を!? 駄目だ、僕はこんなところで死ぬわけにはいかない! やめてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」


 レヴィンが絶叫した。


 もはや悠然とした、王者のような風格はそこにはない。


 ただみじめに。

 ただ必死に。

 ただもがき、あがき──。


 命乞いをする、哀れな少年の姿があった。


「嫌だ、殺さないでくれ! た、助けてくれ!」


 涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、レヴィンが叫んだ。


「お願いします、助けて……助けてぇぇぇぇぇ……!」


 完全にプライドが折れた様子だ。


 ──これだけ脅せば十分か。

 ジャックはため息交じりに、強化を解いた。


 獣騎士状態から人の姿へと戻る。

 レヴィンの胸を踏みつけていた足をどかした。


「……そうだな。じゃあ、『二度と他人を支配しない』ことを誓え」


「わ、分かった。誓う!」


 即答するレヴィン。


「いや、言葉だけじゃなく行動で示すんだ」


「えっ……?」


 呆けたようにたずねる少年に、ジャックは冷然と告げた。


「鏡を持ってこい。それを使って、お前はお前自身を支配して、こう命じるんだ。『二度と他人を支配しない』──と」

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