表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

89/224

3 「また来ようね」

「このエロスの権化め……!」


 アイヴィはメラメラと燃える瞳で俺をにらみつけた。

 お尻のあたりを何度も両手で撫でては、頬を赤らめている。


「どうかしたの、アイヴィ?」


 と、ルカが俺たちの元に泳いできた。


 さすがに運動神経抜群で、綺麗なフォームだ。

 月並みな表現だけど、人魚を連想する。


「あ、あ、あたしのお尻に顔を突っこんだんですっ! 感触を確かめるように顔を擦りつけて、じっくりたっぷりねぶるようにっ!」


「いや、そこまではしてないだろ!?」


「変態ですっ。エロ魔人ですっ。こんなやつは一緒にこてんぱんにしましょう、お姉さまっ。世のすべての女性のために、ハルト・リーヴァ許すまじっ」


「お尻に……? 突っこんで……擦りつけて……」


 ルカがジトッとした目で俺を見た。


「ハルトは胸だけでなくお尻にも興味津々……?」


 違う、違うんだ! 事故なんだ! 不可抗力だったんだ!


 俺はさすがに慌てた。


「い、いや、その、悪かった。ちゃんと前を見てなくて」


「ハルトはわざとそんなことする人じゃないよ。アイヴィも機嫌直して。ね?」


 と、リリスがフォローしてくれた。

 ありがとう、リリス……。


「勝負ですっ」


 熱血口調で叫ぶアイヴィ。


「へっ?」


「あたしの清純な体を汚した報い──ビーチバレーでこてんぱんにしてあげますっ。そうでなければ、あたしの気持ちの収まりがつきませんからっっ!」


 なんでそうなるんだよ!?




 ──というわけで、なぜかビーチバレーをすることになった。




 チーム分けは、俺、リリス、アリス、サロメVSルカ、アイヴィ、ジネットさんだ。


 勝負は白熱したものになった。


「──遅い」


 残像を生み出すほどの速度で陣地を駆けまわるルカ。


「待て、因子を使って超スピードで動くとか反則だろ!?」


「速ければいいってものじゃないよ、ルカ!」


 サロメも負けてはいない。


「気配が──消えた!?」


 驚くルカの足元に、サロメの打ったボールが叩きこまれる。


「エルゼ式暗殺術隠密歩法──ボクのスパイクは相手に気づかれずに敵陣に突き刺さる」


「相手にとって不足はないわ」


 ビーチボールを拾い、ルカがサロメを見据えた。


 その瞳には、まるで魔族や魔獣と戦うときのような強烈な闘志が宿っていた。

 戦闘者としての本能に火がついたらしい。


 ……いや、これただのビーチボールだからな。


「私も全力で攻める──」


 告げたルカの動きがさらに加速する。


「残像がさらに増えた……!?」


 今度はサロメが驚きの声を上げる番だった。


「お姉さま、素敵です」


 アイヴィがルカの側で歓声を上げている。


「あたしたち、手が出せないじゃない……」


「うーん、やっぱり直接戦闘系の人たちはすごいですね~」


 呆れたようなリリスと、ほんわかと笑うアリス。


 実際、俺もほとんど手を出せない。


 残像さえ生み出すほどの超高速で動き回るルカと、それを上手くサポートするアイヴィ。

 対して、気配を消して死角からスパイクを打ちこむサロメ。


 これ、ビーチバレー……だよな?

 ほとんど人外バトルと化した眼前の光景に、俺はあ然となりっ放しだった。


 と、激しい打ちあいでボールが空中に大きく弾む。


「ルーズボールおねがいっ」


 サロメが叫んだ。


「わ、分かったっ」


「ですぅ」


 急いで走り出すリリスとアリス。


 ──って、


「ち、ちょっとストップ……」


 かなりの勢いでこっちまで走ってくる二人を、俺は慌てて制止した。


 スピードがつきすぎていて、このままだとぶつかる!

 だけど全力で走る彼女たちは、急には止まれない。


「きゃあっ……!」


 二人の悲鳴と、


「んぐぅぅ……っ!?」


 むぎゅぅぅぅ、と柔らかな膨らみに顔を塞がれた俺のくぐもった声が重なった。


 ちょうどリリスとアリスに押し倒され、豊かな胸が俺の顔に押しつけられた格好だ。

 二人のおっぱいはともに勝るとも劣らぬ柔らかさと弾力を兼ね備えていた。


「やぁぁぁ、ご、ごめんなさい」


「胸、当たってしまいました……恥ずかしいぃ……」


 慌てるリリスと恥じらうアリス。


「だ、大丈夫だ……むしろ、このままでずっといたいくらい……」


 俺のほうは極上ともいえる感触を顔面に受けて、意識がピンク色だった。


「……やっぱり『女体を狙う者(エロススナイパー)』ですね」


 アイヴィが呆れたような怒ったような顔でつぶやく。


 いや、今のも事故だから! わざとじゃないから!


 でも、気持ちよかった……。




 そうやって遊んでいると、あっという間に時間は過ぎ──。

 水平線に沈みゆくオレンジ色の夕日を、俺たちは静かに見つめていた。


「少しは元気でた? ハルト」


 隣でリリスが微笑む。


「えっ」


「バーラシティでハルトさんが元気なかった、ってリリスちゃんが。だから海水浴を提案したそうですよ」


 と、アリス。


「後からリリスちゃんが教えてくれました」


「えへへ。みんなで楽しみたい、っていう気持ちもあるんだけどね」


「うん、楽しかったー」


「お姉さまの水着姿を見ることができて満足です」


「私もリフレッシュできました。誘っていただいてありがとうございます」


 サロメとアイヴィ、ジネットさんが口々に言った。

 アイヴィはビーチバレーでさんざん動き回ったからか、いつの間にか機嫌が直っている。


「私も気分転換できたわ」


 さらにルカも。


 そうだな、俺も──。


「みんな、心配してたんだよ」


「あたしは……別にっ」


 アイヴィがぷいっとそっぽを向く。


「なんかいいこと言いそうな感じだから、アイヴィはしばらく黙ろうね」


「むぐぐ……」


 と、サロメがアイヴィの口を手で塞ぐ。


「少しでもハルトの気持ちが楽になったらいいな」


「どうせなら、ハルトくんにちゅーでもしちゃえば? きっと一発で元気になるよ」


 サロメが悪戯っぽく笑って提案する。


「ち、ちちちちちゅーって、そんなあたしはっ!?」


 リリスがたちまち真っ赤になった。

 以前のキスを思い出したのか、唇を押さえている。


「ふーん……? 何かあった?」


「リリスちゃん……?」


 サロメとアリスが同時にリリスを見つめる。

 それから俺のほうを意味ありげに見て、にやりと笑った。


「本当に何かあったんだ……?」


「怪しい……」


「いやいやいや」


 追及するサロメとアリスにギクリとしつつ、俺は両手を振った。

 と、


「キスをすると、ハルトが元気になる……?」


 ルカが自問するようにつぶやいた。


「私もハルトを元気づけられる……」


「だ、駄目ですっ、お姉さまの唇をこんな男に与えるなんてぇぇっ」


「私、初めてだから……上手くできるか自信がない」


 ルカはチラチラを俺の顔を見ている。


 ま、まさか、いきなりキスして来たりしないよな……?


「もう」


 リリスはふうっと息をつき、それから俺を見て微笑んだ。


「また来ようね。みんなで、一緒に」


「……そうだな」


 またこんな日々を過ごすために。

 そして、こんな日々を守るために。




 俺は、もっと大きな力を得てみせる──。

明日の更新はお休みです。

明後日の朝7時から第4話を投稿します。4~6話を連日投稿、1日休んで7~9話を連日投稿……という感じで(´・ω・`)


なお4話から章の終わりまでは、主人公ハルトではなく、強化能力者のジャック・ジャーセをメインにお話が進みます。

11章からはまたハルトがメインに戻り、お話が進みます<(_ _)>

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の☆☆☆☆☆評価欄↑をポチっと押して

★★★★★にしていただけると作者への応援となります!


執筆の励みになりますので、ぜひよろしくお願いします!




▼こちらの新作もよろしくです!▼



▼新作です! こちらもよろしくです~!▼
「攻撃されたら俺の勝ち!」悪役転生特典でスキルポイント9999を【カウンター】に極振り→あらゆる攻撃を跳ね返すチートスキルに超進化したので、反射無双します。

冴えないおっさん、雑魚ジョブ【荷物持ち】からEXジョブ【上位存在】に覚醒して最強になる。神も魔王も俺には逆らえない。俺を追放した美少女勇者パーティも土下座して謝ってきた。




▼書籍版全3巻発売中です! 画像をクリックすると紹介ページに飛べます!▼

5z61fbre6pmc14799ub49gi9abtx_112e_1d1_1xp_n464.jpg 97vvkze3cpsah98pb0fociarjk3q_48b_go_np_cmbv hkcbaxyk25ln7ijwcxc7e95vli4e_1e1o_1d0_1xq_rlkw

漫画版全3巻発売中です! 画像クリックで公式ページに飛びます。
8jyvem3h3hraippl7arljgsoic6m_15xf_qm_bx_d8k6
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ