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第9章 守護者VS運命操作

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10 「鍵となる能力者よ」

 突然現れた黒い穴に、俺は驚いて立ち尽くす。


「さあ、こっちへ」


 穴の向こうから声が聞こえた。

 涼しげな女性の声だ。


「破滅の未来を、回避したいのでしょう?」


「っ……!」


 エレクトラは即座に穴の中に飛びこんだ。


「ま、待てっ」


 追いかけようとするが、その穴は一瞬で豆粒ほどにまで縮まり、消えてしまう。


「逃げられた……か」


 俺は穴が消え去った前方の空間を見据え、息をついた。

 エレクトラにはまだ聞きたいことがあった。


 俺や彼女だけでなく、他のスキル保持者(ホルダー)たちがそれぞれ戦う未来を視た、という話について。

 あるいはガイラスヴリムやディアルヴァのように、また他の魔将たちが襲ってくるのかどうか。


 他にも──未来が分かるんなら、その力でできることはたくさんあるはずだ。


 きっと多くの人を救うことだって。


 いや、今はそれを考えても仕方がない。

 俺はふうっともう一度息を吐き出し、リリスたちの元に歩み寄った。


「大丈夫か、みんな」


 見たところ、四人とも怪我らしい怪我はなさそうだ。


 ルカとサロメはずっと縛られていたのか、両手首が軽く鬱血している。

 アリスが治癒魔法をかけて、それを治していた。


「……ごめん」


 俺は四人に頭を下げる。


「エレクトラは俺を狙っていた。みんなが人質にされたのも、そのせいだ……」


「ハルトが謝ることじゃないわ」


 ルカが淡々とした口調で告げる。


「負けて捕まったのは、私が弱かったから。それがすべて」


「むしろ助けに来てもらって、ボクたちが礼を言わなきゃね。ありがと」


 にっこりとするサロメ。


「感謝しているわ」


 隣でルカが頭を下げる。


「っていうか、ボクたちの動きが全部読まれてたし、なんか反則技っぽいよね。ああいうの」


 サロメはペロリと舌を出した。


「とにかく、ハルトくんが気に病むことじゃないって」


「そういうこと」


 サロメとルカが同時に言った。


「……あたしたちの動きも読まれてたね」


 リリスが険しい顔でつぶやく。


「ハルトとエレクトラの会話……変な雑音混じりでよく聞こえなかった。けど、断片的に運命がどうとか、未来がどうとか──何か関係があるのかな?」


「エレクトラさんは占い師ですからね。未来を占って、私たちの動きを知ったとか……?」


「いくら占いでも、そんなことができるとは思えない」


 アリスの言葉に、リリスは首を振った。


「人の未来を確実に視るなんて、占いでも魔法でも無理だと思う──」


 つぶやいたリリスの瞳が俺を見据える。


 彼女は、俺とグレゴリオの戦いの際にもその場にいた。

 スキル保持者(ホルダー)同士の戦いに二度も居合わせて──何かを感づいているんだろうか。


 神のスキルのことは口外できない。

 しようとしても激痛に襲われ、あるいはその言葉は不思議な雑音(ノイズ)が生じて、他者には届かない。


「あ、ごめんね。詮索するわけじゃないから」


 慌てたように両手を振るリリス。


「えっ」


「ハルト、困ったような顔してる」


 言われて、自分の顔がこわばっていることに気づいた。


「俺は……」


「もしも何かカン違いをしているなら、先に言っておくからね。あたしたちはハルトが原因で巻きこまれたなんて思ってない」


「気負いすぎですよ、ハルトさん」


 リリスとアリスが微笑む。


「ハルトには、今まで何度も助けてもらっているわ」


「そう、今回もね。だから、お礼に今度何かおごるねっ」


 ルカとサロメも同じように笑顔だ。


「……ありがとう」


 俺がみんなを助けたかったのに。

 逆に、俺のほうが気を遣われてしまった。


 彼女たちへの感謝と、そんな彼女たちを巻きこんだ申し訳なさが、胸の中で渦を巻く。


 力が欲しい、と思う。

 みんなをちゃんと護れるように、今まで以上に。


 もしかしたら、その答えは──。

 エレクトラと共鳴したときに見えた、あの映像にあるのかもしれない。


 女神さまは、俺の力がそこで成長する可能性を示していた。


 エリオスシティにあるという遺跡。


「古竜の神殿……か」


    ※


 気が付けば、エレクトラは泉のほとりにいた。


「ここは……?」


 先ほどまでの噴水公園とはまったく別の場所だ。

 そもそも町の中ではなさそうだった。


「どうやら助けることができたみたいね」


 前方の茂みから一人の女が現れた。


 年のころは二十代後半といったところか。


 緩くウェーブのかかった輝くような金髪が腰の辺りまで伸びている。

 薔薇色のドレスが、艶やかな美貌によく似合っていた。


 胸元を勢いよく押し上げる豊かな膨らみや、細くくびれた腰、そしてパンと張り出した尻──同性のエレクトラから見てもゾクリとする色香を感じる。


「初めまして、エレクトラ・ラバーナさん」


「君は……」


 戸惑いと警戒でエレクトラは表情をこわばらせた。


運命の女神の(マニューバ)──」


 反射的に予知を発動しようとする。


 とにかくこれから何が起きるかを知り、それに対応する行動を取れば、彼女は無敵だ。

 ハルトのように『時間を逆行させた防御』などという能力でも使われないかぎりは──。


「身構えないで」


 片手を上げて女がそれを制する。


「あなたの『同種』よ」


 微笑みを深めた彼女の頭上に、輝く紋様が出現した。

 エレクトラのそれと、よく似た紋様が。


「あたしは天翼の女神(ガ・ゼガリア・フィオ)より力を授かりし者──」


 謳うように告げる女。


「君が敵じゃないという保証はないな」


「では、ご自由に予知してどうぞ。それで安心できるでしょう?」


 彼女の方は敵意のなさそうな微笑みを浮かべるのみだ。


「……ふん」


 エレクトラは言われた通り予知を行った。


 内容を確認し、目の前の女が敵ではないと悟る。

 もちろん、確実に視ることができるのは近い未来だけだから、それより遠い未来でどうなるのかは不鮮明だ。


 ただ──狙いは不明だが、少なくとも敵対する意思はなさそうだった。


「分かった。とりあえず、君は敵じゃないと判断させてもらう」


 エレクトラは小さく息をつき、いったん警戒を緩める。


護りの女神(イルファリア)の力を持つ少年──大したものね。未来が視えるあなたを退けるなんて」


(わたしやハルトの能力のことを知っている……?)


 エレクトラは微笑む女に鋭い視線を向けつつ、答える。


「……そうだな、時間すら戻して防御する力とは。さすがにわたしも手を出せない」


 以前の予知を思い出した。


 虹色の光の中に溶けて消える、自分の姿。

 それに該当するような場面は、今回の戦いにはなかった。


 いずれ訪れるはずの運命を──回避しなくてはならない。


 だが、今はまだ手を出せない。


「手を出す必要なんてないわ。あなたが出会うべき相手は彼じゃない。他にいるもの」


「出会うべき相手……他に……?」


「その人なら、あなたがまだ見ていない未来へ導いてくれるかもしれないわ」


 つまりエレクトラが破滅する未来を回避できる、というわけか。


 ならばハルトにこだわる必要などない。

 そもそも彼にもう一度戦いを挑んだとしても──退けられる危険性が高い。


「で、その相手とは?」


「あら、それをあなたに教えてほしいのよ。占い師さん」


 女は婀娜(あだ)っぽい笑みを浮かべた。


「その人は、最後のスキル保持者(ホルダー)──地と風の王神(アーダ・エル)の力を持つ者」


「最後の……?」


「一緒に探してほしいの。その人こそ、来たるべき神と魔の大戦の──鍵となる能力者よ」

次回から第10章「咆哮の獣騎士」になります。

4日ほど更新をお休みさせていただき、5月27日(土)より更新再開予定です(´・ω・`)ノ


再開後は3話程度を連日更新→1日休み→3話程度を連日更新……という感じで章の終わりまで進める予定です。

章の終わりまで連日更新したかったのですが、書き溜め&寝かせる期間を確保したいので、とりあえず次章はこんな感じで……(´・ω・`)

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