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絶対にダメージを受けないスキルをもらったので、冒険者として無双してみる  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第9章 守護者VS運命操作

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5 「『視えて』いるよ」

 俺たちは町の南にある噴水公園にやって来た。


 二日前に占い師のエレクトラから教えてもらった場所だ。

 中央に石造りの大きな噴水塔があり、周囲には森が広がっている──というオーソドックスな公園だった。


「ここにルカとサロメがいるっていう話だけど……」


 俺は周囲を見渡した。


 月明かりに照らされた薄暗い公園には、ひと気がまったくない。


 本当に二人はどこかにいるんだろうか。

 祈るような気持ちで、俺はなおも辺りを探す。


「あの占い師さん、かなり評判みたいですからね~。当たってほしいです」


 アリスがきょろきょろと首を振って、公園内を見回す。


「サロメさん、それにルカちゃんも心配……」


 そういえば、ルカと仲がいいんだよな、アリスって。


「暗くならないで、姉さん。あの二人のことだからきっと大丈夫よっ」


 言葉とは裏腹に、リリスも心配そうだった。


 もちろん、俺だって不安である。


 二人の実力は承知しているけど、万が一ってこともある──。

 どうか無事でいてくれよ。


 公園内を歩くこと十分ほどで、そんな願いが通じたかのように、


「あはは、心配させちゃってごめんね」


 森の茂みの向こうから、露出の多い踊り子衣装を来た女の子が現れた。


 サロメだ。


「不覚を取ったわ」


 さらにルカも現れる。


「二人とも──」


 よかった、無事みたいだ。


 俺は安堵で胸を撫で下ろした。


「てっきり事件にでも巻きこまれたのかと思ったよ」


「もう、心配したんだからねっ」


 怒ったような、嬉しそうな、複雑な表情でリリス。


「──違います」


 ぽつりとつぶやいたのは、アリスだった。


「違うって、何が?」


 言いつつ、俺はルカとサロメをもう一度見つめる。


 ふと、違和感を覚えた。


 何かが、変だ。


「……偽物です」


 アリスが二人の足元を指差す。


 薄暗いから分かりづらいけど、そこにはあるべきはずのものがなかった。


 影が。


 何か──嫌な気配だ。

 不吉な予感を覚え、俺は『ある準備』をしておく。


「ほう、意外に冷静だな。仲間に再会できた喜びで、そこまで観察する余裕はないと思っていたが」


 ルカとサロメの背後から、もう一つの人影が現れた。


「お前、占い師の──」


 エレクトラだ。

 今日は白い千早に緋袴という東方風の巫女衣装だった。


「だが、当初の目的は果たせたよ。彼女たちを餌に、君たちをおびき寄せられた」


 告げて、エレクトラはぱちんと指を鳴らす。


「これで詰みだ、ハルト・リーヴァ」


 そのとき、俺は反射的に振り返った。


 理屈じゃない。


 本能で。


 何かが、そこにいると悟ったんだ──。


「っ……!?」


 振り向いた先には、異形の怪物がいた。




 精霊──神や魔の世界に近しい幻想世界の住人。


 俺も実物を見るのは初めてだった。

 眼前の精霊は、翼の生えた虎のような姿をしている。


「知っている──いや、『視えて』いるよ」


 エレクトラが勝ち誇ったような笑みをこぼした。


「君のスキル発動には一瞬の精神集中が必要だ。だけど、わたしの精霊はその一瞬よりも早く──君を攻撃する。君に防ぐ術はない」


 確かにその通りだった。


 完全なノータイムで防御スキルを発動することはできない。

 スキルを使うためには、そう意識することが必要なのだから。


 防げ、と俺が念じるより一瞬早く、精霊の爪が迫る。

 スキルを使わなければ、死を免れない一撃が──。


 がきんっ!


 金属音とともに、俺の前方で弾き返された。


「何っ……!?」


「だから、すでにスキルを展開しておいた」


 告げた俺の体は──虹色の輝きをまとっている。


 さっき二人の姿を見て違和感を覚えた際に、念のために護りの障壁(アーマーフェイズ)を張っておいたのだ。


 スキルを発動したときの虹色の光は目立つので、ふたたび不可視モードに戻す。


 ちなみにこのモードは最近の訓練で身につけたものだ。

 常に虹色の光をまとっていると、スキルを発動しているのがバレバレなうえに、光が消えるタイミングでスキルの効果時間まで知られてしまう。


 だから、訓練していたのだった。


「あなたは、この間の占い師──」


「どうして、私たちを襲って……!?」


 リリスとアリスが驚きの声を上げた。

 エレクトラは彼女たちには答えず、ふんを鼻を鳴らして俺を見据える。


「……なるほど。わたしに見えた未来は君が精霊に襲われるところまで。結末までは見えなかったが──よく防いだね」


「未来を……見た?」


 その前の台詞からもなんとなく予感はあった。


 俺がスキルを持っていることを知っているかのような、台詞。


 やっぱり、こいつは──。


 俺の予想を肯定するように、エレクトラの胸元に淡い輝きが浮かぶ。


 東方の巫女を思わせる衣装の合わせ目を、ゆっくりと開くエレクトラ。

 清楚な外見に似合わない妖しい色香に──見とれる余裕はなかった。


 盛り上がった乳房の間に、輝く紋様が浮かんでいる。


「お前も……そうなのか」


 以前に出会った『殺し』のスキルを持つグレゴリオや、『強化』のスキルを持つジャックさんと同様に。


 エレクトラも──神のスキル保持者(ホルダー)なのか。


「次は外さない。確実に未来を読み取り、回避不能な攻撃を撃ちこむ」


 胸の合わせ目を元に戻し、エレクトラは俺を見据えた。




運命の女神(マニューバ・フ)の鐘が鳴る(ォーチュンベル)




 声が、静かに響く。

 その瞳は俺を見ているようで、見ていなかった。


 たぶん──こいつが見ているのは未来の光景。

『未来を見る』スキル、ってことか。


 ただ俺があらかじめ護りの障壁(アーマーフェイズ)を張っていたことに気づかなかったみたいだから、こいつが見える未来にも限界はあるんだろう。


 たとえば、一定時間より先の未来は見えない、とか。


 だとすれば、攻略法は──。


 そのとき、俺の前方に浮かぶ紋様が明滅を始めた。


「なんだ……!?」


 いや、俺だけじゃない。

 エレクトラの胸元からあふれる光も、同じく明滅を繰り返している。


「これは──」


 俺とエレクトラの驚きの声が重なる。


 スキルが共鳴している──のか!?

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