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絶対にダメージを受けないスキルをもらったので、冒険者として無双してみる  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第8章 六魔将ディアルヴァ

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10 「倒すしかない」

「ジャック・ジャーセだ」


 と、獣騎士が名乗った。

 声の感じからすると中年くらいの男性だろうか。


「……ハルト・リーヴァです」


 名乗り返す俺。


 獣騎士──ジャックさんの全身には、淡い紋様がいくつも浮かんでいる。

 騎士を意匠化したようなそれは、俺の紋様とよく似た雰囲気だった。


 おそらく、この人も神のスキルを持っているんだろう。


 ディアルヴァを吹っ飛ばしたってことは、味方って考えていいのかな──。


「……お前みたいな奴もいるんだな」


 ジャックさんが安堵したようにつぶやいた。


「前に、同じような力を持っている奴に会ったことがある。そいつは私利私欲で好き勝手にしていた。大勢の人を自分の思うままに操って──」


 狼を思わせる顔が俺を見る。

 恐ろしげな異形の顔は──だけど、どこか優しい雰囲気をたたえていた。


「だけど、お前は違うみたいだ。必死で仲間を守ろうとしていた。柱を壊すつもりなんだろう。お前も、あの冒険者たちも」


「五本の柱を全部壊さないと王都が毒で包まれます。俺たちは、それを止めるために来ました。王都の人たちを守るために」


「俺にも手伝わせてくれ」


 ジャックさんが俺の隣に並んだ。


 ──共闘、ってことか。


 この人の素性は分からないけど、目的は同じみたいだ。


「あいつを引きつけて、その間に仲間が柱を壊します」


 俺はジャックさんにうなずいた。


「俺たちで奴を食い止めましょう」


「食い止める? このワタシを?」


 ディアルヴァが俺たちを見る。


「魔法の発動を封じるスキルだけで、ワタシを抑えたつもりであるか? 甘い──」


 言うなり、魔将は地を蹴り、すさまじい跳躍力で上空へ跳び上がった。


 そうだ、俺がスキルで魔法を封じても、こいつには高い身体能力がある。


「『人への害意』を持てば、この世界にいられる時間が極端に短くなる──ならば、その時間内に奴らを殲滅すればよいだけのことである」


 ディアルヴァは上空百メティルほどの位置で止まった。


 そこは、俺のスキルの範囲外だ。


「腐れ」


 魔将は空中に浮かんだまま、光弾を撃ってきた。


 俺は迎撃すべくスキルを飛ばす。

 虹色の光球と魔の光弾がぶつかり、中空にまばゆいスパークをまき散らした。


 それが二回、三回。


「病め。朽ちよ」


 さらに五回、十回──。


 ちっ、これじゃさっきと同じパターンだ。


「いかに神の力があろうと、しょせんは人間。そろそろ集中力の疲労が限界ではないかな?」


 ディアルヴァは俺をあざ笑うかのように、消えて現れ、また消えて──を繰り返す。


 いつ、どこから撃ってくるのか。

 変則的かつ不規則な攻撃は、まったく予測できなかった。


 こいつの攻撃は──防ぎづらい。


 ガイラスヴリムのような強大な破壊力はない。

 だけど、どこから撃ってくるか分からない上に、無効化も難しい。


 厄介な敵だった。


 リリスたちも攻撃魔法を放っているが、神出鬼没のディアルヴァにまったく当たらない。


「お前の能力は『守る』ことなのか」


 ふいに、ジャックさんがたずねた。


「そいつを俺にかけることはできない?」


「えっ」


「俺のスキルは『強化』。今の俺の反射速度なら、あいつが現れた瞬間に全速力で距離を詰められる」


「……お願いします」


 俺はスキルを手元に戻すと、ジャックさんの体を虹色の光で包んだ。

 攻撃を跳ね返すタイプの護りの障壁(アーマーフェイズ)


「効果時間は五分です。気を付けて」


 俺の言葉にジャックさんは無言でうなずき、獣のような四つん這いの姿勢になった。


 周囲に視線を向ける。

 やがて、斜め前方にディアルヴァが出現する。


 ちょうどA班の近くに。


「そこか──」


 ジャックさんが地を蹴った。


 同時に巻き起こる衝撃波。

 音速を超えた獣騎士が、虹色の軌跡を描いて魔将に肉薄する。


「……っ!? こいつ──」


 さすがにディアルヴァも驚きの声を上げた。


「腐れっ」


 放たれた光弾は、ジャックさんを包む護りの障壁(アーマーフェイズ)が易々と弾き返す。


「誰も殺させんっ」


 ジャックさんの拳が魔将に叩きつけられた。


「が……はっ……!」


 数十メティルも吹き飛ばされ、近くの家屋に叩きつけられるディアルヴァ。


 家屋が粉々になり、もうもうたる土煙で覆われた。

 その粉塵の向こうから、魔将が立ち上がる。


「はあ、はあ……な、なるほど『強化』の力──これほどの速度が出せたか」


 苦しげにうめいたディアルヴァは、ふたたび中空高く飛び上がった。


「そうと分かれば、二度と近づかぬ。この距離からの攻撃に徹すれば、キミたちに攻撃は不可能である」


 その声は、さすがに弱々しい。

 ジャックさんの一撃でかなりのダメージを受けたか。


「ガイラスヴリムは誇りに殉じたが、ワタシは違う。勝つための最善を尽くすのみ──勝てない相手は無視し、殺せる相手だけを殺すのである」


 ふたたび上空から毒の光弾が降り注いだ。

 柱に向かおうとしているA班やC班だけに狙いを定めたようだ。


 俺は防御スキルを飛ばして、光弾を次々と弾いた。

 だけど、手数が多すぎて防ぐのが手一杯だ。


 俺のスキルの有効射程──五十メティルより先にも、魔将は次々と毒の光弾を弾幕として張っており、二班とも進めないでいる。


 このまま足止めされ続ければ、やがて作戦のタイムリミットを迎えるだろう。

 完全に──手詰まりだ。

 と、


「これならっ」


 ジャックさんが手近の瓦礫を上空のディアルヴァに向けて投げた。

 まさしく目にも止まらぬ速度──たぶんこれもジャックさんのスキルなんだろう。


「無駄である」


 だけど、瞬間移動を連発するディアルヴァには当たらない。


「速度を『強化』した瓦礫弾ってところだが……駄目か」


 舌打ちするジャックさん。


 魔将は光弾による攻撃を再開し、俺がスキルでそれを防ぐ。


 五十、百、百五十──。

 回数を重ねるにつれて、疲労が溜まり始める。


「くっ……ううぅ……っ」


 まずい、集中力が薄れてきた。


 俺たちから魔将への攻撃は当たらず、あいつは一方的に攻撃を仕掛けるのみ。

 防いでるだけじゃ、いずれやられる。


 状況を打開する手は一つだけ。


「倒すしかない……!」


 何か方法はないのか。

 あいつの隙をついて攻撃を当てる方法は。


 ふと一つの考えが頭に浮かんだ。


 俺とジャックさんのスキルで連携すれば──。


「……どうした?」


「思いつきました」


 怪訝そうなジャックさんに、俺はうなずいた。


「たぶん通用するのは一度きりですけど、奴を出し抜く方法を」


 これで──決着をつけてやる。

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