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絶対にダメージを受けないスキルをもらったので、冒険者として無双してみる  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第8章 六魔将ディアルヴァ

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9 「成長したんだよ」

「ワタシの呪術『竜牙結界(バリアファング)』は脱出不能の結界を作り、その内部を毒霧で満たすというもの。逃げ場のない住民を待っているのは死だけである。解毒方法はない。逃れる方法はただ一つ──五本の柱をすべて破壊することである」


 ディアルヴァが唐突に説明を始めた。


「柱は毒霧の噴霧装置であり、結界の発生装置でもある。あれは最後の一本──つまり、あれを壊せば王都を包む結界は消えるのである」


 なんだ、こいつ──。

 わざわざ俺たちに、王都を救う方法を教えるなんて。


「魔王の腹心ともあろう者が、随分と親切だな」


 俺は警戒心をあらわに魔将をにらんだ。

 奴に見えないように、背後のA班にハンドサインを送る。


 行け──と。


「親切? 何を言っているのであるか」


 ディアルヴァは淡々と言葉を継ぐ。


「ワタシがいるかぎり、柱を破壊することなどできん。絶対の自信があるからこそ教えたのである」


 嘲りでも、挑発でもなく。


 ただ事実をありのままに告げた──そんな感じだ。


「解決方法を知りながら、決してそれに届かない。希望をちらつかせておいて、それを叶えさせない。キミたち人間にとって、それは大きな絶望であろう。そして」


 ディアルヴァの言葉に初めて感情らしきものが籠もる。


 ──歓喜が。


「その絶望こそ、我ら魔族の糧。苦しみ、怯え、打ちひしがれ、絶望し──ワタシにさらなる力を与えるがよい」


「悪趣味な奴だな。俺たちを絶望させるために、わざわざ演説か」


 言いつつ、俺は背後に視線を向けた。


 すでにアイヴィたちA班の姿はない。

 さっきのハンドサインで、意図は伝わったはずだ。


 俺がこいつを食い止める──。

 その間にA班の残りのメンバーは柱まで回りこみ、破壊する。


 今、第一にやらなきゃいけないのは、ディアルヴァを倒すことじゃない。

 柱を壊して、王都を毒霧から解放することだ。


 すでに発生している毒霧は王都の魔法使いたちが結界を作って食い止めているけど、それも一時間から二時間くらいで限界を迎えるだろう。


 残された時間は、多くない。


「絶対の自信がある、と言ったはずだが?」


 ディアルヴァの右手から緑色の光弾が飛んだ。


「キミの防御能力は極めて高い。だが有効射程は短い。ガイラスヴリムとの戦闘映像から解析済みであるよ」


 光弾は俺の側をかすめ、冒険者の一団──C班へと飛んでいく。


「すべてを腐らせる呪力の弾丸だ。キミの位置からでは防げまい──」


 奴が勝ち誇った刹那、緑の光弾は俺が放った虹色の光によって弾き飛ばされた。


「何っ!?」


 ディアルヴァが驚きの声を上げる。


 第五の形態『宝珠の飛翔(ウイングスフィア)』。

 防御スキルをC班の前方で展開し、魔将の光弾を弾いたのだ。


「お前が知っているのはガイラスヴリムと戦ったときの俺だろ? 成長したんだよ、あれから──」


 俺は魔将を見据えた。


「……ほう、スキル自体を移動させることもできるのであるか。射程距離が飛躍的に上がるスキルとは」


「仲間はやらせない。全員、俺が護る」


 C班の前方で展開していたスキルを手元に戻すと、今度はディアルヴァへと放つ。

 虹色のドームが魔将の体を包んだ。


「これは──」


「第二の形態、不可侵領域(バリアフェイズ)。お前の魔法は封じた。発動自体を、な」


「封じた?」


 嘲笑とともにディアルヴァが地を蹴った。


「えっ……!?」


「キミの能力は確かに想定以上である。だが仮にも魔将たるワタシを、あまり舐めないことだ」


 ディアルヴァは俺のはるか後方──A班の間近に現れた。



 数十メティル離れたA班のもとまで跳躍したのだ。


 人間をはるかに超えるジャンプ力──。

 魔法使いタイプに見えるけど、身体能力も十分に高いらしい。


「彼がワタシを引きつけ、その間に柱を破壊する──その程度で出し抜いたつもりか?」


 ディアルヴァが枯れ木のような右手を伸ばした。


「くっ……!」


 リリスたちが迎撃の魔法を撃とうとするが、それよりも早く、


「さあ、腐れ」


 ディアルヴァがふたたび先ほどの光弾を放った。


「させるか!」


 俺は慌てて走り出す。


 彼我の距離は七十メティルほど。

 宝珠の飛翔(ウイングスフィア)の有効射程である五十メティルより、遠い。


「間に合え──」


 さらに走って距離を詰める。

 必死で右手を伸ばし、虹色の光球を飛ばす。


 緑の光弾がリリスたちに迫り──その眼前で弾かれた。


 なんとか寸前で有効射程まで届いたみたいだ。

 だけど安堵する前もなく、


「よく防いだ。だが──」


 ディアルヴァの姿が消える。


 これは──瞬間移動!

 以前に戦った魔族『空間食らい(Dイーター)』が使っていたのと同種の術か。


 A班を守るために不可侵領域(バリアフェイズ)を解除したため、魔法の発動が可能になったのだ。


「空間を自在に渡ることができるワタシに、どこまで対応できるかな?」


 音もなく、気配もなく。

 ディアルヴァは空間を何度も跳んで、俺を攪乱する。


 そして不意打ちのようなタイミングでA班に、あるいはC班に光弾を撃ってくる。


 俺はスキルを飛ばして迎撃するものの、いずれもギリギリのタイミングだった。


 A班やC班の魔法使いたちが攻撃呪文を放つが、これも空を渡るディアルヴァにはかすりもしない。

 スキルを不可侵領域(バリアフェイズ)に切り替えたいが、A班やC班を守るだけで手一杯だった。


 切り替えるための、一瞬の隙を作りたい──。


 と、そのときだった。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 雄たけびとともに青黒い影が突っこんできた。

 狼の顔と長大な尾を持つ、騎士。


「速い……」


 つぶやきを残して消える魔将。


 一瞬の後、現れたのはC班の背後だ。


「──何っ!?」


 驚きの声は俺ではなく、ディアルヴァのものだった。


 獣騎士は信じられない反応速度でターンすると、一瞬でディアルヴァまでの距離を詰めたのだ。


 超速の突進をディアルヴァは再度の空間跳躍で避ける。

 おかげで、魔将に一瞬の隙ができた。


「今だ──」


 俺はスキルを不可侵領域(バリアフェイズ)に切り替えた。

 魔法の発動を封じる虹色のドームが半径五十メティルほどにまで広がる。


 これでディアルヴァは空間跳躍ができない。


「ちいっ、戦神(ヴィム・フォルス)の力か。これほどの速度があるとは……」


 うめく魔将。


 獣騎士はそれをにらみ、視線で牽制しつつ、俺の側まで跳び下がった。

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