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4 「次の柱へ」

 その後、俺が魔獣の攻撃を完封し、アイヴィやリリスたちが波状攻撃をかけること、六度──。


 ずん……と、地響きを立てて、魔獣の巨体が崩れ落ちた。


「……ハルト・リーヴァ」


 つぶやいた俺をアイヴィがジッと見つめた。


「あなたの防御魔法は一体どうなっているのですか? この間の戦いではよく分かりませんでしたが、今は──詠唱が速すぎますし、効果も異常なほど高い。それに……」


「今は柱を壊すのが先だろ」


 俺はにっこりと笑った。


「ですが、あなたの力は魔法の域を超えているような──いえ、そうですね。行きましょう」


 どこか釈然としない様子ながらも、うなずくアイヴィ。


 俺たちは柱に向かって進んだ。

 町中はすでに毒霧が充満しているため、アリスたちの防御結界に包まれたままの移動である。


 やがて町はずれまでたどり着くと、そこには高さ三十メティルほどの尖塔があった。

 ぷしゅー、ぷしゅー、と音を立て、柱の根元から毒霧が絶え間なく噴き出している。


「あたしたちの攻撃魔法で壊すのがよさそうね」


 と、リリスを含めて攻撃魔法を得意とする魔法使いがいっせいに炎や雷などの呪文を放つ。

 十数発叩きこんだところで、柱は根元からへし折れ、毒霧の噴出も止まった。


「王都を包んでいる敵の結界も弱まったように感じます~」


 と、アリス。


 この柱は結界装置も兼ねているそうだから、破壊することで結界が弱まったんだろう。

 ここまでは順調である。


「じゃあ、行くか。次の柱へ」


 俺が提案した。


 王都に出現した柱は残り四本。

 この調子でどんどん壊していきたいところだ。


「……A班のリーダーはあたしなんですけど」


 アイヴィが不機嫌そうに頬を膨らませた。


「ですが、あなたの言う通りですね。他の柱でもそれぞれ苦戦しているでしょうから。助けに向かうべきです」




 そこにも、さっきの奴と似たような姿をした魔獣がいた。

 予想通りB班は苦戦しているようだ。


「俺があいつの攻撃を止める。皆はさっきの要領で攻撃を」


 指示を出し、俺は虹色の光球を飛ばした。


 ブレスを、牙を、爪を、尾を。

 状況に応じて防御スキルを切り替え、その攻撃を完封する。


 いくら強力な魔獣といえど、こっちが一方的に攻撃できる状況では勝敗は明らかだ。


 炎や雷などの攻撃魔法の連発。

 矢や投槍などの物理攻撃の連打。


 まさしく集中砲火を食らった魔獣は、一たまりもなく倒れたのだった。


 ──そして、俺たちはさらに進む。

 C班のいる柱へと。


「えっ……!?」


 到着した俺たちが見たのは、地面に倒れ伏した魔獣の姿だった。

 頭部を粉砕され、殴り殺されている。


 それを為した者は、俺たちの前に敢然と立っていた。


 たくましい体躯を覆う、青黒い甲冑。

 狼の頭部と長大な尾。


 振り返ったそいつは──獣のような姿をした騎士だった。


    ※


(ディアルヴァの策──果たして上手くいきますかしら?)


 戻ってきた魔将に視線をやり、メリエルは心中でつぶやく。


 ディアルヴァの呪術はシンプルな仕組みだ。


 王都の外縁に、五本の柱とそれを守護する分身体『竜牙獣』を配置。

 柱の内部を猛毒の霧で満たして住人を皆殺しにする。


 柱は毒を発生させる装置であると同時に、結界を生み出す機能も備え、王都の人間を内部に閉じこめる。


 結界を解除するには柱をすべて破壊するしかないが、それぞれの柱は竜牙獣が守っており、とても短時間で倒せるものではない。


 脱出不可能な状態で、彼らは死を待つのみ。


 ──という話だったのだが。


「我が分身が次々に破壊されていく……!?」


 うめくディアルヴァを、メリエルは冷ややかに見据えた。


「神の力を持つ者を、少し侮りすぎたようですわね?」


 言いながら、口元がわずかに綻ぶのを自覚する。


 このままディアルヴァの呪術が失敗すれば、リリスやアリスは死なずに済む。


(また、わたくしは何を──人間ごときの生死を気にする必要なんてないのに)


 自分の中に生じる気持ちの揺らぎが、不快だった。

 魔族の将たる彼女が抱いてよい感情ではない。


 そもそも『心』が不安定に揺れ、振り回されるなど──まるで人間のようではないか。


「……分身を遣わした程度で仕留められる相手ではなかったかもしれん。だが時間を稼ぐには十分すぎるほどの戦力だったはずである」


 反論するディアルヴァ。


「倒されるのが早すぎる──」


「どうやら護りの女神(イルファリア)だけでなく、戦神(ヴィム・フォルス)の力を持つ者も戦っているようだ。二つの神の力が高まり、共鳴しているのを感じる」


 魔王が苦々しい声でつぶやいた。


「かえって神の力を持つ者たちを呼応させてしまったのかもしれん。いや、いずれにしても奴らは出会い、引き合う運命を持っているのか……」


「神の力を持つ者が二人もいるとなれば、分身では手に負えますまい」


 ディアルヴァが魔王に向き直った。


「かくなるうえはワタシが直接出向きます、魔王様」


「人間への害意を高めれば、それだけ人の世界にいられる時間が少なくなる。最悪の場合は魔界へ戻る時間もなくなり消滅する──すべて承知のうえか?」


「ワタシは神の力を持つ者を排除する、と魔王様にお約束いたしました。魔将の一人として、命に代えても果たす所存」


 言うなり、ディアルヴァの姿は消え失せた。

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