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絶対にダメージを受けないスキルをもらったので、冒険者として無双してみる  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第7章 成長するスキル

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6 「心の『核』です」

「封じただと……馬鹿な!?」


 愕然とうめくミスティックを、俺は冷然と見据えた。


「魔法防御とは根本的に違う……! 魔法の発動を──事象の具現化そのものを無効にする力など、人間に扱えるはずが……まるでこれは神域の力──!?」


「戦いの最中に気を抜かないことね! 隙だらけよ、魔族!」


 アイヴィが威勢よく叫んで鞭を振るう。


「し、しまった! くそ、魔法さえ使えれば──」


 ミスティックは慌てて防御魔法を使おうとしたみたいだけど、俺のスキルによってその発動は封じられている。

 無防備な魔族にアイヴィの鞭が命中し、さらに燃え盛る火炎がその身を焼き尽くした。


「討伐完了ね」


 ルカが剣を鞘に納めた。


「以前よりも防御魔法が熟練しているみたいね。効果が発動する場所を移動させたり、いくつもの種類を瞬時に使い分けるなんて……」


 俺の元に歩み寄り、賞賛するルカ。


「一ヶ月の間にいろいろと依頼をこなしたからな」


「ううう……男なんかに助けられた……ぐぬぬ」


「アイヴィ?」


「あ、あの、その……うぐぐぐ」


 チラチラと俺を見ながら、モジモジとするアイヴィ。

 顔が真っ赤だぞ、どうした?


「……あ、ありがとう、ございました……ふ、ふんっ、いちおう礼だけは言っておきますからっ」


 アイヴィが俺に頭を下げた。


「お姉さまが認めたというあなたの力──あたしも、その、み、認めなくもなくもなくもなくもない、かも、です……」


 どこか悔しげな表情でうめく。


 意地っ張りな子だなぁ……。

 微笑ましく感じてしまった。


 何はともあれ、町の人たちに被害を出さずに討伐できてよかった。

 結局、手伝うことになっちゃったけど、成り行きだし規則違反ってことにはならないだろう、たぶん。


 ……大丈夫だよ、な?

 ちょっとだけ不安になりつつも、俺は防御スキルを解く。




 その瞬間、視界が真っ白い光に覆われた。




「えっ……!?」


 周囲の景色が変化する。

 町も、人も消えて、どこまでも白いモヤみたいなものが続いている。


 前にも同じようなことがあったな。

 これは意識の中の世界(インナースペース)ってやつか?


「あれ? いつもと違う……」


 目の前に蜃気楼みたいな揺らめきが見えた。


 揺らめきはやがて薄れ、一つのシルエットを作り出した。


 純白の神殿。

 三十本ほどの太い円柱で屋根を支えるような形の、シンプルなデザインだ。


「確かグレゴリオと戦ったときの……」


 そうだ、あのときは神殿の中に入ったら、新しい力が目覚めたんだっけ。


 俺は引き寄せられるように、神殿の中に入った。

 大理石のような素材でできた通路をまっすぐに進む。


「ハルト、また会えましたね」


 中心部で待っていたのは、金髪碧眼の可愛らしい女の子だった。

 豪奢な椅子にちょこんと座っている。


 護りを司る女神イルファリア。

 正確には、俺に力を授けてくれた女神さまの意志の欠片らしい。


「静かで、穏やかで……心地のいい場所です。前回に続いて、これをまた具象化できるとは……素晴らしいですね」


「えっと、この神殿ってなんなんですか?」


 たずねる俺。


「ハルトの心の『核』です」


「核……?」


「ここはあなたの意識の世界。心によって象られた場所。あなたの心が強まり、成長すれば、この世界も姿を変えます」


「心が、成長……」


「先日の、神のスキルを持つ者との戦いが、あなたの精神を向上させたようですね」


 グレゴリオのことか。


「それに呼応して、ハルトのスキルも強くなっているはずです。すでに実感しているのではありませんか?」


「……確かに持続時間や効果範囲が前より増してる感じがします」


「人間だけが持つ、不安定な揺らぎ。神や魔ですら持ちえない力──それが『心』です」


 女神さまが厳かに告げた。


「不安定ゆえに、それは弱さにつながり──逆に、強さへ昇華することもあるでしょう。殺戮の紅蓮神(メルギアス)の力を持つ者は、己の欲望という弱さに飲まれ、滅びました。あなたはそうならないように願っています」


 俺は、グレゴリオの末路を思い出した。


 女神さまは椅子から降りると、俺の手を引いた。


「さあ、こちらへ」


「えっ」


「ハルトに見せたいものがあります」


 言って、女神さまが進んでいく。

 俺は黙ってついていった。


 神殿の最奥までたどり着くと、そこには一つの扉があった。


「これは──」


「最後の領域です」


「えっ」


「七種のスキルは、因子や魔法といった神・魔・竜の力の模造品ではなく、神の力のオリジナル──あなたがその深淵までたどり着いたとき、この扉は開かれるでしょう」


 女神さまが扉の表面を手のひらで撫でる。


「そしてそのとき、あなたは神そのものともいえる絶大な力を得る。ただし──」


 ゆっくりと彼女の姿が薄れていく。


「あ、あの……」




 そのときあなたは、人のままでいられるかどうか──。




 気がつくと、俺は元の場所にいた。


 近くには二体の魔族の死体が横たわっている。

 そして、俺の側にはルカとアイヴィの姿。


「どうかしたの、ハルト?」


 怪訝そうなルカ。


「まさかお姉さまの美貌に見とれてたんじゃ……だめですよ。お姉さまは男なんかに渡しませんっ」


 アイヴィがムッと口を尖らせ、ルカの腕にしがみついた。


 どうやら時間はまったく経っていないらしい。


「ふうっ」


 俺は大きく息を吐き出した。


 さっきの女神さまの言葉を、心の中で繰り返す。


 俺がいずれ得るかもしれない、絶大な力。


 そのとき俺は──俺のままでいられるんだろうか。

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