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絶対にダメージを受けないスキルをもらったので、冒険者として無双してみる  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第6章 守護者VS殺戮者

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8 「神のスキルは共鳴している」

 王都の外れにある尖塔──。


「あの女、絶対許さねぇ」


 その最上階でグレゴリオは憤っていた。


「俺様とあいつのゲームだってのに、割りこみやがって」


 ハルトの目の前で殺してやるからな──。

 煮えたぎる怒りは、そのまま殺意へと転化する。


「猛っているな、人間よ」


 ふいに、声が聞こえた。


「なんだ、ここは……?」


 気が付くと、グレゴリオは白い空間に浮かんでいた。


 覚えがある。

 そう、以前に『死んだ』とき──神と対面した空間にそっくりだった。


 目の前に立っているのは、炎をまとった細身の男だ。

 殺戮を司る神──メルギアス。


「俺様が標的にした相手は、どんな奴だろうとぶっ殺してきた。どんなに強い冒険者だろうが、魔族や魔獣だろうが。いや、たとえ魔王だって俺なら殺せる──」


 ぎりっと奥歯を噛みしめる。


「なのに、あいつだけは殺せなかった……気分悪ぃぜ!」


「貴様と同じく、相手もまた神の力を持っているからな。一筋縄ではいかん」


 メルギアスの全身を覆う炎が、ゆらめいた。


「そしてスキルといえど万能ではない。できることとできないことが定められている。貴様の力が『対象に触れ』なければ効果を発揮しないように──奴のスキルにもまた制限があるはずだ。いいかえれば、弱点がな」


「弱点……か」


「そこを突けば、勝てる」


「へっ、やっと出てきたかと思えば、やけに親切じゃねーか」


「そしてもう一つ」


 鼻を鳴らしたグレゴリオに、メルギアスはにこりともせず告げる。


「神のスキルは共鳴している。そして互いにその力を上げていく……感じぬか? 貴様の中で神の力が増大しているのを」


「力が上がっている……だと?」


 つぶやいたとたん、体中が燃えるように熱くなった。


 性的な快感にも似た、高ぶり。

 全身から炎が噴き上がるような感覚。


 今まで限界だと感じていたものが、限界ではなくなるような高揚感。


「──なるほど」


 グレゴリオはにやりと笑った。


「それを好きなように使え。本能のままに、衝動のままに、欲望のままに。意志のままに」


「好きなように、か」


 グレゴリオはほくそ笑んだ。


「なら俺様は、殺すために使う。殺すための殺しのための殺しのための殺しのための──くははははははは!」


 哄笑しながら、いつの間にかグレゴリオは元の場所に戻っていた。

 一瞬の白昼夢のような今の光景は、夢か、幻か。


 あるいは意識の中で、実際にメルギアスと出会っていたのか。


「グレゴリオ──」


 扉が開き、二つの人影が現れた。


 ハルトと、黄金の髪をツインテールにした美少女だ。


「ほう、よく俺様の居場所が分かったな」


「お前を捕まえる」


「はっ、やってみろ!」


 グレゴリオは嘲笑した。


 仮に捕まったところで、彼はいくらでも脱出の方法がある。


 牢に捕らわれれば、牢を『殺す』。

 門番がいるなら門番を『殺す』。

 追ってくる者も、すべて『殺す』


 もっとも、むざむざと捕らわれるつもりはない。


 先ほどの借りを返すために、目の前の二人を確実に殺してやる──!


     ※


 グレゴリオに付着した探知魔印(マーカー)をリリスに探知してもらい、俺たちは王都の外れにある尖塔までやって来た。


 一番安全なのは、奴に気づかれずにリリスが攻撃魔法で狙撃することだ。

 だけど奴は屋上にいるらしく、そこまでの道は階段のみ。


 リリスに風の魔法で飛ばしてもらうことも考えたけど、その際の衝撃音で気づかれるだろうし、隠れて狙撃するというのは難しい。


 なら、正面から対決するしかない──。


 俺とリリスは階段を上がり、屋上の扉を開けた。

 グレゴリオと対峙する。




 ──どくんっ。




 ふいに、胸の鼓動が高まった。

 奴と向き合っているだけで、心臓が痛いくらいだ。


 ──なんだ、この感じは。


 自分の中の何かが高ぶっているような、感覚。

 闘志とか怒りとか、あるいは緊張とか不安とか──そういった感情の高まりとは違う。


 もっと俺の根源的な何かが爆発しそうな、奇妙な感覚だった。


雷襲弾(サンダーバレット)!」


 訝る俺の考えを打ち破るように、リリスが呪文を唱える。


「無駄だぜぇ」


 放たれた雷の攻撃魔法は、グレゴリオの青い光球によってあっさりと消し飛ばされる。


『魔法を殺す』スキルか。

 だけど、それくらいは想定済みだ。


「あいつのスキル──いや、魔法には弾数限界がありそうだ。魔力が尽きるまで撃ち続けてくれ」


「了解よ──紅蓮球(ファイアボム)!」


 リリスが火炎魔法を放つ。


「ちっ」


 舌打ち混じりに、グレゴリオがまたもや青い光球でそれを消し飛ばした。

 だけど、その表情はさっきまでよりも険しい。


「あと四発だな、グレゴリオ」


 言いながらも、警戒は怠らない。

 本当に奴が一度に撃てる数が六発とは限らないからだ。


「はっ、勝ち誇りやがって」


 その周囲に浮かび上がった赤い光球は全部で七つ。


「……一度に撃てる数が六発っていうのは、やっぱり嘘だったのか」


「いや、嘘じゃねーよ」


 笑うグレゴリオ。


「ただし、さっきまでは──な」


「何?」


「メルギアスの野郎が面白いことを言ってたぜ。俺様たちは互いに共鳴し、その力を強めていくんだとよ」


「共鳴……?」


「さっき、コツをつかんだんだ。そら、もう一つ──具象破弾(マグナム)!」


 勝ち誇るように告げたグレゴリオの瞳に──緑の紋様が浮かんだ。


 新たに現れた緑の光球が、俺に向かって放たれる。


「違うタイプのスキル──!?」


 グレゴリオが今まで撃ってきたのは『人を殺す』赤い光球、『魔法を殺す』青い光球、そして『気体を殺す』橙色の光球だった。


 この緑の光球は一体何を『殺す』力を持っているのか──。


 とにかく、俺にできるのは防ぐことだけだ。


 迫る光球を迎え撃つべく、護りの障壁(アーマーフェイズ)を張った。

 極彩色の輝きが緑の光球を弾き返す。


 ──かと思いきや、光球はコースを変えて俺たちの足元に炸裂した。


「えっ……!?」


「緑の光球は固体を『殺す』」


 グレゴリオが言い放つ。


 次の瞬間、俺の足元の床だけが粉々に砕け散った。

 そのまま階下まで落下する。


 防御スキルを展開しているからダメージはないけど、階上にはリリスだけが取り残されてしまった。


「そこで見てろ。まずテメェの仲間から先に殺す!」


「くっ……!」


 慌てて階段を上ろうとするが、


「させねーよ!」


 グレゴリオが新たに放った光球が、その階段も崩す。

 これじゃ、リリスのところまで上れない──。


「さあ、二人っきりだ。殺してやるぜ、女ァ!」


 グレゴリオが赤い光球を生み出し、リリスに向かって放つ。


雷襲弾(サンダーバレット)!」


 彼女は雷撃魔法で撃ち落とそうとするが、赤い光球は魔法を寄せつけずに突き進んでいく。


「リリス──!」


 俺は叫んだ。


 駄目だ、間に合わない。

 彼女の元まで行く道は断たれた。


 赤い光球が彼女の間近に迫る。


「くっ……!」


 転がるようにして、それを避けるリリス。


「無駄だ!」


 グレゴリオが叫んだ。


 赤い光球は空中で軌道を変え、ふたたび彼女に向かっていく。


 奴の意志によって、光球の動きをコントロールできるのか!

 体勢が崩れたリリスは、今度こそ避けられない。


 駄目だ、殺される──。


 絶望とともに俺はその光景を見つめることしかできなかった。


 刹那、胸の中に二つの感情が広がる。


 グレゴリオに対する、許せないという怒りと。

 リリスに対する、守りたいという想いと。




 ──どくんっ!




 心臓の鼓動が、破れそうなほど早まる。


 さっきと同じ感覚だった。


 いや、さっきよりももっと高まっている。

 昂ぶって、いる。


 まだだ。

 やらせない。


 リリスは──俺が護る!

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