6 「明日へと続く道だ」
後書きにちょっとしたお知らせがありますm(_ _)m
「出力が上がっている……!?」
俺の体から吹き上がる黄金の光はどこまでも──どこまでも広がっていく。
すでに一つや二つの国を覆うレベルではなくなっていた。
地平線まで──そのさらに先まで伸びていくのが分かる。
まるで、この惑星すべてを包みこむような。
星そのものを護る、絶対結界。
「わたしの冥天門が世界中の想いを集めている」
イオが言った。
想い……?
ふと気づくと、どこかから声が聞こえる気がした。
気のせいじゃない。
確かに、聞こえる──。
『がんばれ』『負けるな』と。
世界中から応援の声が。
世界中の人たちが、俺たちの戦いを見ている……のか?
あるいは、それは裁定者の力なのかもしれない。
奴の言葉が、意志が、世界中に伝わり──。
それは同時に、俺たちの抗戦をも世界中に知らしめた。
そして、人々は意志を示した。
裁定者に従う道ではなく。
自分たちの意志で、世界を守るという決断を。
想いを。
「今、わかった……これこそが冥天門の真髄。命を犠牲にするのではなく、想いを捧げ、対象に注ぐ。今はハルト、あなたに」
黄金の門に四方八方から虹色のきらめきが吸いこまれていくのが見える。
これは、世界中の人々の想いが集まっているのか?
そして、そのきらめきは収束し、俺の中に入っていく。
俺のスキルに、さらなる力を与えてくれる──。
「ハルトさん、負けないで……私たちも支えます」
アリスの柔らかな声音が、
「ハルト、私も側にいる」
ルカの凛とした瞳が、
「ボクだってついてるからね、ハルトくん」
サロメの悪戯っぽい笑みが、
「ハルト、あたしたちの想いを受け取って──」
リリスの強い意志が。
温かく、優しく、そして愛おしい──そんな想いが、俺の中に入ってくる。
力が湧いてくる。
どこまでも。
どこまでも──。
「馬鹿な、我の力が届かぬ……拒絶されている……管理、できぬ」
裁定者が戸惑いの叫びを上げた。
「なぜだ、人間や魔族ごときが……世界の管理者たる、我を圧するだと……」
「俺たちは、お前に管理される存在じゃない」
俺は裁定者を見据えた。
「自分の意志で、自分たちの描いた未来を歩む」
『封絶の世界』の輝きがさらにあふれた。
黄金の光が虹色の巨人の周囲にまとわりつき、拘束する。
「動けぬ……封じられる……この、我の力が──!?」
「大切な仲間たちと一緒に、大好きな彼女たちと一緒に」
俺たちの意志が巨人を覆い尽くした。
「ずっと……ずっと歩いていく」
どこまでも広がる黄金の世界──。
俺は虹色の巨人と、一対一で向き合っていた。
なぜか俺は裁定者と同じサイズになっている。
奴が縮んだのか、俺が大きくなったのか。
あるいはそのどちらでもなく、ここが現実とは違う空間で、俺たちの姿は投影されたものにすぎないのか。
「我が作りたかったのは完璧に調和した世界だ」
裁定者が言った。
「そこには争いはない。苦しみも憎しみも、いっさいの負の要素が存在しない。完全平和を実現した世界だ」
巨人の全身から虹の輝きが炎のように立ち上った。
まるで奴の怒りのように。
──いや、違うか。
奴には感情なんてない。
それが今なら分かる。
まるで機械のように『世界の調和』を目指し続ける。
ただ、それだけの存在なんだ……。
「汝らはそれを崩す。いずれは希望を失い、絶望の暗黒に染まるかもしれない世界を作るかもしれんのだぞ」
「だけど、希望に満ちた世界が生まれるかもしれない」
俺は言い返した。
奴に『心』が通じるのかは分からない・
だけど、ぶつけてみよう。
「すべてが調和した世界は、それだけで完結しているから──それ以上、前には進めない。進歩も成長もない」
「我はそれで良いと考えた。だが」
「俺たちは、前に進みたい」
「できるのか、汝らに? 力ある存在が──神が消えた世界で」
「きっとできるよ。俺は信じてる。人間の強さを」
今までの戦いで出会った人たちと、通わせた想いを。
その強さを。
だから信じることができる。
「俺たちが歩む道は──」
俺は裁定者に向かって告げた。
笑顔で、告げた。
「きっと、希望が満ちた明日へと続く道だ」








