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絶対にダメージを受けないスキルをもらったので、冒険者として無双してみる  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第21章 そして裁定の刻へ

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6 「未来のための礎と」

 神と魔が対峙し、次々と消滅していく──その余波が巨大なエネルギーの嵐となって荒れ狂っていた。

 俺は黄金の防御フィールド『封絶の世界(エリュシオンゲート)』を展開し続け、リリスたちを守っている。


 と──。

 気が付くと、俺はまったく別の場所に転移していた。


 どうやら意識内の世界(インナースペース)のようだ。

 だけど、


「今までと違う──?」


 俺は戸惑いながら周囲を見回した。


 何度か来たことがある意識の世界は、どこまでも真っ白な空間が広がっていて、そこに神殿が建っていた。

 だけど、今回は景色がまったく違う。


 白い砂浜と、青い海。

 遠くのほうに尖塔が見える。


 まるで観光地みたいだ。


「ここはあなたの意識を映し出した世界。あなたの精神性が変化すれば、この世界もまた変化します」


 声とともに、前方で光が弾けた。


 腰まで届く金色の光に、青い瞳の美女。

 俺にスキルを与えてくれた護りの女神イルファリアだった。


「俺が……今までとは変わった、ということですか?」

「ええ。あなたはもう、今までのあなたではありません、ハルト」


 と、女神さま。


「外の世界に戻れば、私はすぐにでも消滅するでしょう。護りの力を使ったところで、魔王や精鋭魔族たちの軍勢は抑えるのは、そう長くはもちません」

「でも、俺の防御スキルだってあるし、なんとか食い止められませんか?」


 俺はイルファリアに歩み寄った。


「魔の者に近づいたら、その、消滅する……んですよね?」

「ええ」

「消えてほしくないです。女神さまに」


 握りしめた拳が、震える。


 だって、イルファリアは──。

 俺に、力をくれた。


 大切なものを守るための力を。


 この力があったから──俺は大勢の人を守ることができた。


 俺を変えてくれた力。

 俺を支えてくれた力。


 それを与えてくれたのは、女神さまなんだから。


「感謝しています。心から。だから、俺はあなたに──」


 消えてほしくない……!


「ありがとう、ハルト」


 女神さまが微笑んだ。

 どこか悲しげで、切なげな表情で。


「ですが、これは運命なのです。神が消え、魔が去り、竜は封じられ、そして世界は『裁定者(さいていしゃ)』から解放される。人が、何者にも縛られず、己の意志で歩む未来が始まる──」

「裁定……者……?」


 初めて聞く言葉に、俺は目を瞬かせた。


 初めて聞く言葉なのに、体中から立ち上る悪寒はなんだろう。

 初めて聞く言葉なのに、すさまじい畏怖が湧き上がるのはなぜだろう。


「この世界は神、魔、竜という三種の超越者が存在します。太古の昔、神と魔は争い、そこに竜が加わり、大いなる戦いが起きました。竜は静観していたものもいるので、主に争った神と魔の名を関し、それは『神魔大戦』と呼ばれています」


 女神さまが語りだす。


「戦いは熾烈を極め、いくつもの大陸が消滅し、また生まれ、そして消え──海や空も砕け、世界そのものが崩壊するほどの激しさでした。そんな状況に介入し、戦いを調停した者──それこそが『裁定者』と呼ばれる存在なのです」


 言って、物憂げなため息をつく女神さま。


「裁定者とは、いわばあらゆる世界の管理者です。その力は神、魔、竜をもはるかに超えています。裁定者はその名の通り、世界の争いを『裁定』するために現れたのです」

「争いを……裁定……?」

「神は天界に、魔は魔界に、それぞれ閉じこめられ、人間界にはほとんど出入りすることさえできなくなりました。竜は人間界の各所に封じられ、身動きすらできなくなりました」


 なるほど、以前に修業した罪帝覇竜(グリード)の神殿もそういう場所だったのか。


「そして、私たちには『ある制約』が課されました」

「ある制約……?」

「神や魔、竜は一定距離まで近づくと、互いに消滅してしまうのです。これによって神魔竜は二度と争うことができなくなりました」


 と、女神さま。


「また、神は人に干渉することを禁じられました。最初の一億年はあらゆる干渉を禁じられ、次の一千万年は下界を見ることだけは許され、次の百万年は選ばれた人間と会話することだけは許される──と、少しずつ制限が緩和されていったものの、ほとんど影響力を失ってしまいました」


 それが神に課された制約、か。


「神々は永い時を待ち──ついに、その時は満ちました。そして計画が始動しました」


 イルファリアが厳かに告げる。


「終わりの始まりの(とき)を──」

「終わりの……始まり……」

「制限が緩まりつつあるとはいえ、神が人間界に影響を及ぼすために力を振るえば、即座に消されてしまいます。だからゲームという体裁を取りました」

「ゲーム……?」


 俺は眉を寄せた。


 かつてセフィリアから聞いた話を思い出す。




『あたしたちがスキルを使って何をするのか、人間の社会にどう影響を与えるのか──それをただ見守る遊び。神さまにとっては暇つぶしなのかなー? それともあたしたちを見てるだけで楽しいのかな?』




「ですが、ゲームとは表向きのこと。神々は──人間たちが、力を進化させることを信じていました。そして、それに期待し、賭けたのです」


 イルファリアは語る。


 神々の真の目論みを。

 企てを。


 神や魔、竜の超越した力は心によって成長する。

 超越者である神魔竜、それゆえに成長とは無縁。


 が、人間は不完全ゆえに爆発的な成長力を秘めている。

 その心と神のスキルが合わされば──万に一つも、裁定者に抗する力が生まれるかも。


「俺たち人間が……?」

「人の心には善だけでなく悪も眠っています。スキルを与えた者の中には、悪しき方向に使う者もいるでしょう。神々に反逆する者さえ──ですが、それもまた織りこみ済みでした。私たちは未来のための礎となり、消えるつもりでしたから」


 女神さまが微笑んだ。


 見ているだけで、胸が悲しく締めつけられるような──切ない笑顔だった。

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