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絶対にダメージを受けないスキルをもらったので、冒険者として無双してみる  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第21章 そして裁定の刻へ

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5 「最後の機会です」

「おお、ついに──やったか!」


 ラフィールは、確かに見た。


 黄金の結界が砕け散り、六つの光が流星のごとく飛んでいくのを。


 結界は、地上に降臨した六柱の神々が自分たちを守るために作ったものだ。

 高位の神や魔はこの世界に降り立つと、互いに引き寄せられてしまう。

 そして一定距離まで近づくことで消滅してしまうのだ。

 そのため、神々は結界に閉じこもって魔との接触を防ごうとしていた。


 だが今──神を守るその結界は失われた。

 人の、力によって。


「成功ですな」


 ラフィール伯爵は隣に立つ美女に向かって。満足げに笑った。

 胸が高鳴るのを感じる。


「人の手で、神に引導を渡す──なんと畏れ多く、なんと心昂ぶる所業でしょうか」


 ラフィールの声が興奮で震えた。


 自分が、神を超えたような実感すらあった。


 神の上に立ち、人の世界のすべてを統べる覇王となる──。

 この、ベネディクト・ラフィールが。


「これで滅ぶ」


 隣にいるギルド長テオドラが満足げに吐息をもらす。


「ええ、神も、魔も」


 流星が飛び去った先を見つめ、ラフィールが笑みを濃くした。


 あの先には、きっと魔王や高位魔族がいることだろう。

 そして互いにぶつかり、消え去るのだ。


 あとに残るのは──人間のみ。

 世界に残るのは、人間のみ。


「そして、人がすべての世界の頂点に」

「我らこそが、すべての頂点たる覇王に」


 ラフィールとテオドラが謳うように告げる。


(いや、最終的な王はこの私だ。私は、私自身と私の愛する国のため──その覇道を阻む者はすべて排除する)


 妖艶なギルド長に燃えるような視線を送る。


(あなたとて例外ではないぞ。冒険者ギルドの長、テオドラよ──)


 心の奥に燃え盛る野心は、今や業火となってラフィールを内から焼いていた。


    ※


 突然現れた六つの光の柱──神々を、俺は呆然と見つめていた。


「神々がこの場に現れた……ふん、人間どものしわざか」


 魔王がうなる。


「おのれ……神をも畏れぬ所業を……」


 光の柱の一つから神の声が響く。


 神々と魔王の対峙──。

 荘厳なはずの光景は、だけど生々しい怨念が渦巻いているように見えた。


 これが、バネッサさんたちが目論んだことなのか。


 神と魔王を出会わせ、互いに消滅させる──と。


「魔王様をお守りせよ!」


 と、岩の戦士──ビクティムが突進する。

 それに続いて、魔族たちもいっせいに神々に向かっていった。


 魔王やイオの前に立ち、まるで壁のように。


「これ以上近づいては……ぐ、ぅ……っ」

「まずいぞ、このままでは……ううっ……」


 六本の光の柱の内の二本から苦鳴が聞こえた。

 ビクティムたちはさらに前へ進む。


「魔王様のため、この身を捧げます──」


 静かな、満足げな声とともに。


 あっけなく、あっさりと──。

 二柱の神とビクティムや魔族たちが、同時に消滅した。


「えっ……!?」


 あまりにも簡単に消え去った神と魔に、俺は呆気にとられる。


 それはすぐに戦慄へと変わった。


 どうやら神と魔はある程度の距離まで近づくと、互いに消滅してしまうらしい。

 以前にも、天使たちが魔の者と同時に消えたことがあったけれど……。

 その現象は、神や六魔将クラスでさえ逃れられないようだ。


戦神(ヴィム・フォルス)……殺戮神(メルギアス)……」


 他の光の柱たちから、悲しげなつぶやきが聞こえた。

 今消滅した神々の名前だろう。


「イオ、分かっているな」

「はい、父上」


 魔王の言葉に、オッドアイの美少女がうなずいた。


冥天門(コキュートスゲート)、出力最大。『黒幻洞(サイレーガ)』展開」


 空に無数の黒点が出現した。

 そこから、おびただしい数の影が降り立つ。


 るおおおおおおおおおおおおおおおおおんっ!


 響き渡る咆哮。

 魔族や魔獣の大軍団だった。


「こやつらはいずれも高位の魔族や魔獣。六魔将ほどではないが、それに準ずる強者たちだ」


 と、魔王。


「これだけの数をそろえれば、神の消滅に釣り合うだろう。さあ、行け。己の身を犠牲に神を滅ぼし、魔界の礎となるのだ」


 むおおおおおおおおむんんっ!


 不気味な雄叫びとともに、魔の軍団が残り四つの光柱に突進した。

 そのうちの一つから飛び出した神が大量の魔の者の前に立つ。


「私の予知通りなら、これで……最後にあなたたちが残れば、必ず……」


 そんな言葉を残し、その神は魔群とともに消滅した。


運命の女神(ルーヴ)……!」


 他の三柱から沈痛な声がもれる。


「手は緩めぬぞ──イオ」

「はっ。神々がすべて消え去るまで、魔を召喚し続けます──『冥天門(コキュートスゲート)』!」


 扉が開き、そこから新たな魔の軍勢が現れた。


 殺到する魔に、光の柱から新たに飛び出した神がその体を盾にして、食い止める。

 そして、またもや神と魔は同時に消滅した。


地と風の王神(アーダ・エル)……」


 残った二柱の声は沈痛すら通り越し、一種の諦念さえ漂っている。


「ふん、神々ともあろうものがあまりにも無策だな。それとも万策尽きたか?」

「策など使わぬ」

「ええ、私たちはただ──託すだけです」


 二柱の神が凛と告げる。


 消滅の危機においても、まったく揺るがない毅然とした態度。

 神の名にふさわしい威厳だった。


「託す? 誰にだ?」


 魔王が笑う。


「そもそも託している余裕すらあるまい。残るは汝らだけだぞ。ガレーザ、イルファリア」


 じりじりと魔の軍団が二柱の神に近づいていく。


「させない──」


 俺は黄金の障壁を生み出し、神々と魔の軍団の間に一枚張った。

 第一のスキル形態『護りの障壁(アーマーフェイズ)』。


 基本防御のうち『弾く』ことに特化した壁として設定し、互いに反発させて近づけさせないようにする。

 さらに、


「私も、もう一枚──」


 イルファリアが同じような黄金の障壁を生みだした。

 その効果も、俺が作ったものと似たものだろう。


 二枚の防御壁によって、神々と魔の軍団は一定の距離を取ることに成功する。


 同時に、神と魔の消滅現象も止まった。

 やっぱり、ある程度近づかなければ、あの現象は起きないみたいだ。


「今のうちに──ハルトに伝えたいことがあります。いいですか?」


 女神さまが俺に呼びかけた。


「伝えたい……こと?」

「おそらく、これがあなたと話す最後の機会です」

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