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絶対にダメージを受けないスキルをもらったので、冒険者として無双してみる  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第21章 そして裁定の刻へ

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3 「最終局面だ」

 かつて、俺が防御スキルの完全な形態『封絶の世界(エリュシオンゲート)』へと踏みこんだとき、女神イルファリアはこう言った。




『そこへ踏み出せば、あなたはあなたでいられなくなるかもしれません。覚悟は、ありますか?』




 今ふたたび、その言葉を実感する。

 あのとき以上に、強く実感する。


 俺という存在が、俺以外の何者かになってしまう──。

 それは絶対的で、圧倒的な恐怖だった。


 だけど、


「とりあえず、お前の攻撃を防げるなら──なんでもいい。今必要なのは、みんなを護るための力だ」


 俺は魔王に向かってニヤリと笑った。


 込み上げる恐怖は消えない。

 だけど、闘志が失せることはない。


「……精神が高ぶっているな。それに合わせてスキルも上昇する──なるほど。人間固有の現象だ」


 魔王がうなる。


「やはり、イオと同じか」

「何?」

「『冥天門(コキュートスゲート)』の力は、さらに増しています」


 イオが魔王にうなずいた。


「人の精神(こころ)の力は、神や魔のスキルを増幅させる模様」

「ならば、よし。お前こそが『あの者』に対抗する切り札になれる──必ず」


 魔王が、一歩踏み出した。


「さあ、最終局面だ。あまり時間をかけては、我々全員が『あの者』に消されるかもしれぬからな」


 全身を覆う黒い炎が最大限に燃えあがった。

 上空数百メティルまで届くほどに──。


 それが、奴の最終攻撃の合図だった。


    ※


 ジャックの渾身の一撃が、魔族を打ち砕く。


「はあ、はあ、はあ……!」


 全身からごっそりと力が抜けたような疲労感があった。


 次に、体の内側から何かが崩壊していくような感覚が訪れる。

 自分の中の決定的な何かが──。


「……まだだ」


 ジャックは『強化』のスキルであらゆる耐久力を底上げし、それに対抗する。


 抗わなければ、おそらく自分という存在は崩れ去り、消えてしまう。

 そんな予感があった。


 すでにジャックは、戦える体ではなくなっているのだろう。

 レヴィンの呪いを受け、ハルトと激戦を繰り広げ──。

 その果てに訪れた心身のダメージは、もはやスキルを正常に操ることさえ困難にしていた。


「それでも──俺には、まだできることがある」


 たとえ不完全でも、『強化』のスキルは未だジャックとともにある。

 全力を出せなくても、戦うことはできる。


 この目に映る大切な人たちを守ることだって、できるはずだ。




 ──ぞくり。




 ふいに、背筋が凍りついた。


「あ……ぐ……っ……!?」


 全身の硬質化が一瞬にして解け、もとの姿に戻る。

 いや、戻らされたのだ。


「なんだ、これは……!?」


 ジャックは戦慄した。


 神のスキル──『強化』の効果が強制的に解除されてしまった。

 そんな、感覚。


 だが、あり得ない。

 神の力をも圧する力など。


 それでは、まるで──神すらも超える存在ではないか。


 ジャックはゆっくりと振り向く。


 そこには何もいない。


 ならば、心臓が爆裂しそうなほどの鼓動はなんだ?

 ならば、呼吸ができないほどのプレッシャーはなんだ?


(見えないが──確かに、何かがいる)


 知覚するだけで精神が破壊されてしまいそうなほどの、圧倒的な何かが──。


    ※


 王都グランアドニス──。


「な、なんだ、この感じは──?」


 ランクAの冒険者ダルトンがうめいた。


「異常なまでのプレッシャーですわ……!」


 少女戦士アイヴィが声を震わせる。


「精霊たちが怯えている──」


 ランクSの精霊使いアリィが唇をかんだ。


 他の冒険者たちもいちように青ざめた顔をしていた。


 恐怖ではなく。

 戦慄でもなく。

 絶望でもなく。


 誰もが、畏怖していた。


 まるで神以上の絶対者に出会ったかのように。


 ふいに──空が激しく揺れた。


 淡く輝く何かが、空の一角から降り立つ。


 巨人だ。


 成層圏にまで届くほどの、巨体。

 半透明の体は、無数の鬼火をまとっている。


「あれは──」


 ダルトンが、そしてその場にいるすべての冒険者が巨人を見上げた。

 それは、地上をゆっくりと見回す。


 おぉぉぉぉぉぉ…………………………ん。


 澄んだ歌のような声を奏で、巨人はゆっくりと歩き始めた。


    ※


 古竜の神殿。


「『あの者』が降臨したのか……」


 罪帝覇竜(グリード)がつぶやいた。


 全身の震えが止まらない。


 かつて神や魔と渡り合い、最強と謳われた古竜である自分が。


 今、はっきりと──。


 恐怖、していた。


「これは……世界の終わりのときか? あるいは再生の──?」

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