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絶対にダメージを受けないスキルをもらったので、冒険者として無双してみる  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第20章 終わりゆく世界

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8 「崩させない」

「君を倒せないのは分かった」


 ビクティムは腕組みをして、悠然と告げた。


 こいつ、さっきまでとは雰囲気が違う。

 体のサイズは人間と大差ないまでに縮んだっていうのに、迫力や威圧感がけた違いに上がっている……!?


「だが、仲間はどうかな? 護りきれるか、ハルト・リーヴァ?」

「同じことだ」


 俺のスキルはリリスたちも──『俺が護りたいと考えた対象』も同時に防御してくれる。


「ふむ。いくら君の能力が絶大でも、この世界全域を覆っているわけではあるまい?」


 ビクティムが淡々とたずねる。


「神の能力といえど、それを発動する器はしょせん人間……」

「何が言いたい……?」


 ごくりと喉を鳴らす。


 俺は油断なく周囲を見回した。

 奴が何を仕掛けても対応できるように。


 こいつ、まさか──。

 嫌な予感が、した。


「きゃあっ!?」


 次の瞬間、リリス、ルカ、サロメの声が唱和した。


 ビクティムの背から、鎖のように連なった岩が三本伸びている。

 それらがリリスたち三人を縛っていた。


「このまま君のスキルの効果範囲外まで連れていく。そして、彼女たちを殺す」

「お前……っ!」

「君自身はどうやっても倒せない。だが、仲間は別だ──」

「みんなを離せ!」


 俺は怒声を上げた。

 確かに『封絶の世界(エリュシオンゲート)』によって、俺自身は不可侵の存在となった。


 不意をつかれようと、自動的に防御してくれるスキル。

 あらゆる攻撃から、俺を守ってくれる力。

 そこに弱点は存在しない。


 でも、それは──仲間にまでは完全に及ばない。


 もしこのままビクティムがリリスたちを数百メティル、数千メティル先まで連れ去ったら。

 どこかで、俺のスキルの効果範囲から出てしまう。

 そうなれば、彼女たちを護ることはできない。


 どうする──!?


「仲間を失えば、君の精神は必ず乱れる。儂はその隙をつくだけだ」


 ビクティムが淡々と告げる。

 岩の鎖を揺らし、捕えたリリスたちの姿を見せつける。

 まるで、俺の心を追い詰めるように。


「冥天門の力で強化された儂の体は、長くは持たん。時間がないのだ……もはや手段は選んでいられない」


 ビクティムがつぶやく。


「たとえ、どんなに汚い手を使っても──」

「随分よくしゃべるね」


 気配は、突然湧いて出た。


「っ……!? があっ!?」


 次いで、ビクティムの体がわずかにかしぐ。

 膝の裏を誰かが斬りつけたのだ。


 あれは──?


「サロメ!」

「エルゼ式暗殺術隠密歩法(おんみつほほう)竜瞬伊吹(りゅうしゅんいぶき)』──ペラペラしゃべってるから隙だらけだったよ」


 ナイフを構えたサロメが、いつの間にかそこに立っていた。


「馬鹿な、どうやって我が鎖から脱出を……?」

「君が鎖を出したときに、大きめの岩を巻きこんで一緒に縛らせた。それで隙間を作ったから、脱出するのは簡単だったよ」

「岩を巻きこんだ……だと?」

「ボクの得意技は気配を消すことだもの。自分じゃなく、今回は岩の気配を消しておいた」


 にっこりと笑うサロメ。

 その側に、リリスとルカが並んだ。


 たぶん二人にも、サロメが同じ仕掛けを施していたんだろう。

 で、タイミングを見計らって脱出したわけか。


「護られてばかりじゃないよ、ボクたちは」


 サロメが俺にパチンとウインクをした。


「みんな、君の役に立ちたいし、一緒に戦いたい。だから──こんな奴に、ボクたちの絆は崩せない。崩させない」

「おのれぇっ……!」


 ふたたびビクティムの背から岩の鎖が伸びる。

 が、不意打ちでなければ対処のしようがある。

 リリスの魔法が、それらをやすやすと撃墜し、ルカの斬撃の威力がビクティムを大きく吹き飛ばした。


「ぐっ……!」


 数十メティルも吹き飛ばされたビクティムが、ゆっくりと立ち上がる。

 さすがに、硬い。


「儂では勝てぬのか……? いや、まだだ……!」


 吠えた魔将の姿がかすんで、消えた。

 また視認できないレベルの超速移動か。


 だけど、何を仕掛けようと、どんな攻撃を放とうと通用しない。


 正面からでも、不意をついても。

 正攻法だろうと、搦め手だろうと。


「おおおおおおおおおおおおっ!」


 拳や蹴りを放ちながら、ビクティムの体が徐々に崩れていく。

 体を覆う黒い輝きが剥がれ、ぼろぼろと砕け始める。


「なんだ……!?」


『冥天門の力で強化された儂の体は、長くは持たん。時間がないのだ……』


 さっきのビクティムの言葉を思い出した。


「もうやめろ、ビクティム。お前に勝ち目はない」


 あふれる黄金の輝きが、岩の戦士を吹っ飛ばす。


「勝ち目などどうでもいい。儂は攻める! 攻め続ける! そして魔のための礎となろう! たとえ儂が倒れても、儂が戦う姿勢は他の魔族や魔獣たちにきっと届く!」


 叫びながら、さらに加速するビクティム。


「後の者に託すために──たとえ敵わずとも、儂は止まるわけにはいかん!」


 俺の中で、徐々に嫌な予感が高まっていく。


 戦闘でなら勝てる。

 それは間違いない。


 だけど、その後に──その背後に、もっと大きな何かが隠れているような予感がするんだ。

 もっと悲劇的な何かが、進行しているような悪寒。


 それを裏付けるように、




「手こずっているようだな、ビクティムよ」

「わたしが『冥天門(コキュートスゲート)』で与えた力でも、不足ですか」




 二つの声が、響いた。


「っ……!」


 背筋が凍りつくような威圧感を覚えた。


 魔将であるビクティムと比べてさえ、圧倒的な──超絶的な気配。

 世界を押し潰すような、魔の気配。


 ふいに、上空が一面の闇に覆われた。

 空そのものが黒幻洞(サイレーガ)に変わってしまったかのように。


「おお……」


 ビクティムが小さくうめく。

 その声には驚きと畏怖がにじんでいるようだった。


 そして──。


 漆黒の空から巨大なシルエットが降りてくる。

 その側には黒髪をツインテールにしたオッドアイの少女が控えている。


「お前……は……!」


 本能的に悟った。


 こいつは、違う。

 今までの魔族とはまるで違う。


「我は魔王」


 黒い影が告げた。


数多(あまた)の魔を束ね、従える支配者なり」

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