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第20章 終わりゆく世界

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7 「理解したか?」

 俺の『封絶の世界(エリュシオンゲート)』はビクティムの攻撃をすべて封じこめていた。

 物理系は破壊力をゼロにし、魔法系は発動さえさせない。


 だから、後はリリスたちが攻撃し放題なんだけど──。


「効かない……!」


 彼女たちがうめく。


 もう何十回目だろうか。

 黒い輝きに包まれた岩石の体は、あらゆる攻撃を弾き返してしまう。


 リリスの魔法も、ルカの剣も、ビクティムの防御を突き破れない。

 堅い岩をさらに膨大な魔力でコーティングし、圧倒的な防御力を備えているのだ。


「互いに決定打を与えられない──か」


 つぶやく俺。


 奴は以前よりもはるかに頑丈になっている。

 どう攻略するべきか──。


「少し違うな」


 ビクティムがつぶやいた。


「儂はまだ切っていない手札がある。それを見せてやろう──」


 その巨体が激しく振動する。


「がああああああああああああああああっ!」


 咆哮とともに、岩の巨人の姿おが大きく変わった。


 竜を思わせる顔、翼、尾。

 長く伸び、鋭利な爪を備えた四肢。

 そして、全身から立ちのぼる漆黒のオーラ。


 竜戦士、ともいうべき異形だった。


「似てる……!」


 そのシルエットや禍々しい雰囲気は、どこかジャックさんや魔将ガイラスヴリムの『竜戦士形態(コードリンドヴルム)』を思わせた。


「儂は『冥天門(コキュートスゲート)』によってさらなる力を得た。人間に負ける道理などない」

「お前がどれだけ強くなろうと、俺たちが倒す」


 岩の竜を見据える俺。


 ビクティムはふたたび巨体を揺るがせ、攻撃を再開した。


 岩の爪が、牙が、尾を繰り出す。

 地水火風の魔族式魔法を矢継ぎ早に唱える。


 まともに炸裂すれば、タイラスシティなんて一瞬で消し飛ぶだろう。

 いや、もしかしたら一つの町にとどまらず国レベルが消滅するほどの威力かもしれない。


 だけど──それすらも、俺の『封絶の世界(エリュシオンゲート)』は完封する。


 破壊力をゼロにするスキル形態『虚空への封印(ヴォイドシール)』。

 奴の物理攻撃は、石を砕くことすらできない。

 魔法を封じるスキル形態『不可侵領域(バリアフェイズ)』。

 奴の魔法攻撃は、発動すらしない。


「魔将クラスが極限まで高めた力さえも、完封するというのか……君の防御力には、上限がない……のか!?」


 ビクティムがうめいた。

 愕然とした声とともに、全身を覆うオーラが消え失せる。


 戦意を失ったのか。

 あるいは──、


「理解したか? 何をやっても無駄だ、って」


 俺は静かに岩の巨竜を見据えた。


「なぜだ……」


 ビクティムがつぶやく。


「君の力は人間のレベルを超えている──いや、神の領域といっていい。借り物などではなく、神と同等の力……! 神と、同等の存在──」

「神と、同等の……」


 奴の言葉を繰り返す、俺。

 なんだか嫌な響きだと思った。


 奴の言葉に、不穏な予感を覚える──。


「それだけの力がありながら、人間ごときを護るために振るうのか? 君は、もっと大きなことを成し遂げられるはずだ」


 と、ビクティム。


「たとえば──魔族に生まれ変わり、我らの同胞になる、という道もな」

「俺が、魔族になる?」


 何を言ってるんだ、こいつは。

 仮にそんな方法があるのだとしても──。


「お断りだ」


 俺はビクティムをにらんだ。


「たくさんの人たちを苦しめて、殺して……町や国を壊して、滅ぼして……そんな連中の仲間になるわけないだろ!」

「我らとて生きることに必死なのだ」


 ビクティムが静かに告げる。

 その声には、どこか哀しみの色がにじんでいた。


「かつての神魔大戦により、我ら魔族は魔界に封じられた。日の光さえ差すことのない闇の牢獄──外界で出ることも叶わず、長い時を過ごしてきた」


 ため息交じりに述懐するビクティム。


「ようやく人の世界への道が開いたのが百年前。それでも多くの制限はあるが──ともあれ、我らは日の当たる世界に出る、その一歩を踏み出した。この好機は逃さぬ。魔界を閉ざす闇から解放する──そのために儂は戦う」

「だから、人間の世界をめちゃくちゃにするっていうのか」

「儂は儂の仲間のために戦う」


 ビクティムが全身を揺する。


 ヴ……ヴヴヴヴヴ……!


 その体が小刻みに振動を始めた。


「君は君の仲間のために戦えばいい」


 振動が、さらに激しくなる。

 一体何をする気だ──?


「ふうっ」


 大きく息をついたビクティムの姿が、消えた。


「っ……!?」


 いや、違う。


『縮んだ』んだ。

 全長数十メティルというサイズから、人間と変わらない二メティルほどのサイズにまで。


「これが儂の本体だ」


 静かに告げるビクティム。


「数千年の時間をかけて少しずつ積み上げ、巨大化してきた外殻を……このサイズにまで凝縮した。一度使えば二度と元には戻れん、儂の奥の手──」


 その姿が消え失せた。


「見えるか。今の儂の動きが?」


 声は、背後からだ。


 振り返れば、そこにはビクティムの姿がある。

 常人の身体能力しか持たない俺には、とても見切れない速度だった。


「いや、何も見えない。だけど──それがどうした?」


 ビクティムを見つめる俺。


「反応できない攻撃だろうと、俺のスキルは自動的にすべてを護ってくれる。どんな速度であろうと、俺の防御は崩せない」

「神の能力といえど、しょせんは人の精神が生み出す力。ならば君の精神を揺さぶってやろう」

「どんな手で来ようと、俺は揺らがない。揺らいでたまるか!」


 俺は岩の魔将をにらみつける。


 何を仕掛けてくるのか、不気味ではある。


 だけど、おそらく今の形態がビクティムの奥の手。

 最後の手段なんだろう。


 なら、これを凌げば倒せる。


 絶対に、倒してみせる──。

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