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絶対にダメージを受けないスキルをもらったので、冒険者として無双してみる  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第20章 終わりゆく世界

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5 「目論見通り」

 冒険者ギルド本部──。


「ルーディロウム王国各地に魔の者が出現。高ランク冒険者たちを中心に対応に当たっています。今のところ戦況は優勢です!」

「アドニスにも大量の魔を感知しました。現地の冒険者や軍が連携して迎撃。こちらはやや劣勢との報告が!」

「サーラ王国にも同じく魔の軍勢が押し寄せています。各地の都市が壊滅状況の模様! 増援要請が出ています!」


 魔の者たちの進行状況が次々と報告されていた。


 優勢、五分、劣勢。

 各地で状況は異なるが、いずれも冒険者たちは奮闘してくれているようだ。


(さすがは魔を倒すための戦士たち。いい働きぶりだ)


 ラフィール伯爵はほくそ笑んだ。


「分かったわ。ルーディロウムから何名かサーラに派遣しなさい。他の国も高ランクの冒険者をなるべく均等に配置して──」


 テオドラが魔導通話装置で報告者たちに指示を送っている。


 冒険者への指示は、彼女の専門分野だ。

 任せておけばいいだろう。


 彼女の脳内では、さながらチェスの盤面のように各地での戦況が目まぐるしく動き、最善の手を追及しているはずだ。


(さて、(さい)は投げられたわけだが──)


 それを横目で見ながら、ラフィールは思索に耽った。


(神が降臨し、魔王の軍団もこの世界に侵攻しつつある)


 深く息を吐き出す。


 歓喜と興奮。

 不安と緊張。


 胸の中にさまざまな思いが湧き上がり、交錯する。

 ここまではおおむね計画通りだ。


 そして、ここからが本当の始まりだった。

 彼の野心と野望が結実する、その始まり。


「ふう、魔の者への迎撃指示はとりあえず一段落かねぇ」


 魔導通話装置から離れ、テオドラがラフィールに苦笑した。


「神々の位置情報はどうですか?」

「それもさっき連絡が入ったよ」


 満足げにうなずくテオドラ。


「ギルドのランクS冒険者の中から優秀な僧侶を選抜して、入念に探知させたからね。場所はトルカ公国北西部。どうやら魔力障壁のようなものを張って、そこに避難しているようだねぇ」

「目論見通り、神の召喚に成功した……ということですな」


 前々から準備してきたとはいえ、奇妙なほど現実感がなかった。

 おとぎ話でしかないと思っていた存在が、自分たちと同じ世界にいるのだ。


「そして……遠からず消滅する」


 つぶやいただけで全身がぶるっと震えた。

 あまりにも畏れ多いことだと思った。


 だが同時に──それを成し遂げれば、歴史上で類を見ない偉業を達成することになる。


 神や魔を出し抜き、消し去り、人間こそが覇者となる世界を実現する──。


「ただ気になることもある。バネッサやエレクトラ、セフィリア──この計画を持ちこんできた三人と連絡が取れなくなっているのよ」

「……ほう」


 わずかに眉を寄せ、うなるラフィール。


 神の召喚や魔王を引き寄せたのは、彼女たちの力によるものだ。

 一体どういう魔法を使ったのか、詳細は分からないが──確かに、バネッサたちが告げた通りに、神と魔はこの地上に現れた。


(いや、おそらくは『魔法』というレベルの話ではあるまい)


 バネッサたちは何も語らなかったものの、おおよその見当はついている。


 人が操るには、あまりにも巨大すぎる力。

 世界の因果すらねじ曲げるような力。


 おそらくそれは、神や魔、竜といった超常の存在に起因する力だろう。


(世界に覇を唱えるためには、いずれ彼女たちが邪魔になる)


 機を見て、始末する必要があるかもしれない。


 とはいえ、それはまだ先のことだ。

 彼女たちの利用価値は計り知れない。


(まずは現状を確実に凌ぐこと。そして最善の一手を打ち続けること──)


 徐々に、確実に魔に浸食されつつある人の世界を思うと、心が痛まないわけではない。


 今この瞬間にも多くの犠牲者が出ているだろう。

 冒険者たちが奮戦し、その被害をどうにか食い止めている状況だ。


 すでに天使は消滅しており、魔に立ち向かえるのは人間のみ。

 しかも、魔の背後には──まだ魔王や高位魔族が控えている。


(とはいえ、神が出てくれば、それらはともに消滅するはずだ。残る中位や下位の魔族は冒険者たちの総力でどうにか退けられるだろう)


 ラフィールは内心でつぶやいた。


 世界には大きな被害が残るだろうが、その復興時にこそラフィールの政治力やテオドラの武力、そして手腕が発揮される。

 政と武の両面でもって、神と魔が消えた後の世界を牛耳る──。


 それが計画の完成形。


(……いや、少し違うな)


 最終的にはテオドラをも排除し、自分こそが世界の覇王となる。

 そして愛する祖国アドニスは世界の中心として君臨するだろう。

 永遠に。


「──な、なんだって!?」


 そのとき、テオドラの表情が変わった。


 どうやら魔導通信機の方に、新たな報告が入ったらしい。

 常に泰然とした彼女にしては珍しく、青ざめた顔をしていた。


「どうかしましたか?」


 表面上は平静を装いつつ、ラフィールは緊張感を高める。


 計算外のアクシデントでも起きたのか。

 魔の侵攻が想定以上に進み、冒険者の総力をもってしても持ちこたえられないほどなのか。


 だが彼女の答えは、そんな予想の斜め上を行くものだった。


「……今、新しい報告が入ったよ」


 テオドラは暗い顔で答える。


「バネッサとエレクトラの死体が発見された、と」

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