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10 「今、ここで」

『防御』と『強化』、『移送』、そして『支配』──。

 俺たち四人の紋様は互いに共鳴し、まばゆい光を放っていた。


 力が、高まっていくのが分かる。


 俺が展開する黄金のフィールドはその範囲をどんどんと伸ばしていく。

 地平線にまで届くほどに。


 現実世界に戻れば、あるいは俺のスキルは一つの国を──いや大陸中を覆うほどの規模になるのかもしれない。

 効果範囲が数十メティル程度だった今までとは、圧倒的に違う。


 だけど、力が増しているのは当然ジャックさんも同じはず。


「俺の力はどこまでも『強化』されていく……お前の防御を打ち砕くレベルまで高めることができれば……勝てる……!」


 赤光をまとった竜戦士がゆっくりと近づいてきた。


「させない。俺があなたを封じる」


 俺は無言でジャックさんを見据え、タイミングを計る。


「今、ここで」


 動きを、止めるんだ。


 事態を打開するためには、『移送』のスキルをジャックさんに当てることが必須。

 だけど、竜戦士の超速の前では、常人の身体能力しか持たないバネッサさんが正確にスキルを命中させるのは不可能だ。


 そして『移送』のスキルを使えるのは、あと一度。


 たったの、一度。


 そのチャンスを逃さないためには、俺がジャックさんの動きを止めるしかない。


「やってみろ……!」


 ジャックさんが攻撃動作に移った。


 青黒い甲冑をまとったその姿が、消える。

 視認できない超高速移動──。


 いや、違う!?


 次の瞬間、前後左右に無数の竜戦士が出現していた。


 分身して見えるほどの、超々高速移動。

 ルカの必殺奥義『氷皇輪舞(アイシクルロンド)』と同じ原理だろう。


 しかも分身の数は、おそらく数百単位。


 さっきの攻防による『強化』でここまでの運動能力を得ていたのか。


「今から俺がいっせいに攻撃する。お前の防壁がいかに硬くても、壊れるまで殴り続ける……!」


 破壊の権化となった竜戦士が、告げる。


 その動きを、攻撃を、俺に見切ることはできない。

 だけど、彼の意志や気配は強烈に伝わる。


 それを感じ取り、照準を合わせるのは難しくなかった。


「砕けろ、ハルト……!」


 竜戦士の敵意が、害意が、全方位から俺に向かってくる──。




 融合発動(ユナイト)──再設定開始(リセット)


 同時発動数を六に変更。

 発現形態を第三形態に統一。

 発動箇所を術者周辺に固定。

 分散数最大で展開。

 射角を全方位にて一斉反射。

 対象が迎撃行動に移る瞬間に自動照準、第四形態を発動。


 再設定完了(コンプリート)──。




 オートで発動する防御スキルに俺の意志を上乗せし、発現モードを再設定する。

 いわば自動発動(オート)任意発動(アクティブ)の融合形態──。


反響万華鏡カレイドスコープシフト──六重発動」


 本来なら一カ所にだけオート発動する『反響万華鏡カレイドスコープシフト』を、俺の意志で五回追加発動し、合計六つのスキルを重ね張りして備える。


 直後、ジャックさんの数万発の拳が叩きこまれた。


 それを六つの『反響万華鏡カレイドスコープシフト』が次々に反射し、互いのスキルの間でさらに反射し、反射し、反射し──。


 数億単位にまで分散し、反射させた打撃を全方位に撃ち返す。


「無駄だ……俺の反応はどこまでも強化される……!」


 ジャックさんはさっきと同じく、一瞬のうちに反応速度や拳速自体をさらに『強化』し、反射攻撃を迎撃する。


 その刹那、


「これ、は……っ……!?」


 驚愕のうめき声とともに、竜戦士の両拳が虹色の輝きで覆われた。

 オート発動した『虚空への封印(ヴォイドシール)』によって、ジャックさんの攻撃力がゼロになる。


 これこそが俺の真の狙い。


 任意発動(アクティブ)で反射攻撃を行い、俺の反応では捉えられないジャックさんの動きを自動発動(オート)で照準を合わせ、攻撃を無効化する。


 多重反射攻撃から迎撃封殺へとつなぐ連携防御──。


 破壊力も、それに伴う迎撃力をも失った竜戦士に、数億の反射攻撃が打ちこまれ、


「が……は……ぁっ……………………!」


 ジャックさんは数百の分身もろとも吹き飛ばされた。


 ──さっきまでの攻防で、彼の攻撃力は極限まで強化されていた。

 それを迎撃できない状態で叩きこんだ。


 さすがの竜戦士も、その極減のダメージから即座に回復して立ち上がるのは不可能だ。


 だけど、これも決定打にはならない。

 おそらく数秒後には、さらに『強化』した状態で立ち上がってくるだろう。


 だから、今この一瞬に──すべてを終わらせる。


「バネッサさん!」


「ええ、天翼転移(フィオルート)!」


 俺が合図を送ると、後方待機していたバネッサさんが『移送』のスキルを発動した。


 ジャックさんの全身に黒いモヤのようなものが覆いかぶさる。

 そのモヤが、竜戦士の全身の赤光を──彼に取りついた『支配』のスキルの残滓を、吸い取っていく。


「くっ……!? こ、これは──」


 ジャックさんの後方でレヴィンがうめいた。

 今まで悠然と事態を見守っていた美少年が、狼狽の表情を浮かべる。


「しょせんあなたは幻影ね。自ら『支配』のスキルを使うこともできず、ただジャックさんに取りつき、暴走させることしかできず──だけど、そろそろ目障りなの」


 バネッサさんがレヴィンを見据える。


「消えなさい。異空間の彼方に」


 彼女の紋様がまばゆく輝いた。


「く、ぉ……ぉおおおおおおおぉぉぉ……ぉぉぉぉ……っ……!?」


 レヴィンの周囲の空間が黒く染まり、歪む。

 ジャックさんから分離した赤光がそこに絡みつき──。


「ま、待て、僕を消すんじゃない……こんなことで……僕は……!」


「あなたはただの怨念。あたしの計画には邪魔なだけよ」


 表情を歪めるレヴィンにバネッサさんが冷然と告げる。


「消えなさい」


『移送』のスキルによって変異した空間はレヴィンを飲みこみ、やがてその場から完全に消し去った。


「ジャックさんに取りついていた『支配』の残留思念は、すべて空間の狭間に『移送』したわ。これで二度と出てくることはない……」


 ふうっと息をつくバネッサさん。


 ふらついた彼女が俺にしなだれかかってきた。

 慌てて抱き止める。


「大丈夫ですか……?」


「神のスキルを──『支配』の残滓を異空間に送りこむのは……はぁ、はぁ……さ、さすがに消耗が激しかった……みたいね……」


 バネッサさんは俺に抱きついたまま、やけに艶っぽい息をもらした。


「……こんなことなら、あのときセフィリアさんに任せず、あたしがやるべきだったわ。計画を万全に進めるために、消耗を恐れて『移送』のスキルを温存したのが裏目に出たかしら……」


 苦々しそうに付け足す。

 どうやら彼女とセフィリアさんの間柄も色々とありそうな気配だ。


 ともあれ、これでジャックさんの暴走はひとまず収まった。

 そのことにまず安堵する。


 ただ、すべてが片付いたわけじゃない。

 今こうしている間も、他のエリアでは魔の者たちの大侵攻が始まっているんだ。


 俺も、早く戻らなきゃ──。

今年の2月から本作の投稿を始め、はや10ヶ月……ここまで読んで下さった方すべてに感謝を。

来年も引き続きよろしくお願いいたします。

次話は1月3日投稿予定です。


では、良いお年を<(_ _)>

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