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絶対にダメージを受けないスキルをもらったので、冒険者として無双してみる  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第16章 揺らぐ未来

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4 「この地に集う」

 話したいことがある──。

 そう言われ、俺はジャックさんとともに本部の外へ出た。


 大通りから小さな路地に入り、ひと気のない小さな神殿までやって来る。


「俺は妙な女にここまで連れてこられた。おそらくあいつは──俺たちと同じ神のスキルを持っている」


 ジャックさんが話を切り出した。


「お前も気を付けろ。得体の知れない女だ」


「あら、得体の知れないとは人聞きが悪いわね。これでも、いちおうアドニス有数の貴族の妻なのだけれど」


 苦笑交じりの声は、突然だった。


 驚いて振り返ると、一人の女性がそこに立っていた。


 緩く波打つ長い金髪に、薔薇色のドレス。

 高貴な雰囲気を漂わせる美女だ。


 一体、いつの間に現れたのか。


「おそろいね。ジャックさん、それにハルトさんも」


「お前は──」


 ジャックさんの表情が険しくなった。


「どういうつもりだ。どうして俺をこの国まで連れてきた」


 ……ということは、彼女がジャックさんをルーディロウムまで連れてきたってことか。


「ここですべてが始まるの。だから呼んだのよ」


 美女は微笑みを浮かべたまま言った。

 貴族夫人らしく気品のある雰囲気の中に、妖しい色香が入り混じり、目の前にいるだけで体がゾクッとなる。


「生き残っているすべてのスキル保持者(ホルダー)がこの地に集う──そして幕を開ける。終わりの始まりの刻が」


 謳うように告げて、笑みを深くする彼女。


「自己紹介が遅れたわね。あたしはバネッサ・ミレット。はじめまして、ハルト・リーヴァさん」


「……はじめまして」


 優雅に礼をするバネッサさんに、俺も礼を返した。


「それともう一人、紹介したい人がいるの」


 その言葉とともに、俺の前方に黒い穴のようなものが出現した。


「これは──」


 ハッと息を飲む。


 見覚えがある。

 以前にエレクトラと戦った際、彼女はこの穴に入って、俺たちから逃げていったのだ。


 穴の中から、小柄なシルエットが現れる。

 三つ編みにした黒髪に、そばかすの浮いたあどけない顔立ち。


 洗練された雰囲気のバネッサさんとは対照的に、あか抜けない雰囲気の少女僧侶だ。


「こちらはセフィリア・リゼさん。あなたと同じ冒険者よ」


「どうもー」


 軽い口調とともに、セフィリアという少女が挨拶をした。


「こうして神の力を持つ者たちが一堂に会するなんて、喜ばしいわね」


「なぜ俺をこんな場所に連れてきた?」


 にこやかなバネッサさんに、ジャックさんがますます険しい表情をする。

 バチッ、バチッ、とその体からスパークが散った。


 ん、なんだ……?


「申し訳ないと思っているわ。説明している時間がなかったの」


 バネッサさんは気品のある微笑を崩さない。


「この地に危機が迫っている。高ランクの冒険者が集っているとはいえ、万全とはいえないわ。だからこそ、あたしたち神の力を持つ者が必要なの」


「つまり『戦力として連れてきた』ってことだねー」


 セフィリアがニコニコ笑顔で補足する。


「俺に、魔の者と戦えっていうのか──」


 ジャックさんがうめく。


「以前に王都を襲った魔将ディアルヴァを撃退したときには、あなたの功績が大きかったと聞いているわよ」


 と、バネッサさん。


「その後に現れた三人の魔将との戦いでも活躍したそうじゃない」


「なんで、それを──」


「あたしの得意技は空間制御。たとえ隔絶された異空間での戦いでも、あたしには手に取るように把握できる」


 驚く俺に、バネッサさんがこともなげに説明した。


「俺は……戦いは好きじゃない」


 ジャックさんが苦々しげにつぶやく。


「でも、大切なものを守るためなら、戦うことを躊躇しない」


 バネッサさんの朱を塗ったような唇が、にいっ、と笑みを深めた。


「違う?」


「それは……」


「命を奪うことも、ね。かつてレヴィン・エクトールと戦ったときのように」


「っ……!」


 ジャックさんの表情が歪む。

 瞳が揺れ、怒りとも悲しみともつかない複雑な光が浮かんだ。


「ハルトさんはレヴィンさんとは面識がなかったわね。至高神ガレーザから『支配』の力を授かったスキル保持者(ホルダー)よ」


 バネッサさんが説明した。


 ──話によれば、レヴィンという少年は自らのスキルを使い、アドニス王国そのものを支配しようとしていたらしい。


 その余波がジャックさんの周囲にまで及び……結果、二人は戦うことになった。

 激しい戦いの末に、レヴィンはジャックさんによって討たれたという。


 ジャックさんの顔には苦い表情が浮かんでいた。


 身を守るためとはいえ、相手の命を奪った罪悪感──。

 それは俺自身も経験がある。


 そう『殺戮(さつりく)』のスキルを持つグレゴリオと戦ったときの、あの嫌な感じだ。

 と、


「んー、ジャックくん、そのときの戦いで呪いみたいなものを受けてるねー」


 ふいにセフィリアがジャックさんをまじまじと見つめた。


「呪い……?」


「レヴィンくんの能力の残滓が見えるよ。少しずつだけどジャックくんの精神が侵食されてる。そういう違和感、ない?」


「……違和感か」


 うなるジャックさん。

 どうやら心当たりがありそうな様子だ。


「このままだとジャックくんに悪影響があるんじゃないかな? スキルに『支配』されて、いずれは暴走しちゃうかも」


 あっけらかんと笑うセフィリア。

 いや、笑いごとじゃないと思うぞ。


『強化』のスキルを持ち、圧倒的な戦闘能力を誇るジャックさんが暴走なんてしたら──。

 一体、どれほどの惨事になることか。


「へーきへーき、セフィリアには地と風の王神(アーダ・エル)ちゃんから授かった『修復』のスキルがあるからね。その力でジャックくんを治療してあげる」


「そんなことができるのか?」


 驚くジャックさんに、セフィリアがにっこりとうなずいた。


「まかせてー。地と風の王神(アーダ・エル)ちゃん、お願い~」


 かざした手のひらに輝く紋様が浮かび上がる。


 二つの顔と四本の腕を持つ、女神の紋様だ。

 その輝きに包まれた瞬間、ジャックさんの顔に苦悶の表情が浮かんだ。


「ぐ、あぁ……っ!?」


 苦鳴が、響く──。

週明けの11月7日(火)に新作投下予定です。

※11/6追記:11月8~9日スタートにずらそうか迷い中。どうしよかな……(´・ω・`)

投稿開始するころに割烹で報告します~!


タイトルは『筋トレチートでお手軽に世界最強 ~俺は無限に強くなる~(仮)』になります。

内容はタイトルそのまんまですねw

だいたい30話ちょいで完結or第一部完結になると思います(ほぼ執筆済みです)。


こちらが防御最強主人公なので、新作は攻撃最強主人公でいこう、みたいな割と安直な発想(´・ω・`)

よろしくお願いいたします~!


※『絶対にダメージを~』の次話更新は新作開始日と同じく11月7日(火)になります。

以降も2日休んで1話更新……というペースで章の終わりまで行く予定です。

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