表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

153/224

12 「永遠に」

 天界──。

 一つの星雲に匹敵するほど広大な、純白の空間。


 そこは神々の間だ。


 まばゆく輝く光の柱が一本、また一本と現れる。

 やがて七つの光柱が等間隔に並んだ。


 護りを司る女神──イルファリアはその柱の一つに宿り、他の六本の柱を見回す。


 こうやって天界の中心たる七神がすべて召集されるのは珍しいことだ。

 よほどの事態が起きている、という証でもあった。


「聖天使たちからの報告だ。空間震動の頻度が急激に増えている、と」


 光の柱の中から声が聞こえる。

 七柱の神々のリーダー格ともいえる至高神ガレーザの声である。


「百年ほど前から、人間界と魔界を繋ぐ通路──『黒幻洞(サイレーガ)』がふたたび開かれるようになり、魔の者が人の世界に出没するようになった。それは諸君も承知の通りだ。だがその頻度は月に数回程度。最近は──いくらなんでも多すぎる」


「自然現象的に開く通路以外にも、魔王の力で同様の通路を開くことは可能と聞いているぞ」


 神の一人が言った。


「限度がある。それに──頻繁に開けば、あの者に目を付けられよう」


「では、なぜ?」


 別の神がたずねる。


「神の力が介在しているようだ。ゼガリア。それにアーダ・エル。お前たちの」


「私たちの?」


「我が力が……?」


 ざわめく二柱の神々。


「我らは人に神の力を与えた。その力を持って、空間を操る者が出現した」


 ガレーザがうなった。


「魔の者か、それとも人間か。あるいは彼らが結託しているのか」


 神々の意図とは違う方向で、人間が力を振るおうとしている──。


(いえ、あるいはそれさえもガレーザの意図したものなのかしら)


 イルファリアは内心でつぶやく。

 それから他の六柱の神々──正確には神々が宿る光柱──を見渡し、


「その時が近づいているのかもしれませんね」


 微笑みを浮かべた。

 喜びとも、切なさともつかない思いを胸に。


「人が、我らの庇護下から離れるときが」


「ふん、人が神に頼らず己の力のみで歩んでいく……と? 未熟な人間たちに、そのような日々は訪れぬよ」


 ガレーザが鼻を鳴らした。


「永遠に、な」


「どうでしょうか? 永遠を生きる我らには分からないことかもしれません。刹那の時を生きる彼らが自らを成長させていく速度は──」


「人を買いかぶりすぎだ、イルファリア」


 護りの女神の言葉に、至高神が不快げな口調を返す。


 そのとき、周囲を激しい震動が襲った。


「空間震動か……我らの居城にまで到達するとは」


「人の世界と魔の世界への通路が開こうとしているわ」


 ガレーザの言葉に『移送』を司る天翼の女神(ゼガリア)が告げた。


「通常ではありえないほどの数と頻度で、ね」


「魔の力の気配はない……やはり、スキル保持者(ホルダー)の仕業のようだ」

 ガレーザがつぶやいた。


「人為的に『黒幻洞(サイレーガ)』を開く術を手に入れたか、人間め……」


「世界中に魔の者があふれ返る可能性がありますね」


「そうなれば、世界は破滅する」


「人間が死に絶え、信仰の力が消えれば、我らも弱体化を免れない」


 神々の声は苦い。

 人間たちに自らの力の一部を与えたのは、それなりの思惑があってのこと。


 だが、この使い方は想定外だった。


 人は神を畏れ、敬うものだという固定観念があっただけに──。


「人間が神々を巻きこみ、何かを起こそうとするとは。なんと罰当たりな」


「案ずることはない」


 ガレーザが他の神々をなだめる。


「すべては神の手のひらの上。人間たちには、せいぜい踊らせておけばよい」


(人を軽んじ過ぎではないかしら、ガレーザは)


 イルファリアは内心でつぶやいた。


(それに『もう一つの現象』には気づいているの?)


 地上に現れた魔の者たちは、以前よりも強大化しているようだ。


 イルファリアが自らの力を分け与えた少年──ハルト・リーヴァを通じて、彼女はそれを感じ取っていた。


 まず間違いなく、魔族の側にもなんらかの動きがあるのだろう。


 神々の策動と魔の策動。

 そして、人の策動。


 すべてが絡み合い、大いなる聖戦がついに訪れる──。

次回から第16章「揺らぐ未来」になります。

10月26日(木)から更新再開予定です。

再開後は章の終わりまで3日に1話(投稿→2日休み→投稿)のペースで更新していくと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の☆☆☆☆☆評価欄↑をポチっと押して

★★★★★にしていただけると作者への応援となります!


執筆の励みになりますので、ぜひよろしくお願いします!




▼こちらの新作もよろしくです!▼



▼新作です! こちらもよろしくです~!▼
「攻撃されたら俺の勝ち!」悪役転生特典でスキルポイント9999を【カウンター】に極振り→あらゆる攻撃を跳ね返すチートスキルに超進化したので、反射無双します。

冴えないおっさん、雑魚ジョブ【荷物持ち】からEXジョブ【上位存在】に覚醒して最強になる。神も魔王も俺には逆らえない。俺を追放した美少女勇者パーティも土下座して謝ってきた。




▼書籍版全3巻発売中です! 画像をクリックすると紹介ページに飛べます!▼

5z61fbre6pmc14799ub49gi9abtx_112e_1d1_1xp_n464.jpg 97vvkze3cpsah98pb0fociarjk3q_48b_go_np_cmbv hkcbaxyk25ln7ijwcxc7e95vli4e_1e1o_1d0_1xq_rlkw

漫画版全3巻発売中です! 画像クリックで公式ページに飛びます。
8jyvem3h3hraippl7arljgsoic6m_15xf_qm_bx_d8k6
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ