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第14章 邂逅と予兆

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6 「君が噂の」

「君が来るのを楽しみにしていたよ」


 ラフィール伯爵は親しげな笑みを浮かべた。


「応接間では待ちきれなくて、ここまで来てしまったんだ。ああ、ゴードン──お前はここでいい。ご苦労だった」


「はい、旦那様」


 老執事は恭しく頭を下げ、去っていく。


「ハルトくん、君の活躍は以前から聞いているよ」


 目を細めて嬉しそうに俺を見る伯爵。


「今日はよく来てくれた。歓迎するよ」


「お招きにあずかり光栄です、伯爵」


 俺は一礼した。


 どうも、こういう偉い人の前だと緊張するな。

 貴族なんて生まれて初めて会ったよ。


「そうかしこまらないでくれたまえ。今日はちょっとしたパーティだよ。他にも一流の冒険者を何人も呼んでいるんだ」


 と、ラフィール伯爵。


「格式ばったものではないから、楽にしてくれればいい。日ごろから世界の平和のために戦ってくれている君たちへの敬意と感謝をこめて、歓待させてほしい」


 パーティか……そういえば、近くから美味しそうな香りが漂ってくるな。


「さあ、こちらへ。高ランク冒険者たちも呼んでいるから紹介させてくれ」


 言って、伯爵は俺たちを庭園まで案内してくれた。

 よく手入れのされた庭園は、美しい花々が咲き乱れている。


「この間のクエストは参ったよ。簡単なダンジョン探索だって聞いていたのに、クラスSの魔獣が三体まとめて出てきて──」


「レムフィラ王族の護衛任務はどうだった? 確か、第二王女が絶世の美女だって評判だけど……」


「実は内々にレクシード帝国の騎士団長にスカウトされてるんだ。どうしようか迷ってるんだよな……」


 などと、十数人の冒険者たちが歓談していた。

 ちょっとした立食パーティになっているらしく、テーブルに美味しそうな料理が並んでいた。


「へえ、君が噂の──」


 すぐ近くにいた四人の冒険者たちが、振り向いた。


 全員が強烈な存在感や威圧感を放っている。

 もしかして、この人たちって──。


「いずれもランクSの冒険者だ」


 と、伯爵が紹介してくれた。


 巨漢の剣士──『火炎の剣(フレイムエッジ)』のバルーガさん。

 痩せたローブ姿の青年──『()(ふう)』のフェイルさん。

 革鎧を着た妙齢の女性──『深緑の巫女』アリィさん。

 神官衣を来た初老の男。──『聖なる清浄(ホーリーライト)』のレットさん。


「聞いているぞ。ランクEからあっという間にランクAまで上がった期待のルーキーがいる、ってな」


 バルーガさんがにやりと笑った。


「まあ、よろしく頼むぜ」


「防御魔法の使い手だそうだな。あの『金剛結界(こんごうけっかい)』のドクラティオを凌ぐという噂の。私は彼とパーティを組んでいたこともあるんだが、魔将戦で亡くなったと聞いて残念だよ」


 悲しげに言ったのはフェイルさんだ。


「君がハルト・リーヴァくん、か。うーん……見たところ、大きな魔力は感じないなぁ……あ、でも妙な気配は感じるね。精霊でもないし、なんだろう」


 怪訝そうに俺を観察しているのはアリィさん。


「精霊というより、もっと神々しい気配をわずかに感じるが……しかし、お前さんは僧侶ではないのだろう? ……ふむ興味深いの」


 同じく怪訝そうな顔をするレットさん。


 ランクSの冒険者四人が俺に注目しているっていうのも、なんだか不思議な気分だ。

 冒険者になって、まだ何カ月も経ってないっていうのに──。


「ところで……聞いたか、あの噂」


 と、バルーガさんがたずねた。


「噂、ですか?」


「近々、ルーディロウム王国の方で大規模なクエストがあるらしいぜ。俺たちランクSもそれなりの数が召集されるとか」


「私やバルーガくん、アリィ嬢やレット司祭も呼ばれている」


 フェイルさんが言った。


「ランクSだけじゃなくて有望なランクAにも声をかけるって言ってたよ。もしかしたら君たちも呼ばれるかもね」


 と、アリィさん。


「まあ、そのときはよろしく頼むぞ」


 レットさんが笑う。


 それから彼らの視線が俺からリリスとアリスに移った。


「私の不肖の娘たちだ。今度、ランクAまで上がってね」


 と、伯爵。


「ほう、昇格おめでとうございます」


「おめでとうございます、伯爵」


 バルーガさんやフェイルさんが言葉とは裏腹に面白くなさそうな顔をした。


 そういえば、リリスとアリスって冒険者ギルドではあまりよく思われてないんだっけ。

 親の七光りで冒険者をやっているとか、なんとか──。


 もちろん、実際は全然違う。

 二人とも人を守るために懸命に戦っているし、俺も彼女たちを見て、冒険者になりたいって思ったわけだし。


「へえ……君たちからは不思議な魔力を感じるね」


 リリスとアリスをまじまじと見つめるアリィさん。

 彼女だけは好意的な雰囲気だった。


「それにとっても美人だし。スタイルもいいし」


「ど、どうも……」


「えへへ、照れますぅ」


 はにかんだようなリリスとアリス。

 と、


「あらあら、随分と露骨なご機嫌取りね」


「ランクSに取り入るつもりかしら」


 嫌味な口調が背後から聞こえてきた。


 振り返ると、小柄な女性の二人組が立っている。

 長い金髪に尖った耳、そして彫刻のように整った美貌。


 エルフ──。

 人間よりもはるかに長命で、強い魔力を持つ亜人種だ。


 数百年前までは人間とともに多くの亜人種が生活していたそうだが、今ではドワーフと同じくめっきり見なくなった。

 実際、俺も本物のエルフを見たのは数えるほどしかない。


 一人は戦士風、もう一人は魔法使い風の格好をしていて、二人とも妙に露出度が高い。

 胸の谷間や太ももがあらわで、ドキッとなる。


 顔立ちがよく似ているところを見ると、姉妹かもしれない。


「父親の威光を利用してランクSの冒険者とお近づきになろうって魂胆でしょう」


「あわよくば一緒にクエストをこなしに実績を積む目論見ね……汚い、さすがラフィール姉妹汚い」


 エルフたちがリリスとアリスをジト目で見た。


 いや、当の伯爵が目の前にいるんだけど……。

 随分と大胆な物言いだ。


「打算まみれね」


「打算まみれだわ」


「冒険者なら実力で勝負したらどう?」


「そうよ、私たちみたいに」


「いえ、あたしたちは別に──」


 相手の剣幕にリリスは戸惑い気味だ。

 エルフたちはさらに詰め寄り、


「ランクSの人たちに気に入られるために、ばっちりメイクしてきたのにっ」


「ばっちりセクシー衣装で決めてきたのにっ」


 二人とも目が血走っていた。


 むしろ、この人たちの方が打算まみれなんじゃ……?

 内心でツッコむ俺。


「何か誤解があるみたいですけど」


 リリスがぴしゃりと言った。


「あたしたちには、他に大事な仲間がいますから。他の人たちと組むつもりはありません」


「ですぅ」


 二人そろって俺の方を見つめ、微笑む。


 大事な仲間──という言葉に、俺も微笑みを返した。


「ふん、どうだか」


「ちょうどいい機会だから、教えてあげるわ」


 エルフたちはそろってリリスとアリスをびしっと指差した。


「真のランクAの力を!」


「親の七光りに頼らない力を!」


 おいおい、なんだか妙な流れになってきたぞ……。

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