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4 「頼もしいな」

 俺とジャックさんは並んで巨人の魔将と対峙していた。


「十倍近い体格差があるというのに、儂の拳を弾き返すとはな」


 ビクティムがつぶやく。


「その力は獣騎士形態(コードビースト)か。ガイラスヴリムが全開の攻撃を放つときと同質、同系統の力──」


 冷静に、俺たちの戦力を見極めようというのか。

 立ちはだかったまま、攻撃を仕掛けてこない。


 だけど、それを悠長に待っていられない。

 壁の向こうでは、リリスやアリスたちがザレアの攻撃にさらされているんだ──。


「ジャックさん」


「ああ」


 俺の呼びかけに、青黒い獣騎士が飛び出した。


 打ち合わせは、さっき終えている。

 ジャックさんが攻撃、俺は防御と補助。


 時間をかけず、一気にビクティムを仕留める。

 仕留めてみせる──。


「突進からの渾身の一撃、といったところか。シンプルだが、それゆえに脅威となる攻撃。ならば──風烈帝爆(アシュ・グ・ヴ・メル)


 竜巻が発生し、ジャックさんの動きを止める。


 ──否。


「おおおおおおっ」


 咆哮とともに、獣騎士は少しずつ進んでいく。


 すさまじい気流の中で、脚力だけで強引に進んでいるらしい。

 信じられないほど強化された身体能力によって。


 ──形態変化(アルター)


 俺は胸元に虹色の光球を生み出した。

 俺の役目はジャックさんの補助。


 ここで使うべきスキルは──あれしかない。


「ほう、上位の風呪文を筋力だけで抗するか。ならば──闇爆崩斬ガ・ベル・ク・ディーレ


 ビクティムが次の呪文を放った。

 いや、放とうとした。


「むっ……!? 呪文が──」


 発動はしなかった。


「封じさせてもらった」


 告げる俺。


 奴が追撃の呪文を撃ってくることは予想できた。

 だから今、俺はスキルの形態を移行させたのだ。


 魔法の発動を無効化する形態──不可侵領域(バリアフェイズ)


 すでに発動している竜巻は消えないが、今ビクティムが撃とうとした呪文の方は無効化されている。

 魔将が戸惑った一瞬の間に、ジャックさんはさらに距離を詰めた。


「おおおおおっ」


 雄たけびとともに拳を叩きこむ獣騎士。


戦神(ヴィム・フォルス)のスキルを利した強大なパワー……しかし」


 静かに告げたビクティムの体が、弾けた。


 いや、全身を覆う岩石の一部を吹き飛ばしたのか。

 その反発力を利用して、ジャックさんの拳打を跳ね返す。


 いわば反発装甲(リアクティブアーマー)ってところか。


「ちいっ、だったら──」


 ジャックさんが俺を振り返った。

 戦いの場で、長々と打ち合わせている時間はない。


「俺が、全部(・・)弾きます」


 一瞬のアイコンタクトとその一言で意思の疎通は十分だった。

 ジャックさんがふたたび突進する。


「間合いは詰めさせんぞ」


 ビクティムは体を覆う岩石を矢のように飛ばし、あるいは攻撃魔法を放ち、間合いを詰めさせまいとした。


 だが、それらの攻撃は俺のスキルがことごとくブロックする。


 ジャックさんは一気に加速し、ふたたび巨人に肉薄すると、


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 先ほど以上にすさまじい雄たけびを上げて、拳を振り上げた。


 青黒い甲冑に覆われた体が、まばゆい赤光を発する。

 爪が伸び、四肢が伸び、背から翼が生える。

 狼を模した仮面も、より禍々しい形へと変わっていく。


「なんだ──!?」


 驚く俺。


 もはやそれは獣騎士という外見ではなかった。

 まるで、竜を思わせるような姿に──。


獣騎士形態(コードビースト)ではない……まさか、これは」


 ビクティムも驚いたような声を上げる。


竜戦士形態(コードリンドヴルム)……だと……!?」


 赤い燐光に包まれたジャックさんがビクティムのすねのあたりに拳を叩きこむ。

 爆音にも似た衝撃音が響き、


「無駄だ。我が体はあらゆるものを反発し、あらゆる打撃を防ぐ」


 ビクティムの言葉とともに、先ほどと同じく体表を覆う岩石が弾けた。


 間合いの接近を許したのは、自身の防御力に絶対の自信があるゆえか。


「ちいっ」


 強烈な衝撃に跳ね飛ばされるジャックさん。


 だけど、今度は──。


「──むうっ!?」


 ビクティムが戸惑いの声を発する。


 岩石は中空でふたたび跳ね返り──巨人の魔将を直撃したのだ。

 俺が張ったスキルによって、反射された岩石をもう一度反射したのだった。


 そう、俺がジャックさんに告げた『全部』弾くという言葉通りに。


「お、おのれ……!」


 ダメージは大して与えられなくても、不意打ち同然の反射攻撃にビクティムの体勢が崩れる。


「よくやった、ハルト。後は俺が──」


 そこを見逃さず、体勢を立て直したジャックさんが再度突進した。


 地面を蹴って、ビクティムの頭部まで跳び上がる。

 背中の翼が広がり、ジャンプというよりも空を滑空するように──。


「があっ!」


 咆哮とともに、赤く輝く拳が叩きこまれた。


 体勢が崩れているビクティムは、反射防御を発動させるのが遅れ、まともに食らい──。

 背後の壁まで吹き飛ばされる。


「力勝負で、儂が押される……矮小な者どもに……馬鹿な……」


 ビクティムが呆然と俺たちを見た。


「頼もしいな」


 ジャックさんが俺を見て、つぶやいた。

 にやりと笑ったようだった。


 うなずき返す俺。


 いける──強い手ごたえを感じて。


 俺とジャックさんの連携で、ビクティムを追いこめるはずだ。


 だけど、ただ勝つことだけが目的じゃない。

 早くこいつを倒すなり、退けるなりして、リリスたちに合流しないと。


 俺は険しい表情を崩さず、巨人の魔将を見据えた。

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