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絶対にダメージを受けないスキルをもらったので、冒険者として無双してみる  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第11章 古竜の神殿

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2 「あふれてくる」

「地震……?」


 そのとき、俺たちの前方の地面がいきなり爆裂した。

 突風が吹き荒れ、無数の土くれが飛んでくる。


 俺は即座に防御スキルを展開し、それらを弾く──。


「きゃあっ……」


 すぐ側で悲鳴が響いた。


「──って、うわわっ!?」


 突風でバランスを崩したらしいルカが、俺に向かって倒れてくる。


 とっさに抱き止めるが、勢いを殺しきれない。

 そのまま俺はルカに押し倒された。


「んっ……」


 俺の唇に柔らかな感触が訪れる。


 瑞々しい、唇の感触。

 吐息と清潔な香り。


 そして目の前には、驚いたように目を見開いたルカの顔があって──。


「っ……!?」


 そこでようやく、俺はルカとキスをしていることに気づいた。

 彼女が俺を押し倒した際、事故のように唇がぶつかってしまったのだ。


「あ……」


 唇を重ねたまま、目を見合わせる俺とルカ。

 呆然となり、キスをしたまま見つめあう。


「ご、ごめんっ……」


 俺は慌てて離れた。


 唇には、まだ熱い感触が残っていた。

 心臓が破れそうなくらいドキドキする。


「……い、いえ、私のせいだから。ごめんなさい……」


 ルカが震える指先で自分の唇をなぞった。


「……初めての、キス……ハルトの唇って、甘い味がする……」


 はふぅ、と息をもらすルカ。


 なんか、めちゃくちゃ照れる。


「残念だけど、ファーストキスの余韻に浸るのも、イチャイチャするのは後に取っておいたほうがいいみたいだよ」


 と、サロメが警告する。


「今の地震は、あいつの仕業みたいだからね」


「あいつって……?」


 森の向こうから巨大な影が起き上がるのが見えた。


 体長は優に二十メティルはあるだろうか。


 蜥蜴のような顔。

 鱗に覆われた巨躯。

 皮膜状の翼。


「あれは、まさか──」


 俺は息を飲んだ。

 以前、俺の町を襲った魔物によく似ている。


 野生の竜、だ。




 竜。


『最強』の代名詞ともいえるモンスターであり、これを倒した者には討竜士(ドラゴンスレイヤー)の称号が与えられる。


 竜は大きく分けて二種類いる。


 一つは魔界から現れる魔獣の一種。

 もう一つはこの世界の生物である、野生の竜。


 その強さは前者も後者もほぼ同じだった。

 つまり、どちらにしても最強クラスってことだ。


 これに対抗できるのは最強のランクS冒険者のみ、と言われていた。

 俺たちのパーティにはそのランクS冒険者──ルカがいるから、相手が竜といえども戦うことは可能だろう。


「だけど……」


 俺は唇を噛みしめた。


 さっきのキスの余韻を頭から振り払う。

 頭の中がすうっと冷えて、戦闘モードになっていく。


「ハルト……?」


 怪訝そうな顔でルカが俺を見た。

 彼女もさっきまでの動揺を抑えこみ、戦いの場に臨む剣士の表情に戻っていた。


 ……と思ったけど、頬がちょっぴり赤いままだ。


 そんな様を可愛らしいと思いつつも、俺は意識を戦いに向ける。


「誰かに頼るんじゃなく、俺はもっと──」


 強大なモンスターを前にして、心の中に湧き上がる衝動があった。


 強くなりたい、と。


 ただ防ぐだけじゃない。

 俺一人ですべてを片付けられるくらいに。


 俺一人でも勝てるくらいに──。


 そして、みんなを護る。


 またエレクトラみたいな奴が現れても。

 俺の力で全部護って、全部倒す。


 そんな存在に、なりたい。

 なってみせる。


 ──だから。


「あいつは、俺一人で抑える」


「ハルトくん、どうしたの……?」


「過信はよくないわ」


 戸惑ったようなサロメと、冷然と告げるルカ。


「大丈夫。うぬぼれてるわけじゃない。ただ感じるんだ」


 俺は二人に微笑み、竜に向き直った。




『今までの戦いや仲間との出会い、そして他のスキル保持者(ホルダー)との共鳴──それらを経て、ハルトにはさらなる成長の兆しが見えます。力の究極──『扉を開けし者』へと近づきつつあるのでしょう』




 女神さまの言葉を思い出す。


「力が──上がっている。いや、あふれてくるのを」


 俺の前方に翼を広げた天使のような紋様が浮かび上がった。


 紋様が発する虹色の光は、いつも以上にまぶしく鮮烈だ。


 俺は他の保持者(ホルダー)と出会うたびに、互いのスキルが共鳴し、その力が高まってきた。


 殺人鬼のグレゴリオと出会ったときも。

 強化能力を持つジャックさんと共闘したときも。

 ──そして、先日のエレクトラとの邂逅でも。


「二人は下がっていてくれ」


 言って、俺は前に出た。


 竜が、地響きを立ててこちらへ向かってくる。


 全身が震えるような強烈な威圧感。

 絶対的な存在と相対している絶望感。


 だけど、それらの感情はいずれも一瞬で消える。


 代わって湧き上がってきたのは、闘志と自信。

 そして冷静さ。


 不思議と負ける気がしない。

 封じて、倒す。


「──第四の形態、虚空への封印(ヴォイドシール)


 俺は虹色の光球を放った。


 竜の頭上で弾けた光球がドーム状になり、巨躯を包みこむ。

 攻撃エネルギーを無効化するスキル形態だ。


 以前よりも効果範囲も効果時間もおそらく伸びているはずだ。

 それが、感覚で分かる。


 他の保持者と会うたびに、俺の力は強くなっていくのだから──。


 竜がもがいた。


 光のドームに爪や尾を叩きつけるが、ビクともしない。

 虹の輝きを宿す檻は、最強のモンスターと呼ばれる竜をあっさりと封じていた。

 と──、


「なんだ……!?」


 突然、竜を包む光がその色合いを変化させた。


 あふれる黄金の輝き。


 普段の極彩色の光とは色合いが違う。

 眼前に浮かんでいる紋様も不安定に揺らぎ、明滅を繰り返す。


 俺のスキルが、何かしらの変化を起こしている──!?


 不審に思うものの、俺はすぐに意識を眼前の竜へと戻した。


 相手は最強のモンスターだ。

 少しでも気を抜けば、命取りになりかねない。


 俺だけじゃなく、ルカやサロメを危険な目に遭わせないためにも──最後まで確実に奴を封じる。


 そして倒す。


 そう、倒すんだ。

 ただ守るだけじゃなく──。


 警戒したのか、竜はいったん動きを止めた。


 ……なら、わざと隙を作ってみるか。


 俺は竜の巨躯を包む光の檻を解除する。


 とたんに、


 ぐおおおおおおおおんっ!


 怒りの咆哮を上げた竜がブレスを放った。


 よし、誘いに乗ってくれたな。

 俺は竜がブレスを撃つ一瞬前に、スキルを再展開していた。


「第三の形態、反響万華鏡カレイドスコープシフト


 光のドームがブレスを乱反射した。


 轟っ!


 狭い内部で無数に反響したエネルギーが、竜の体を燃やし尽くす。


 俺に、攻撃能力はない。

 だけど相手の攻撃を利用すれば、これくらいの真似はできる。


「竜を……一瞬で倒した」


 ルカが息を飲んだ。


「まさに討竜士(ドラゴンスレイヤー)ね」


「すごいね……ギルドに報告すれば、すぐにB級か、もしかしたらA級まで上がるんじゃない?」


 と、サロメ。


「あるいは──その上にも」


 ルカがつぶやいた。




 そして、俺たちはさらに進む。

 やがて森の中心部にたどり着くと、石造りの小さな神殿が見えた。


「これが──」


 息を、飲む。


 外観はなんの変哲もない古ぼけた神殿だ。


 だけど、分かる。

 全身が熱く脈動するのを感じる。


 俺の中にある神の力が、神殿の中にあるものに反応している。


「古竜の神殿──」

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