05 あとがき
砂漠というか、砂いっぱいの風景というと、私は植田正治さんの写真を思い出します。
それは「砂丘モード」と呼ばれ、モノクロのトーンとあいまって、観る者に得も言われぬ感慨というか感触をもたらします……少なくとも、私にとっては。
「砂丘モード」、非常に良い写真であり、植田正治さんはあの福山雅治さんに写真を教えた方でもあるので、機会があればご覧になるのをお薦めします。
一方で、砂漠と言うと、歴史ものを書いてきた身としては(拙作は現代ドラマですが)、やはり西域です。
で、西域といえば、私にとっては井上靖さんなのです。
「しろばんば」を教科書で読んで、その流れで「敦煌」を読んだ時の印象が強かったせいですね。
しかし、その井上靖さんの芥川賞受賞作「闘牛」は、ダークであり、重苦しく、それでいて切れ味があり、「しろばんば」の雰囲気を期待して読んだ私には衝撃でした。
さすがに名を挙げる方が書いた、畢生の作品というのはちがうな、と思います。こちらもお薦めです。
さて今回、かなり強引ですが、私の尊敬する写真家と小説家をクロスオーバーさせてしまいました。
そのため、おそらく現実との差異が大きいかと思います。
たとえば、拙作において植田正治さんと井上靖さんが煙草を吸う場面がありますが、実際吸う人かどうかは分かりません。もし吸わない人だったら済みません。これは昭和の雰囲気を出したかったので、敢えて喫煙のシーンを多用した結果です。
あと、そもそも井上靖さんは学生時代から懸賞小説で稼ぎまくっていて、モラトリアムを楽しむという、私からすると垂涎ものの作家生活を送っており、たぶん記者から作家への転身はそんなに悩んでいなかったのではと思います。
これらの差異については、拙作はフィクションということで、ご笑殺いただければ幸いです。
ちなみに、編集局長の小谷さん、小谷正一さんは実在の人物です。井上靖さんと同期というのも史実です。
「闘牛」を読むと、かなり癖のある人物だったのだなぁというのが分かります。というか、よくここまで私生活や性格に至るまで書かせてもらえたよなぁと思います。よほどの関係だったのでしょう。
それでは、裏話はこれぐらいにして、読んでくださった皆さんへの感謝と共に、筆をおかせていただきます。
ありがとうございました。
【参考資料】
「闘牛」井上靖
「敦煌」井上靖
「しろばんば」井上靖
「夏草冬濤」井上靖
「北の海」井上靖
「風濤」井上靖
「植田正治 私の写真作法」植田正治
「植田正治 小さい伝記」植田正治




