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プロローグ 第二の人生は、、


小田寅とらの人生は終わった。

車に撥ねられた気もするし、包丁で刺された気もする。


……まあ、正直どうでもいい。

どうせ碌でもない人生だった。


『あなたの夢はなんですか?』

「あ?」


 真っ白な空間に、突然声が響く。

 なんだこれ。

 死後の世界?

 それとも宗教勧誘か?


『あなたの夢は?』

「……異世界をじっくり見てまわりたいです」


 気づけば、即答していた。

 剣と魔法。

見たこともない種族。

空飛ぶ竜。

巨大な城塞都市。

 そういう“ファンタジーみたいな世界”に、一度でいいから行ってみたかった。


 仕事とか人間関係とか、そういう面倒なものを全部忘れて。

 ただ自由に、知らない世界を旅してみたかった。


「あと、デカい家に住んで、毎日ゲームして、飯食って、眠くなったら寝る生活がしたいです」


『他には?』

「旅行とかしたいです」


『他には?』

「可愛い女の子に世話されたいです」

『欲望に忠実ですね』

「うるせぇ」


 その瞬間――

 視界が光に包まれた。

 気づけば、豪華すぎる玉座の間。


 赤い絨毯。

 巨大な柱。

 いかにも“ラスボスの城”みたいな空間だ。

 そして、目の前に半透明の文字が浮かび上がる。


ーーー

あなたの願いを受理しました。

二度目の人生では、

自由にダンジョンを創造してください!

【召喚】

【ダンジョン編集】

召喚回数:1

ーーー


「…………」

 意味は分からない。

 だが、一つだけ理解できる。

「ガチャだ!!!!」


 俺は迷わず【召喚】を押した。

 瞬間、目の前がまばゆい光に包まれる。


 そして――

 ポヨンッ!

 軽い音とともに現れたのは、スライムだった。

 ……スライムなのだが。


 俺の知っている“可愛いマスコット系スライム”ではない。


 白い髭。

片眼鏡。

やたら立派な教授帽。

 どう見ても知的なおっさんだった。

 しかも、ぷるぷるしている。


「俺、可愛い女の子にお世話されたいって言いましたやん!?」

 思わず叫ぶ。


 するとスライムは、ぷるんと震えながら口を開いた。

「何を言うておる、この馬鹿者が!」


「しゃべった!?」

 しかもジジイ声だ。


 めちゃくちゃマイルドな喋り方しやがる。

 一瞬、教育番組でも始まるのかと思った。


「まったく、これだから最近の若者は――」


「スライムが説教してくる世界とか聞いてないんだけど!?」

 世界の片隅でひっそりと。

 小田寅の第二の人生は、こうして幕を開けた。


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