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第70話「なつのはじまり」
蝉がたくさん鳴くようになった。
朝から暑くて、チビは金魚の世話をしてすぐ縁側にへたり込んだ。
「あつい」
「夏だからね」とコン。
「もっとあつくなるの?」
「なるよ」
「もっと?」
「もっと」
チビはぐったりした。ポンはすでにぐったりしていた。
かあさんが冷たい麦茶を持ってきた。コップのそとがすぐ濡れた。チビはごくごく飲んだ。
「かき氷たべたい」
「今日買いに行こうか」とコンが言った。
ポンがむくりと起き上がった。
「行く」
「さっきあつくてうごけないって言ってたじゃない」とチビ。
「かき氷なら行ける」
三匹で坂道を下りた。じりじりと暑かった。蝉の声がわんわん響いていた。
かき氷屋さんで、チビはいちご、ポンはメロン、コンはレモンにした。三匹ならんで食べた。あまくて、つめたくて、頭がきんとした。
チビはかくしの石をそっとにぎった。つめたいかき氷と、石のあたたかさが、てのひらにいっしょにあった。




