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第11話「コンの読書」
コンには秘密の場所がある。
もみじ坂をのぼって、大きな松の木の根元。根っこがうねって、ちょうどいい座り場所ができている。そこに座ると、木の葉越しに空が見えて、風がよく通る。
コンはそこで本を読むのが好きだった。
今日も一人でそこへ行って、本を開いた。今読んでいるのは、遠い山の神様の話だ。ちょっとむずかしいところもあるけれど、ゆっくり読むと面白い。
どれくらい経ったころか、がさがさと音がして、チビが顔を出した。
「コンいたー!」
「……なんで来たの」
「かあさんが教えてくれた」
コンはため息をついた。秘密にしておいてほしかったのに。
チビはコンのとなりにぺたんと座った。本をのぞき込んで、「むずかしそう」と言った。
「字が多い」
「そうだね」
「おもしろい?」
「おもしろいよ」
チビはしばらくおとなしく座っていた。木漏れ日が揺れて、風が吹いて、どこかで鳥が鳴いた。
気づいたらチビは、コンの肩に頭をもたせかけて、眠っていた。
コンは本を閉じて、空を見上げた。まあ、いいか、と思った。




