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21.ミッション:上空のボスを撃ち落とせ

 走りながら打ち合わせを終えた僕たちは2手に分かれる事にした。

 僕は北門、リアミンさんは東門から街の外を目指す。

 走りながら掲示板にメンバー募集の書き込みをしてっと。


【募集:イベント上空に出現したボスの撃墜部隊(要遠距離攻撃)】


 今回は具体的な報酬は無し。

 強いて言えば普段なかなかできない空から戦場を眺めるって体験が出来る事と、今上空に浮かんでるあのボスに有利な位置から攻撃が出来る事が報酬と言えるだろう。

 問題はイベントに参加してる人達が掲示板なんて見てないかもしれないってことで。

 全然集まらないか、集まっても日和見してた余りやる気のない人達ばかりになるかもしれない。

 その場合は僕一人でも何とか頑張るけど。

 門から飛び出し、集合場所にと指定した場所に行ってみれば、そこには沢山の人が居た。


「おっ来たぞ!」

「待ってたぜベルン様!!」

「よっしゃ道開けろ道!」


 まるでモーゼのように人垣が割れて僕に道を作った。

 僕はそこを走りながら目印の丘の上の1本松まで行ってから振り返る。

 1000、いや2000人位集まってるんだけど、これ全部僕の呼びかけに応えてくれた人で良いのかな?

 中には見覚えのある大手クランのリーダーの顔もあるし、予想外に凄い顔ぶれだ。


「皆さん、掲示板を見て集まってくれた、で合ってますよね?」

「「おう!」」


 僕の呼びかけに合わせて2000人の人が同時に首を縦に振るとすごい光景だ。

 一体何処のライブ会場だろうか。

 でもそうするとアーティストが僕になるのか。うわぁ。


「えっと、今回はあの上空で我が物顔で飛んでるボスを撃ち落としに行く訳ですが、ゲームの制約的に倒せない可能性もあれば、倒せても何も手に入らない可能性もあります。

 イベントポイント稼ぐだけなら、これに参加せずに普通にモンスターを倒してた方が良いでしょう。

 それらを承知で問題ないって人だけ参加をお願いします」


 ……この場を去ろうとする人はなし、か。

 みんな物好きだなぁ。

 あ、そうだ、もう一つ注意事項があるから言っておかないと。


「これからボスの所に向かうにあたって、僕のスキルで上空へと皆さんを誘います。

 言い換えると、間違って僕が死ぬとスキルの効果も切れて全員空に投げ出されます。

 その場合落下速度を緩める何らかのスキルをご自身で使わない限り、死に戻ることになると思いますがご了承ください。

 ちなみに今の僕の最大HPは23です」

「「…………は?」」

「冗談みたいな話ですが本当です」


 流石にこれには集まった人たちも驚いたようだ。

 HP23なんてレベル1のエルフだってもっとあるかもしれないって数値だ。

 当然ここらのモンスターの攻撃をもろに受ければ即死間違いない。


「一応装備は整えてきたし敵の攻撃は全て避ける気でいますが、人間絶対なんてことはないし、特にフレンドリーファイヤーは避けにくいので止めてください。

 また、皆さんがモンスターに襲われても身を挺して護るって事が出来ませんので、自分の身は自分で護ってください。

 それと道中、僕は移動の為にスキルを使いますので、襲い来るモンスターの迎撃はお願いします」


(敵の攻撃全弾回避とかサラッと言ってるけど、誘導機能付きの魔法とかも避ける気か?)

(アローレインみたいな広範囲攻撃とかしてくる敵もいるよな)

(そもそもHP23で平気な顔していられるってベルン様以外無理だろ)

(先日死に戻ったって噂があったけど、そりゃ死ぬわな)


 だいぶザワザワしてしまったけど、やっぱり無責任すぎただろうか。

 普通こういうのは募集掛けた人が責任もって参加者を保護するものだし。

 それが蓋を開けてみれば僕のミスひとつで全員地獄行きなんだから文句のひとつやふたつ出るよね。


「もちろん参加は強制ではないので、嫌な人は……」

「ベルン様~。良いから早く作戦始めましょう~」

「そうだそうだ!

 俺達は何が起きても覚悟の上で来てるんだぜ」

「露払いくらいなんぼでもするからさ」

「ベルン様と一緒なら地獄までだって付いて行きますよ!」

「ビシッと言ってくれや!!」


 なおも保険の言葉を並べようとしたところで、声援が飛んできた。いや野次と言った方が正しい?


「分かりました。

 じゃあ皆さん。僕と一緒にボスを叩きのめしに行きましょう!」

「「おおおーーーっ」」


 僕の掛け声に合わせて腕を突きあげて叫ぶ皆。

 じゃあ早速行きますか。

 問題のボスは、あそこか。もうだいぶ街の近くまで来てるな。


「まずは僕の前の空間を空けてください。……そうです。

 では今からここに足場を作るので見ていてください。

 『風壁』」

「「……」」


 みんながじっと見守る中、僕のスキルが発動する。

 風で出来たその壁は無色な為、みんなの目には見えない。

 って、もしかしてこれ、1歩目から頓挫した?

 いや。大丈夫だな。


「皆さん、ここに足場が出来たのが分かりますか?」


 そう言いながら僕がそこに飛び乗って見せる。


「足場そのものは透明なので見えないと思いますが、幸い今日の天気は雨です。

 雨が見えない足場にぶつかって表面を流れていますので、それを頼りに皆さんも上がってきてください」

「「お、おぉ」」


 前に居る人から順番に、恐る恐る足場の上に登ってきてくれた。


「おぉ! 空中に立ってる」

「浮いてる訳じゃないんだな」

「これは、風魔法?」

「思ったよりしっかりしてるな」

「おいそっち。あんまり横に行きすぎると落ちるぞ」


 本当は普通の壁を足場に出来れば良かったんだけど、それだと自然落下するのを食い止めるために無駄にMPを消費するため、この大人数を乗せられるだけの足場を維持できない。

 皆には悪いけどこの空気の壁で何とか頑張ってもらおう。

 そうしてひとまず地上3メートルのところまで登ったところで全員が来るのを待ってから、本番へと進むことにした。


「じゃあ皆さん。ここからは仰角30度の上り坂で行きますから転ばない様に付いて来てください」


 ここからボスまで30度で真っすぐ進んでも高さが足りないので、まずは螺旋状に道を作って高度を確保していく。

 モンスターと戦うにしても坂の途中で戦うのは大変だしその方が良いだろう。

 そうして僕らは地上1500メートルくらいまで登って来た。

 遠くの山の山頂が真横に見えるしもっとかな?

 問題のボスはそれでも僕らよりも若干高い位置を飛んでいる。


「そういえば皆さん、高い所は大丈夫ですよね?」

「いや普通にビルの屋上とか山の上とかは大丈夫だけどさ」

「ああ」

「「足元が透けて下が見えるの、超怖いんだけど!!」」


 確かに。しっかりした足場と手すりがあるのと、今のこの何も見えない状態だと怖さの質が違うか。

 僕は転生前からよくスキルで空を移動してたからある程度慣れてるけど、そうじゃないのに平気って人は逆に危ないかもしれない。

 でもその人達を気遣ってる時間も無いか。

 予想よりも早くリアミンさんからチャットが飛んできた。


『ベルンさん。こちらは作戦ポイントに到着しました』

『了解。こっちはもう少し到着まで掛かりそう』

『分かりました。準備を進めてますがモンスターの攻撃が激しいので急いでください』


 ボスの真下付近は中ボス級のモンスターがゴロゴロ居るらしいし、ボスからの攻撃も降って来てかなり危険だ。

 あの湿地で一人で生き抜く事が出来たリアミンさんなら粘ってくれると信じるけど、負担は出来るだけ減らしたい。


「皆さん。地上班は既に配置について僕らの到着を待っています。

 こちらの到着が遅れると、地上班が壊滅して作戦が失敗になるので急ぎます。

 しっかりついて来てください」

「「はい!!」」


 力強い返事を聞きながら僕はボス目掛けて駆け出す。

 しかしそんな僕らの行動を予想していたかのように鳥型のモンスターが多数僕らの行く手を阻んだ。

 そこへ僕の後ろから魔法の矢が次々と突き刺さって行く。


「邪魔よ」

「どけどけぃ!」


 一緒に来ていた皆だ。

 ボス戦を前にしてMPの温存とか全然考えて無いスキルの大盤振る舞いで前方の魔物を撃墜していく。

 実に心強いけど大丈夫だろうか。

 なんて、気にしてる余裕も無いか。

 モンスターが僕目掛けて真上から急降下で襲い掛かって来た。


「ベルン様!『ファイアランス』!!」

「ギョエエエッ」


 飛んできた炎の槍にぶつかったモンスターは、軌道がずれて僕には当たらず地上に落ちて行った。

 しかし今の声、何処かで聞いたような……。

 ちらりと後ろを見れば見覚えのある人が僕の後を追って走っていた。


「あれ、ミキティさん!?」

「はい、そうです! ってどうしてベルン様が私の名前を知ってるんですか!?」

(あれ?)


 そこに居たのはクラスメイトの工藤さんだった。

 って、これもしかして僕の事気付いてない?

 まぁ初日に1度会っただけだし、今は暗くて顔も判別しにくいから仕方ないのかもだけど。


「それより援護射撃ありがとう」

「お気になさらず!

 ベルン様に襲い掛かるゴミクズは全て排除しますから」

「あ、うん。ありがとう」


 若干ダークな発言に冷や汗が出るけど、今は頼もしいから良しとしよう。

 あとで実はかくりでしたってバレたらぶち殺されそうだな。

 ともかく、僕たちは無事にボスの手前100メートルくらいの場所まで辿り着く事に成功した。


『リアミンさん。こっちも目標地点に到着したよ。

 そっちの準備はどう?』

『いつでも行けます!』


 リアミンさんに連絡を取れば力強い返事が返って来た。

 同時に地上で小さな爆発が2発。

 その場所に目を凝らせば◎印の光が灯っていた。

 どうやらあそこにリアミンさんが居るらしい。


「みんな。今から特大の魔法を放ちたい。

 30秒だけ僕を護ってほしいんだけど頼めますか?」

「任せて!」

「30秒と言わず1分でも10分でも護ってみせるさ」

「ドカンとデカいの期待してるぜ!」


 僕の言葉に応える力強い返事に思わず口角が上がる。

 ご期待に応えられる程、派手な見た目じゃないんだけど効果は折り紙付きだから許して欲しい。


「すぅ~~~~」


 僕は目いっぱい息を吸い込みつつ注ぎ込めるだけMPを使用し1つの魔法を放った。


「『ウォール』!!」

「「…………??」」


 僕がスキル名を叫んでも、周囲に何も変化は起きなかった。

 多分みんなのうち何人かは不発かなって考えだしたその時。


ズゴゴゴゴッ

「「!?!?」」


 それは分厚い雨雲を突き破って姿を現した。

 巨大なボスと比べても何ら遜色のない大きさの立方体の岩。

 それがボスの真上に落ちて来たのだ。

 しかし流石と言うべきかボスはその数百トンか数千トンか分からない重量を受け止めてみせた。


「GGGGGGGッ」


 ボスから悲鳴なのか何かが軋むような音が響き渡る。


「しぶといな。ならおかわりだ。『ウォール』」


 MPポーションを飲みながら更に2段目3段目と積んでやれば、遂には耐えきれなくなったボスが地上へと墜落していった。

 それを見ていたひとりが慌てて僕に声を掛けて来た。


「べ、ベルン様。

 このまま落としたら地上が大惨事なんじゃないですか!?」

「大丈夫。ちゃんと地上に落ちる寸前で僕の魔法は消すから」

「いやボス本体が地上にぶつかるだけでも凄いことになりません??」

「まあ大丈夫でしょう。

 それよりちゃんと見てないと見逃すよ」

「へ?」


 僕はタイミングを見計らってボスの上に乗せていた壁を消し去った。

 しかしボスはそれまでの落下エネルギーを打ち消すことが出来ないので微妙に減速しつつも地面に激突するのだった。



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