表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/26

12.ミキティ日記

お読みいただきありがとうございます。

今回は初回に出てきたあの人の視点です。


 6月1日。

 遂に。遂に遂に。待ちに待ったこの日がやってきました!

 そう。エバーテイルオンライン2期生オープン日!!

 もう今日は学校なんて休んで朝からログインしたかったのですが、そんなことをすればママからゲーム禁止令が発動されてしまうので泣く泣く学校に行きました。

 もっとも、オープンは12時からだったんですけど。

 今日は学校内でもエバテの話題で持ちきりです。

 私の友達の中では、2期生の抽選に当たったのは私だけだったので羨ましがられましたが、何と言われても譲ったりしませんからね。


「はぁ~これで念願のベルン様と同じ空気が吸えます」

「美紀はベルン様ラブね」


 私が初めてベルン様を知ったのは2カ月前。

 その日、エバテのイベント予告(・・)PV第1段として公開された映像には、最初は津波のように押し寄せるモンスターの大軍に飲み込まれる農村の様子が映し出されました。

 3メートルを超える熊のモンスターによって枯れ枝のようにいともたやすく破壊されていく家。

 そして狼のモンスターが逃げる母子を食い殺そうとしたその時。何処からともなく飛んできた火弾によってモンスターは吹き飛ばされ母子は助かりました。

 土煙が晴れた後には1人の青年が立っていました。そう、ベルン様です!

 最初見た時は誰もがそう言う演出だったんだろうと思っていました。

 しかしのちの公式の発表で、実はベルン様が登場したのは完全にイレギュラーだったことが判明しました。


『あの、あなたは』

『ただの通りすがりです。それよりしばらくそこを動かないで』


 母親の質問にそっけなく答えたベルン様はすっと手を前にかざし、一瞬で幾つもの魔法を発動させました。

 そこからはベルン様の独断場です。

 ベルン様の魔法で特撮のような爆発が絶え間なく発生させられ、数百体は倒したかなと思われる頃にはモンスター達はベルン様と村を迂回するように走り去っていました。

 もちろんベルン様も母子も無事です。


『悪いけど回復魔法は使えないんです。

 代わりにこれで生き残った村の人達を助けてあげて』


 そう言って大量のHPポーションをその場に出したベルン様は、現れた時と同様に風のように立ち去って行きました。

 もうその男前な行動に私の目は釘付けでした。

 それからと言うもの私は各種PV動画は隈なくチェックし、掲示板などでもベルン様の情報を探しました。

 あ、ベルン様のお名前を知ったのも掲示板からです。

 でも掲示板って、結局は文章のみですからね。

 ベルン様があんなことやこんなことをしたんだって話は幾つも出てきますが、私に出来るのはPV動画を元に想像を膨らませる事だけ。

 生でベルン様を見れる1期生が羨ましくてたまりませんでした。


 だけど、それも今日までです!

 学校が終わって家に帰れば私も遂にあの世界に行けるのです!

 あ、もちろんログインしたからと言って簡単にベルン様に会えるなんて思っていませんよ?

 ベルン様は攻略トッププレイヤーすら置き去りにして先へと行ってしまわれているのですから、始まりの町付近に来るはずもありません。

 それでも少しでも早く攻略を進めて、ベルン様のお姿を遠くからでも見れるところまで行きたいものです。


 そんな私の願いを神様が聞き届けてくださったのか、クラスメイトで1期生でプレイしてる男子が壁役をやってくれることになりました。

 その男子とは入学以来1度も話したことはありません。

 私の彼への印象は、みんながやりたがらない事でも平気な顔でやる図太い神経の人、ですね。

 以前体調を崩してた子が教室で吐いてしまった事があるんですけど、その時、周りの皆は慌てて距離を取るのに対し、彼だけは嘔吐物に汚れるのも気にせずその人を介抱して、保険委員にその人を保健室に連れて行くように指示してから一人黙々と床とかを掃除してました。

 お陰で名前くらいは憶えてました。


 その彼、隔離くんはものすごくたどたどしく私に声掛けてくれて壁役やるよって言ってくれたんです。

 ただ、何か用事があるらしく合流は20時からという事になりました。

 学校から帰って速攻キャラメイクしたら16時には始められるので待ち合わせまで4時間もあります。

 4時間もただ待つのも退屈なので、同じタイミングで冒険者登録を済ませた犬獣人のガットさんとパーティーを組んで狩りに出かける事になりました。

 このゲーム、獣人系は大体はスピードとパワー重視の前衛戦士です。

 ガットさんも例に漏れずスピードを兼ね備えた大剣使いとのこと。

 エルフで魔導士の私とは相性良さそうです。

 予想通り即席でもそれなりの連携が取れた私達は3時間でレベル10になりました。

 なかなか良いペースじゃないでしょうか。

 そしてそろそろいい時間かなと思って私は1期生の友達と待ち合わせしてるからとガットさんと別れようと思ったのですが、面白そうだからとガットさんも一緒に冒険者ギルドで待つことになりました。


 そこまでは、まぁ初めてのエバテを満喫出来ていたんです。

 食事休憩を挟みつつ待ちながらガットさんと1期生の人が居たら俺達一気にレベルアップして先に進めるかもな、なんて話してました。

 私もきっとすごい人が来るから期待してて、なんてちょっと自慢してみたりして。


 でも私達の元にやってきたのはどこからどう見てもただのエルフ。

 それも私達は既に卒業した初期装備を身に纏った、どう見ても壁なんて出来そうもない弱そうな人でした。

 しかもですよ。

 名前を聞けばあろうことか、あのベルン様と同じ名前なのです!

 それを知った瞬間、私の怒りはマックスになりました。


「もう一回キャラ造り直して『クソ虫』とかに改名してきなさいよ」


 そう言ったら彼は狼狽えて反論の一つも返しませんでした。

 全くベルン様と同じ名前を名乗るならせめてもうちょっと堂々としなさいっての。

 その日は結局怒りに任せてモンスターを倒しまくってレベル12まで行ったところでログアウトしました。


 翌日もログインした私は早速レベル上げに励みました。

 エバテは第2の街が王都であり、ある意味そこからゲーム本編みたいなところがあるので、まずは最速でそこに辿り着くのが目標です。

 と、頑張っていたせいで折角の一大イベントを見逃しました。


【急募:始まりの町の神殿修復要員。先着30名】


 い、依頼人はベルン様!?

 いや待ってください。昨日の例もあるし同名の別人という可能性もあります。

 始まりの町に本物のベルン様が居ること自体、普通に考えたらありえないですし。

 でも掲示板の反応を見る限り、本物だったようです。

 あーもう、私のバカバカバカ。

 何でそんな肝心な時にレベル上げなんてしてたのよ。

 慌てて戻った時には、既にピカピカになった神殿だけがあってベルン様の姿はどこにもありませんでした。

 仕方なくレベル上げに戻ろうとした私の視界の先には、昨日の隔離くん改め偽ベルンが居ました。

 初期装備のままって事はまだ全然レベルが上がってなさそうです。

 このゲーム、ある程度はプレイヤースキルも必要ですけど、彼は運動神経悪そうですからね。

 壁役やるどころか、彼こそ誰かに壁をやってもらわないと真面に狩りも出来ないのでしょう。

 まぁ嘘ついて壁をやるなんて言った彼の自業自得です。

 ですがまぁ、クラスメイトのよしみでちょっとくらい手伝ってあげても良いかな。

 私も同じエルフだし、多少は戦い方のレクチャーも出来たりするでしょう。

 ベルン様と同じ名前のエルフが弱いっていうのも腹立たしいですし。

 そう思って声を掛けようと思ったのですが、通りの角を曲がったところで見失いました。


(この先は1本道なんだけど……まぁいっか)


 街の中では何かの施設に居ない限りは自由にログアウト出来るので、きっと今のタイミングでログアウトしただけでしょう。

 私は気を取り直してレベル上げに戻りました。


 そうしてゲームを始めて6日。

 私は遂に最初のフィールドボスのストーンゴーレムの討伐に成功したのです。

 このボス動きは鈍いのですがとにかく体力が多くて大変でした。

 打撃系や破壊系のスキルが有効という事前情報はありましたが、今の所私の持っているスキルにそれらしいものはありませんし。

 あ、もしかしたらベルン様が齎したというスキル革命を利用すればもっと楽に勝てたのかもしれません。

 が、そこは検証班の方々からの新情報を待つことにしましょう。

 ちなみに6日でストーンゴーレム撃破(しかもソロ!)は2期生の中ではかなり早いほうです。

 これで晴れて私も第2の街に行く事が出来ます。


 余談ですが、このストーンゴーレム。

 運営のいたずらか、1期生とパーティーを組んだ状態だと倒しても第2の街には行けない仕様になっています。

 なのでここまでずっと1期生に引っ張ってもらっていた人達はレベルだけ高くてもプレイヤースキルが身に付いていないのでここで若干立ち往生することになります。

 とは言ってもレベル20の人が4人パーティー組めばごり押しで勝てるらしいですけど。

 凄い人になると開始30秒で倒すと言うのですから上には上が居るものです。


 そして。第2の街に急いで向かった理由は、なんとここ最近ベルン様が第2の街付近で観測されたという情報を掲示板で見たからなんです。

 なぜこんな序盤の街に居るのかは分かりませんが、もしかしたらそのお姿を直接見られるチャンスなんです!!

 ただ。掲示板には同時にベルン様がリア友と思われる2期生の女性と一緒にプレイしているのを見たという書き込みもありました。


(なにそれ、めっちゃ羨ましいんですけど!!!)


 一緒にプレイしてるだけでも羨ましいのに、しかもリア友とか!

 世の中不公平過ぎないでしょうか神様。

 私の近くに居たのなんて、なんちゃって偽ベルンだったし。


「はぁ~~」


 まぁ羨んでも妬んでも意味無いんですけどね。

 あいつは今頃まだ第1フィールドのどこかでのんびりレベル上げしていることでしょう。

 なんて考えていたせいか、視界の端に見覚えのある姿が。


(まさか私よりも先に第2の街に来てたの?)


 実はかなりのゲーマーだったのかしら。

 まぁキャラ造り直したとしても1期生だって言ってたし、効率の良いレベル上げの方法とかボスの倒し方とか知ってたのかもしれないわね。

 にしても装備くらい買えばいいのに。今だに初期装備なのね。

 何かの縛りプレイ?まあいいけど。

 結局その日はベルン様には会えず仕舞いでした。


 7日目。

 掲示板によるとやっぱり昨日もベルン様はこの街付近で観測されていました。

 なので今日はその場所に行ってみたいと思います。

 ……

 死に戻りました。

 というか、待ってください。

 急に難易度上がり過ぎじゃないですか?

 薄っすら霧の立ち込める湿地帯で、視界は悪いし足元はぬかるんでいて歩きにくいし最悪でした。

 そこへ足音も無く背後から足を噛み付かれた私は転倒。

 慌てて立ち上がって振り返ってみれば蛇のモンスターが私を狙っていました。

 更に悪い事にさっきの1撃で毒のバッドステータスを付与されたせいで足に力が入りません。

 ゲームの仕様上、痛みは感じないのですが、神経がマヒしたように動かない体っていうのもそれはそれで怖いと思うんですけど。

 なんて思っている間に横から頭に何かが体当たりしてきて、そのままやられてしまいました。

 ログを確認して見たら沼地大蛙って言うモンスターに攻撃されたみたいです。

 うぅむ、蛇のモンスターが居るんだから蛙を食べてくれればいいのに。


(これからどうしようかな)


 第2の街に行けるようになったのと同時に解禁されたシステムにデスペナルティがあります。

 名前の通り死んだら全ステータス半減という重いペナルティが課せられます。

 今後はもっと慎重に行動しないといけませんね。

 私は魔導士キャラなので本格的に一緒に組んでくれる前衛プレイヤーを探す必要がありそうです。

 最悪課金してNPCの傭兵を雇うと言う手もありますが、リアルマネーがかかりますし、何より成長しないし死んだら復活しないですから本当に最後の手段です。

 酷い人は使い捨てアイテム感覚で使うそうですし。


(今日の所は街の散策をして装備を新調したりアイテムを買いそろえたりしてよっと)


 それでも余った時間は外壁の上に登り風を感じながら掲示板を眺めていました。

 すると気になる投稿がありました。


……


No.271【異界の冒険者】

今第2の街の教会からベルン様とおぼしき格好の人が出てきたんだけど


No.272【異界の冒険者】

えっ、ベルン様でも死に戻ることなんてあるの?


No.273【異界の冒険者】

ベルン様にも赤い血が流れてた説


No.274【異界の冒険者】

まぁエルフだしまだレベルも低いだろうから1発で即死ってこともあるだろうな


No.275【異界の冒険者】

>271

それで今ベルン様はどちらに?


No.276【異界の冒険者】

分からん。文字通り凄い速度で飛んでいった。


No.277【異界の冒険者】

デスペナ背負ったままリベンジマッチに行ったのかな


No.278【異界の冒険者】

って飛んでいったってあの飛行機みたいに空を行くあれか!?


No.279【異界の冒険者】

いや飛行機というかミサイル?


……


 そこまで読んだ時、ふと上空を飛んでいく人影が目に入りました。

 まさかあれがベルン様?

 目を凝らすと足元が凄い勢いで動いてるので、飛んでいるというよりも空を走っているみたいですね。

 しかしちょっと遠すぎてシルエットしか分かりません。

 出来れば間近でそのお顔を拝見したかったなぁ。

 なんて。

 呑気にベルン様が走り去った先を見送っていたら、突然光の柱と、数秒遅れて雷の爆音が響き渡りました。

 そんな大魔法を放てるということは、さっきのは間違いなくベルン様だったんですね。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ