3 助けられたと思ったら、拉致されてた。
目が覚めると、知らない小屋にいた。
村の馬小屋のほうがましなぐらいみすぼらしい小屋だが、行き倒れていたところを助けてくれた人がいるわけだ。
捨てる神あれば拾う神ありとは言ったものだ。助けてもらったお礼をしなければいけないな。
などと考えていると、
誰かが入ってきた…
「っ!!」
2体のゴブリンだった…
助けて(?)くれたのはゴブリン?
ゴブリンは弱いけど魔物だ。当然、出会えば攻撃される。
何とか、先制攻撃をして、逃げよう…と思っても、俺に攻撃手段は無い。
ああ…ゴブリンに殺されて、食べられて終わりだ。
と諦観していると。
ゴブリンが話しかけてきた。
何言っているかわからない。そりゃそうだゴブリンの言語なんて学んだことが無いし、話せる人間も見たことが無い。
ゴブリンは、言葉が通じていないことを理解したようで、身振り手振りでコミュニケーションを取ろうとしてくる。
「立って、こっちについてこい」
と言いたいらしい。
逆らったら殺されるだけなので、おとなしく付いていくことにした。
小屋を出ると、周りも似たようなボロ小屋ばかりだった。
ゴブリンについて行くと、比較的きれいな小屋についた。
ゴブリンは、またも身振り手振りでコミュニケーションを取ろうとしてkるう。
「ここに入れ。」ということらしい。村長とか族長とかえらい人がいるんだろうか
小屋に入ると、
「やあ、元気か。人間よ!」
「えっ!?」
小屋に入った俺が驚いた理由は2つ。
1つは、人語で話しかけられたこと
もう1つは、目の前にいたのが人間。しかも美女だったことだ。
驚きと戸惑いで早口になって、
「あなたが、助けてくれたんですか?お名前は?お礼できることは?」
と立て続けに質問をしてしまった。
「まあ、落ち着け人間よ。まずは、名乗るのが先じゃないのかな?」
「失礼しました。アレックスと言います。行き倒れていたところを助けていただきありがとうございます。」
助けてもらったお礼を言うと、美女は目を逸らしながら言った。
「う、うん…。街道に人間が1人でいるって聞いたから、催眠魔法かけてゴブリンに連れてきてもらったんだけどね…」
拉致られてた。しかもゴブリンを使役しているヤバい人だった。
ゴブリンのほうを向き直ると、ゴブリンたちはひれ伏している。この美女相当に強いか危険な人らしい。
美女の方を向き直り、
「そ、そうですか。あなた様はどなた様なのでしょうか?」
「名前かぁ…、魔王って呼ばれることが多いね。でも、役職みたいなものだからへりくだらなくていいよ。」
倒れていたところを助けてもらったと思ったら、拉致されてて
助けてくれたのは美女だった。
けど、美女は魔王だった。