表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/9

痴女:2

 やっと最後の目的地である人気の無い公園へとたどり着いて、思わず安堵の溜息が出た。


 ここまでの道のりでも殆ど人とすれ違う事は無かったけど、御主人様がそれを良い事にコートの前をはだけて歩くように命令して来たからだ。

 今までの行為は、コンビニやコインランドリーなどの建物の中だったからまだマシだったけど、道端で裸を曝すのにはもっと強い抵抗があった。でも、結局御主人様の命令には逆らえずにここまでずっと体を曝して歩いてきたのだ。

 公園に入る前に風が吹いて一瞬裸が完全に露出してしまったけど、誰にも見られていない……と思う。

早くアパートに戻りたい……戻ったら戻ったで、あいつの責め(ごほうび)が待っているのだけど、外で裸でいるよりは遥かにマシだった。


 私の頭の中は誰かに見つかるかもしれない恐怖と羞恥心で一杯だったけど、あいつの命令には逆らえなかった。


 何故逆らえないのか解らない……あんな醜い中年男を愛してなんかいない。あの時、写真で脅された時も夫か警察に相談すれば多分それで済んだ話なのだ……でも、何故かあいつの押しに逆らえずになし崩しに関係を結ばされ、命令されるままに様々な責めを受けてきた。


 ……そして今も、命令されるままにこんな事をしてしまっている。


「よし、あの植え込みの中に入るんだ。……おい、早くしろ命令だぞ」


「は、はい」


 あいつに命令されると、何故か頭の中に電気が走ったみたいになって、思考が痺れたみたいにボヤけて何も考えられなくなってしまう。私は命令のままにフラフラと植え込みに向かった。


 その植え込みに入ってしまえば、公園や前の道からは人目に付かない。私は後も確かめずに急ぎ足で植え込みに飛び込んだ。そこは背の高い木が多い事もあって昼中でも鬱蒼として薄暗かった。その一番奥まった所にある背の低い草がまばらに生えている草むらまで来た所で、御主人様からの命令が入ってきた。


「よし、ここで止まれ。外から見えないか確認するからゆっくり一週廻れ」


 私は言われた通りにした。


「よし、ここで最後のミッションだ。コートもマスクも全部取って裸になれ。そしたらカメラをセットするんだ」


「……はい」


まず、サングラスとマスクを取ってポケットに入れ、それからコートを脱ぎ捨てて背の低い潅木に掛ける。そしてその上に帽子を置いた。そして、そこから後ずさって、帽子のカメラから全身が映る距離まで下がった。


「よし、そこでいい。どうした顔が赤いぞ? 興奮してるのか?」


「え……」


 私はそこで初めて自分の感情の中に、恐怖と羞恥の他に興奮を覚えているのを感じ取った。


 何故? 私はこんな野外で裸を曝すことに興奮する性癖があったの? いや違う、これはきっと……


「ブヒャヒャヒャ! そうだよな! お前は命令されるのが大好きな糞マゾ女なんだからなぁ!!」


 あいつの嘲笑を受けて、私はようやく自分の感情の正体を悟った。そうだ、私は誰かに命令されるのを欲していたんだ。

 ……両親は私が一人っ子だった事もあって、私をとても可愛がってくれて何かを強いる事も無く大事に育ててくれた。 夫もとても優しい人で、私にアレコレ言ったり無理やり迫る事をしない人だった。

 それはとても幸せな環境だったけど、私は真綿で包まれたみたいな人生に慣れ切って生きている実感を無くしていたと思う。

 そこへあいつが現われた。御主人様は私に愛着を欠片も持たずに、自分の欲望を一方的に私に叩き付けた。私のもう止めて欲しいと言う懇願を鼻で笑って次々に辱しめを加えて来た。

 でも、それに抗わずに従ってきたのは写真で脅されていただけじゃ無く、私が自分で責めを……いや、命令を欲していたからなんだ。


「じゃあ、最後のミッションだ。昨日教えた通り、ちゃんとやれよ?」


「……はい、御主人様」


 後はここでカメラの前で自慰をすれば、命令は全て終わる。でも自分の正体を悟ってしまったた私は、もうその程度の命令では物足りなかった。

 もっと、もっと大胆で過激な命令が欲しかった。私は、私にこの世で唯一自分に命令を与えてくれるあいつ……いや……御主人様に、もっと凄い命令をして貰う為におねだりをしようとした。


「よけろ! 二葉ー!!」


 え?


 御主人様からの突然の命令に、考えるよりも早く身体が反応した。次の瞬間、さっきまで私が立っていた場所にナイフを持ったジャケット姿の男が飛び込んできた。今の命令が無かったら、あのナイフで刺されていた……?


 突然の出来事に、私は何も考えられなくなって頭が真っ白になってしまった。

 

 男は最初の攻撃を失敗したせいか、飛び込んで来た勢いで転倒してしまったけど、すぐに身を起こしてサングラスとマスクで隠した顔をこっちに向けてナイフを構え直した。


 え? なに? これって、朝に夫が言ってた通り魔なの? 私、襲われてるの? 


 どうしたらいいの? にげる? 裸なのに? 助けを呼ぶ? 裸なのに? じゃあ、どうしたらいいの?


 だれか助けて! なんとかして! どうしたらいいか私に教えて!


 ……命令して!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ