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君に告ぐ  作者: ミズハラハヅミ
第二部 プラネタリウム心中
33/79

14

「多美は何かやりたいこととかないの?」

 多美の中でちらりと、亜季と合唱部のことがよみがえった。けれどそれは無視する。

「うん。……なんにも興味もてないし」

 興味のあるものなんて見つかるのだろうか。今はまだいい。勉強とかお見舞いとか家事とか、やることが沢山あるから。

「なんだ、片っ端からなんでもやってみればいいのに」

「……面倒くさい」

「でもやってみないと出会えないかもしれないし。運命の人は向こうからは来てくれないものだよ」

「でも梓は来たじゃない、実加の方から」

 その多美の答えに、梓はとても意味深に笑った。

「いや、俺からちゃんと言ったよ。多美に会ってみたいって。会わせてもらえなかったけどね」

 一瞬何を言われたか分からなかった。

「え?」

「分からなければいいよ」

 りんごも食べたいなら剥くよ、とはぐらかされた。多美はバナナがいいと言うと、なんて剥きがいのない、と文句をいいながら、ナイフで食べやすいように切ってくれた。

「ねぇ、多美、歌って」

「え? どうして?」

「コンクール、どんな曲やってるのか、歌ってくれてもいいじゃん」

 最近何度もこれを言われる。そして多美の返事も当然決まっている。

「やだ」

「なんで?」

「下手だから」

 にべもない多美の答えに、梓はこらとふざけた口調で怒った。

「上手なくせにー」

「……なんで梓がそんなこと知ってるのよ」

「前、俺が寝てる時に歌ってたから」

「そんなこと、あったっけ」

 多美は本気で驚いた。確かに梓が眠っているときは、起きるかもしれないので、少しだけ側にいてから帰ることにはしている。

「あった。寝てるふりしてたの。だって起きたら多美、絶対にやめると思ったから」

 それは止めたと思う。

「何歌ってた? 今の課題曲かな……」

「ううん、違う。日本の唱歌」

「そんなの歌ってたっけ」

 知らないならそれでいいんだよ、といった意地悪なセリフさえ、梓が語ればうっとりと聞き惚れる。





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