右腕
2時間かけてロンドンへ戻ってきた2人。
キースは長時間のドライブにも少しづつ慣れ始めていた。
キース「巡回ルートが変わっていなければこの時間はここを通るはずなんだが・・・」
コンラッド「何でこんなところで待つんだ?」
公園の茂みの中に2人はいた。
キース「気付かないか?」
「この通りを気にしている奴が俺たちの他にもいる」
「工事現場にいる作業員」
「カフェにいるカップル」
コンラッド「そいつらみんなマフィア側の人間だって?」
キース「わからんが可能性は十分ある」
コンラッド「言われるとそう見えてくるな・・・」
「ただそうなるとここから出ていけないぞ」
キース「アルバートには素質がある」
「必ず俺を見つける」
辺りを警戒しつつ待っていると一台のパトカーが通る。
キース「たぶんあれだ」
「立て」
コンラッドはキースに服を引っ張り上げられる。
コンラッド「ふざけんな一張羅だぞ」
キース「後ろ向け」
コンラッドがパトカーに背を向けるとキースはコンラッドの胸ぐらを掴み強く揺すった。
コンラッド「や、やめてくれ」
「これがダメになったら本当にもう替えがないんだ」
キースが構うことなく続けているとパトカーが2人の前で止まった。
ガチャ。
パトカーから警官が降りてきた。
警官「ちょ、ちょっとそこ」
「何やってる」
キース「顔を見るなよ」
「万が一別人だったら面倒な事になる」
警官がこちらに近づき始めたのを確認したキースは言う。
キース「よし、走れ」
キースは掴んでいた胸ぐらをそのまま引っ張って走り出した。
警官「コラー、待て!」
警官は懐から銃を取り出し2人に向けた。
コンラッド「お、おい!」
「銃で狙われてるぞ」
キース「見るなと言っただろ」
「あれはテーザーガンだ」
「それにいきなり撃ってくることはない」
コンラッド「テーザーガンなら撃ってくるだろ」
キース「だったら死ぬ気で走れ」
「人気のないところまで行くぞ」
コンラッド「そろそろ離せよ」
掴まれていた手を振り払い全速力で走るコンラッド。
キース「離れるなよ、ついて来い」
コンラッド「こんなに全力で走るなんてもう10年以上なかったぞ」
コンラッドは足がもつれてきていた。
キースは狭い道を選んで走っていく。
警官「待てー!」
周りからの注目を集めながら逃げる。
コンラッド「大丈夫か?めちゃくちゃ目立ってるぞ」
キース「想定内だ」
「お前が勝手な事をしない限りは大丈夫だ」
「あそこの路地だ」
そして建物と建物の間、ギリギリ人が入れるかというくらいの路地というより隙間に入って行く2人。
コンラッド「行き止まりだ」
キース「ここでいい」
そこは何も無い16㎡(約10畳)ほどの袋小路だった。
警官「止まれ!」
キース「見ての通り止まってるだろ」
コンラッド「挑発するなよ」
背中にテーザーガンを向けられたキースは困惑するコンラッドをよそに冷静だった。
コンラッド「ま、待ってくれ違うんだ」
振り向こうとするコンラッドだが、すぐさま警官はテーザーガンをコンラッドに向ける。
警官「動くな!撃つぞ」
キース「お前が挑発してどうするんだ」
警官「手を頭の後ろにして跪け」
コンラッド「あわわわわわ」
キース「言うとおりにしろよ」
2人は言われた通りに跪く。
警官はテーザーガンを向けたまま2人の正面にゆっくりと回り込んだ。
キース「久しぶりだな、アル」
アルバート「・・・キ、キース!?」
キース「元気にやってるみたいだな」
アルバート「雰囲気変わって一瞬わかんなかったよ」
「いつ出所したんだい?」
キース「昨日だ」
手を下ろしゆっくりと立ち上がるキース。
それを見て安心してコンラッドは地面に手をついた。
コンラッド「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
「こんなこと、はぁはぁ、しなくても、はぁ、はぁ、はぁ、良かったんじゃないのか?」
キース「俺と警官がズブズブなところを見られるわけにはいかないだろ」
コンラッド「なら、はぁ、はぁ、最初に言っといてくれよ・・・」
完全には納得のいかないコンラッドを横目に、
キースは構う事なくコンラッドに完全に背を向けアルバートに話し始める。
キース「こいつはコンラッド、弁護士ではあるんだが大手事務所を追い出された貧乏弁護士だ」
「俺の昔の事件の真相を解き明かして一発当てようとまとわりついてきてるハイエナだ」
コンラッド「はぁ、はぁ、これから会う人間全員にこれを言うのか•••?」
キース「お前にそれ以外の特筆すべき点がない以上仕方ないだろう」
「こいつはガキの頃から一緒だったが会うのは13年振りくらいだ」
アルバート「まさか前よく話していた人?」
「人の功績を取ることだけでのし上がるとかって」
キース「そうだ、こいつがいなかったら俺はもっと高い評価を得てまた違った人生を歩んでいた事だろう」
コンラッド「人生は持ちつ持たれつだ•••」
「今は助ける立場にいるのは確かだ」
キース「そうか、じゃあ遠慮なく弾除けの盾にしてやるよ」
「その使い方が一番有用だ」
コンラッド「冗談に聞こえないんだよ、今のキースが言うと・・・」
キース「冗談だと言った覚えはないんだが」
アルバート「とはいえ、やっと出所できてよかったね」
キース「ああ、完全には解放されてはいないけどな」
「出所直後から弾丸の嵐だった」
コンラッドは緊張が少しづつ解け、息切れもおさまって初めてアルバートの顔をしっかりと見ることができた。
そこにいたのは警察官というには頼りない少し小柄な男だ。
事前にキースとの繋がりがある人物を調べていた時に見た写真よりも実物は更に頼りなく見えた。
赤茶色の少しクセのある髪は何のセットもされておらず朝起きたままなのであろうか、寝ぐせがついている。
茶色の瞳からは何の威圧感も感じる事はなく取っ組み合いになったとしても自分でも制圧出来るのではないかとさえ思えた。
アルバート「キースからもう面会には来るなって言われて以来7年振りだね」
キース「そっちはあれから何か変わった事はあるか」
アルバート「特にはないよ」
「ぼくもキースの期待に応える事が出来ずに現状維持だ」
キース「そうか」
「見知らぬ奴が接触してきたりしていないか?」
アルバート「事件当時はキースの事を色々聞かれたけど逮捕後から今まで何もなかった」
キース「それはよかった」
「だがこれから色々聞かれるかもな」
「そしたらそいつはほぼクロだ」
「あまり関わるなよ」
アルバート「そう言われてもね」
「黒だの白だの何の事だか・・・」
キース「(アルだけはどうしても巻き込みたくなかった)」
「(だから事件の時も捜査から早々に外させるよう仕向けた)」
「(だが結果今は数少ない頼れる存在となってしまった)」
「(今後俺と関わる事でアル自身を守る事にも繋がると言えばそうかもしれないが、都合の良い言い訳という方がしっくり来る事は確かだ)」
「アル、今後誰かしらから何か聞かれたり知らない奴が接触してきたらそいつには正直に話してくれればいい」
「今日俺と会った事もだ」
「ただ身の危険感じたらすぐに連絡してくれ」
アルバート「どこに?」
「もう携帯繋がらないよ」
キース「ああ、そうだな」
「コンラッド」
コンラッドはめんどくさそうにキースにいわれるがままアルバートに連絡先を教える。
キース「登録はするなよ、覚えろ」
「それとこれからこっちからの着信履歴やら証拠になりそうなものはすぐに全部消せよ」
アルバート「わかったよ」
コンラッドが私用のスマートフォンに登録しているとキースはヒソヒソとコンラッドの耳元で囁く
キース「お前盗聴器持ってるだろ?」
「出せ」
コンラッド「・・・よくわかってるな」
キース「俺に過去いくつ付けたか忘れたのか?」
「常に持ってるだろ」
「さっきの記者にも付けてたのも知ってる」
「時が経つにつれどんどん小型化してたよな」
「今はどうなってるんだ?」
コンラッド「今はシールタイプだ」
「色も選べる」
キース「こんなに薄っぺらくなったのか」
「黒だ」
コンラッドはキースが手を出すとすかさず黒いシールを手に貼った。
キース「アル、ちょっといいか」
アルバート「なんだい?」
キース「ウォーラントカード見せてくれ」
(※ウォーラントカード:イギリスの警察官の身分証明書)
アルバート「え、なんで?」
キース「俺はもう拝めないからな」
「見納めさせてくれ」
アルバート「ああ」
アルバートは少し恐れながらもキースにウォーラントカードの入った黒い革の手帳型のケースを手渡した。
ついさっきまでテーザーガンを向けていた相手にする事ではないからだ。
キースは舐め回すようにケースを見ると自分が初めてこのを手にした時のことを思い出していた。
キース「(あの時の俺はまだ何も知らなかった)」
「(綺麗なものしか見たことがなかった)」
少し感傷に浸りながらもケースの中にシールを貼るとアルバートに返した。
キース「これで成仏できそうだ」
アルバート「成仏だなんて」
「復職も全然あるよ」
キース「あのなぁ、あの時だけでも自分の身を守るためとは言え10人以上の人を殺してる」
アルバート「そんなに・・・」
キース「その殆どが公にできないものだったんだろう」
「だから俺は10年で出てこれた」
「奇跡以外のなにものでもない」
「もう常人ではないんだ俺は」
「仮に戻れるとしても戻る事はない」
アルバート「じゃあこれからどうするのさ」
キース「刑事だった経験を生かせばどうとでもなるだろ」
アルバート「そんなに簡単にうまくいくとは思えないけど」
キース「何事も簡単なことなどない」
「とりあえず今は貧乏弁護士の下でコマ使いだ」
「それよりお前は自分の心配をしろよ」
アルバート「え?」
キース「俺と近しい人間だったわけだから当然お前もマークされてるはずだ」
「俺が会いに来る事も想定しているに違いないだろう」
アルバート「でもあの事件から10年全く怪しい事はなかったよ」
キース「そりゃあ10年間俺はいなかったからな」
アルバート「一体誰がこんな事を?」
キース「それはこれから調べる」
アルバート「僕も協力するよ」
キース「いや、お前は俺が聞いたことだけ答えてくれればいい」
キース「関わった人間がみんな死んでるんだぞ」
アルバート「でも僕だって警察官だ」
キース「・・・ああ」
「(アルバートの警察としての才能を感じながらも1番認めていないのは俺なのか・・・?)」
キース「アルはそこまで重要視されていない」
「されていたらムショ行きか死んでるかのどちらかになっているはずだからな」
アルバート「それはキースが僕を蚊帳の外に置いたからでしょ」
「実際僕は裏に何かしらの組織があるのだろうとしか理解してないからね」
キース「そこがデッドラインだからだ」
「それ以上知った人間の末路を実際に見てるだろ」
「戦略的に考えてもお前は知るべきじゃなかった」
「頼れる人間が1人もいなくなるからな」
「日本人じゃあるまいし無駄死にすることに何の意味もない」
アルバート「・・・」
「今のは要らなかったね」
キース「まあご挨拶はこの辺にお前もそろそろ戻らないとマズイだろ」
アルバート「ああ、そうだね」
「遅いとまたチクチク言われるからね」
「最近僕の上司になった奴がいちいち突っかかってきてそれが悩みの種なんだ」
キース「上司?なんて奴だ?」
アルバート「ザカライア•ベンフィールド」
キース「・・・お前の後輩だろ」
「事件当時まだ新人だった奴だ」
「いいか、先越されるのは100歩譲って仕方ないにしろ舐められるのだけはダメだ」
「お前が理不尽な目に遭ったり貧乏くじ引かされるのは運が悪いとかじゃなく舐められてるからだ」
「最近いつ手錠かけた?」
アルバート「もう一年くらいはないかな」
キース「何やってんだお前」
「税金泥棒だと言われても文句言えないぞ」
アルバート「いや、いない時はいないんだよ」
「ここは都会だし人目があるんだからおかしな人なんて基本的にはいないよ」
キース「メルヘン都市じゃないんだから犯罪者が一年も出ないわけないだろ」
「(10年間ダラけて素質を腐らせやがって)」
「ほらあそこ見ろ」
キースが目線を移した先の路地の先を見るアルバートだが特に変わった事はないように思えた。
キース「さっきから何度もここを通ってチラチラ覗いてる奴がいる」
「野球帽で顔を隠して歩いてる奴だ」
アルバートはもう一度路地をチラ見すると丁度のタイミングで野球帽を深く被った男が通りかかった。
キース「アイツだ」
「4回目だ」
アルバート「全然気が付かなかった・・・」
キース「捕まえろ、絶対クロだ」
「また昔みたいに手柄のお裾分けだ」
「おまけにお前が知りたがってた組織に何かしら関係しているはずだ」
「もうこんなことしなくても自立できてるかと思ってたんだけどな」
アルバート「・・・」
キース「今回は特別だ」
アルバート「恩にきます、先輩」
アルバートは路地側を向いていたのは自分だったのに何故気付かなかったのか不思議に思いながらもすぐに野球帽の男の後を追った。
キースも同じく走り出しコンラッドは少し後ろで2人を追った。
キース「一度でも呼びかけに応じなかったらすぐにテーザーガンを撃て」
アルバート「そこの帽子の男、止まれ!」
男は止まらずに急ぎ足で人混みの中に入って行った。
アルバート「これじゃ撃てないよ」
キース「なら追いかけて捕まえるだけだろ」
キースは人混みを強引に押し退けて逃げた男にタックルで押し倒し制圧した。
その様子は群衆から注目を集めていた。
キース「お巡りさん、こいつです!」
アルバート「あ、ああ」
キース「手錠かけてさっきの場所まで連れて行け」
キースはアルバートが手錠をかけているところで耳打ちした。
アルバートは言われるがままに手錠をかけ、連れて行くとキースとコンラッドは少し遅れて向かう。
キース「外から見えないように壁側に座らせろ」
言われるがまま従うアルバート。
キースはポケットなどを探るがスマートフォン以外に何も出てこなかった。
キース「こうなる事を見込んで身分証は持って無いのか」
「こいつの身分は署まで連れて行って聞き出せ」
アルバート「あ、ああ」
キース「まあスマホだけあれば大丈夫だけどな」
「スマホのロック解除しろ」
男「へへ」
男は従わずに不敵な笑みを浮かべる。
ボコッ
キースは不適な笑みを確認すると間髪入れずに男の顔面に膝蹴りを入れた。
コンラッド&アルバート「!?」
アルバート「いやいや、それはマズイよキース」
男の鼻からボタボタと血が流れ始めた。
コンラッド「訴えられたら終わりだ」
キース「何真面目になってんだよ」
「どうとでもできるだろ」
「現にコイツは警察の指示を無視してる」
「ある程度の事はされてもおかしくはないだろ」
「それにこっちには協力的な弁護士の味方がいる事だしな」
コンラッド「はぁ・・・」
キース「ギャビストンの人間か?」
男「・・・」
ゴツ!
男「ああ!」
キースは男の顔を腕で壁に押し当てると無理やり目を開けさせスマホの顔認証ロックを解除した。
キース「やっぱり撮ってたな」
キースは男のスマホをコンラッドに投げ渡す。
キース「写真やら動画やらお前のとこに移して消しとけ」
「連絡先も全部だ」
アルバート「消しても意味ないと思う」
「クラウド保存されてるかもしれないから」
キース「クラウドの方も消しとけばいい」
「他に見られてないのを願ってな」
男「う、うう・・・」
キース「で、お前はいつまでダンマリ決めるつもりだ?」
「俺が誰だか知ってる前提で言っておくが俺は昨日出所してすでに何人か人を殺してる」
「口封じにもう1人くらい増えたところで俺からしたら何も変わらない」
「ギャビストンの奴らが俺を付け狙う限りどうせこれからも増えるからな」
アルバート「な!?」
キース「急に向こうから撃ってくるんだから仕方ないだろ?」
男の表情が変わり始める。
キース「おや?ギャビストンの名前も知らない程の下請けのさらに下請けかと思ったらそんな事でもないんだな」
キースは一瞬笑みを浮かべるとゆっくりと右手を男の顔を近づけ親指を男の左目の瞼の上に置いた。
ゆっくりと力を入れながらキースは尋問を始めた。
キース「どこの人間だ?」
男「・・・」
キース「・・・」
グググ・・・
キースは右手の力を入れて目に押し込む。
コンラッド「!?」
アルバート「キース!」
男「わぁー、やめてくれ、言うから!」
「ギャビ、ギャビストンだ」
キース「お前の名前は?」
男「はぁ・・・はぁ・・・」
ググ
男「ああ!」
コンラッド「カーティス•アレンだ」
見かねたコンラッドが男のスマホから得た名前を言った。
キースは右手の力を緩めた。
コンラッド「これはこいつの個人のスマホだ」
「プライベートの写真が入ってるからな」
キース「詰めが甘かったな」
「何をしていた?」
カーティス「くそ・・・」
「言われて来たんだ」
「あんたがそこの警官に必ず接触しに来るから見張れと言われたんだ」
「まさか探し始めて1日目で現れるとは思わなかったが・・・」
キース「どこに行けばギャビストンの奴らに会える?」
カーティス「それは言えない!殺される」
キース「そうか」
キースはコンラッドとアルバートに気付かれないように自分の体で男を覆い隠しつつそっと瞼に指を押し込む。
カーティスは数秒は耐えてみるもののキースが本気である事を悟るとすぐに声を上げた。
カーティス「わかった!喋るからやめてくれ」
キース「さっき言っただろ?」
「お前1人殺す事に俺は何の躊躇もない」
「何の情報も吐かせずにそのまま返すわけないだろ」
アルバート「キース、これ以上やるなら僕もやらざるを得ないよ」
アルバートはキースにテーザーガンを向けた。
キース「大丈夫だ、コイツは話すと言ってる」
キースはカーティスを見て目で自分の本気度を伝えると、カーティスはすぐにそれを察した。
キース「このまま帰ってもどうせお前は死ぬ」
「ギャビストンファミリーがどれだけ合理的に尻尾切りをする奴らかを俺は知ってる」
「すでにギャビストンの名前を出して自身の名前までバレた」
「俺は過去にその状況で生きている奴を見たことがない」
コンラッド「(本当か・・・?)」
カーティス「う、うう・・・」
キース「ギャング上がりか?」
カーティス「そうだ」
「ギャビストンから仕事を受けていたらそれが評価されてファミリーに入ることになった」
「仲間を切り捨てると言う代償は負わされたけどな」
キース「仲間は死んだのか?」
カーティス「あれから連絡をとっていないからおそらく・・・」
キース「最初からお前の事も消すつもりだ」
カーティス「そんなわけ・・・」
キース「一応今は役には立ってるみたいだからヘマするか都合が悪くなるまでは使っておこうと思っているんだろうな」
「色々知りすぎたな」
「見たところ盗聴器やらはついていないから向こうは今のやり取りを知らないはずだ」
「何かしらの成果を持って帰ればすぐに殺される事はないだろうが時間の問題だ」
「ギャングの頃はそれなりに仕事できる方だったんだろ?」
カーティス「そ、そうだな」
「一応まとめ役だった」
キース「なら察しはついてると思うが、取引だ」
「お前をギャビストンから守る代わりに協力しろ」
カーティス「何を根拠に俺が殺されると•••?」
キース「どのみち従わないならギャビストンの奴らより先に俺がやる事になるんだが?」
「このまま逃げ果せたとしても必ず探し出して殺しに行く」
キースの本気の目は元ギャングの経験から嫌というほど伝わっていた。
カーティス「・・・」
「まぁギャビストン側の本気度もすぐにわかるだろう」
「今からお前はこの警官に任意同行という体で警察署まで行け」
「そこで釈放してもらってボスのところまで帰ればいい」
「道中1人よりかパトカーに乗ってればまだ安全だ」
「俺達の名演技の証拠動画をこれから撮るからそれを手土産に帰ればお前は死なずに済む」
「・・・かもしれない」
「何のリターンもなく顔見られて自身の情報まで漏らされた挙句に殴られ顔で1人で帰るやつをギャビストンが許すとは思えんがお前はどう思う?」
カーティス「・・・」
テーザーガンを強く握り直すアルバートを横目にキースは話し続ける。
「協力するならファミリーを抜ける手助けをしてやる」
「今日俺と会わなかったとしてもお前は消される事をこれから身をもって知ることになっていた」
「生きたいなら従う以外に選択肢はない」
「いずれ嫌でも俺に頼りたくなる時が来るはずだ」
「ただそうなってからでは遅いかもしれない」
「だからさっさと家族と一緒にこの国を出ろ」
カーティス「・・・!」
キース「その手助けをしてやると言ってるんだよ」
「生まれたばかりの子供の命を奪われるのは想像を絶するぞ」
キースはカーティスのスマホを見た際に家族の写真があるのを見ていた。
キース「俺の時は生まれる前だった」
「今は半信半疑でもいい」
「家族の命を一番に考えておけ」
カーティス「・・・わかった、やるよ」
キース「ものわかりが良くて助かったよ」
「おかげでこっちも仲間と一悶着せずに済みそうだ」
コンラッド&アルバート「・・・」
キース「帰ったらお前はいつも通りしていればいい」
「こっちから会いに行く」
カーティス「あ、ああ」
キース「また会おう」
カーティスはどうやって会いにくるのかなど色々と気になりつつも、
キースのペースに飲まれ聞けずに終わってしまった。
しばらくすると路地から手錠を後ろにかけられた男とアルバートが出た。
コンラッド「アルバートも危ないんじゃないのか?」
キース「見逃す方が警察として問題だ」
「しっかり怪しいやつだっただろ」
「アルも頼りなく見えるかもしれないが覚悟して警察官をやってる」
コンラッド「そうか、いらない世話だったか」
「ただ思っていた以上に監視の目が多いな・・・」
「流石にこれではいつ殺されても何らおかしくはない・・・」
キース「俺はある程度は想定内だったがお前は降りてもいいんだぞ」
コンラッド「何を今更・・・」
「もう俺もしっかりマークされてるだろ?」
「(こっちも人生賭けての大勝負なんでね)」
キース「よし、俺たちも帰るぞ」
車までの道中、コンラッドは必要以上に周りの目に怯えていた。
キース「大丈夫だ、今のところおかしなやつはいない」
コンラッド「そうか、よかった・・・」
キース「(だといいんだけどな)」




