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記録84:レディース・アンド・バーバリアンズ

【中国統一戦争】

華興大聯邦側の作戦:重慶奪取作戦(優勢)

総司令官:李 慧琳


中華連邦側の作戦:四川奪還作戦(劣勢)

総司令官:馬慶


【損害】

華興大聯邦:四〇〇〇

中華連邦 :六〇〇〇


無関係だった民間人:7,800,000


備考:航空戦力の本格投入により民間人に多数の被害が出ている。

ジョニー副大統領のパーティーは、合衆国随一のオーケストラをはじめに開催された。

テーブルに並ぶ豪華な料理の数々、合衆国やロシア、インドやヨーロッパ、中国の有名企業の社長さんが渡米しており、今後のビジネスについて語り合っていた。正直、ビジネスなどこれっぽっちもわからない私とアレックスは隅っこで副大統領が挨拶にでてくるのを今か今かと待っていた。


なれないスーツの舌には強化プラスチック製のナイフを装備しており、万が一襲撃された場合でも安心だ。

アレックスは別の武器を装備してきていると聞いているが、彼の服にはそれらしき武具の装着はなかった。


「レディース・アンド・ジェントルメン!お集まりいただき、ありがとうございます!今回のパーティの主催者のジョニーです!皆さん、本日は楽しい夜に致しましょう!」


いつの間にか登壇していたジョニーがマイク越しに言った。

出席者から歓声と拍手が巻き起こった。


すぐに副大統領は台から降りて、出席者たちとグラスを片手に話しだした。

ここは私達も気になるような人間を演じるべきだろう。

つまり、プランAの『私すごい人ですよって頑張る作戦』だ。

アレックスは偽造された身分証をいくつか持っていて、そのうちの一つにヨーロッパの極秘兵装研究会としての身分がある。それを利用して、私はその助手という体で話しておけば、米国の安全保障などの話題にも入りやすくなるだろう。


「アレックス」

「分かってる。プランAだろ」


アレックスは深呼吸して顔を少し変えてやつれた研究者のような顔になった。

そして、私とそれっぽい会話をしながら料理をさらに取っていると、案の定、副大統領が挨拶のために私達のもとにやってきた。


「やあ、はじめまして。副大統領のジョニーだ」

「こちらこそ、初めまして。フリードリヒです。ヨーロッパ極秘兵装研究会から来ました。こちらは、助手のアレクサです」


適当につけられた名前に愚痴が一つ零れそうになったが、なんとか喉元でとどめ、副大統領と握手を交わした。副大統領が楽しそうにアレックスと会話をしているが、実際副大統領はほとんど話の内容を理解できていないだろう。

なにせ、EVのサイボーグ事情など、一切他国に漏れてはいないからだ。

それに、副大統領ともなればなおさら知られることはない。アレックスがまくし立てるような話し方をするので疲れてしまったのか、私に話題を振ってきた。


「君は、アレクサだね。僕になにか質問あるかい?」

「そうですね...では、現在の合衆国は昔のように勢力圏が広いとは言い切れません。そこで、合衆国はどのようにしてこの帝国主義と独裁主義の抜港する暗黒世界で、素晴らしき自由民主主義を維持しているのでしょうか」


こういうときは、大抵その国のことを褒めちぎるようなことを言えば、一つや二つのボロが出てくる。

これで出さないのは天菊かワンかラシードくらいだろう。


そして乗り気になったジョニーは陽気に合衆国の安全保障の内情を話しだした。


「実はね、自由これには秘訣があるんだ。それは、太平洋と大西洋を守り抜くことさ。この二つの海さえ支配すれば、自由と民主主義は守られる」


誇らしげにそう語る副大統領の言葉から以下のことが推測できる。

まず、太平洋と大西洋を守り抜く、といったことだ。戦前の合衆国はインド洋まで艦隊を派遣していたようだが、近年、そのような情報は入ってきていない。

一説によると最新鋭のステルス艦でも開発して忍ばせているのではないかという噂も立ったが、これは今否定できた。

そして、この二つの海さえということは、合衆国にはこの二つの海さえ支配しきった後の余裕は恐らくないということだ。


つまり、現在の合衆国の派遣は大西洋から、海外基地のあるジブラルタル、太平洋の半分以上と言ったところだ。昔のようにホルムズ島でイランをいじめたりなどは出来ないということだろう。

それか、そもそも合衆国のナショナリズムが高揚しすぎて他の国なんてどうでもいいと放っているかのどちらかだ。


そして、和対しは次の質問に移った。


「では、もう一つだけ失礼します。アメリカ合衆国で、現在不穏な噂が立っているのはご存知ですよね。ギャングのことです。噂によると、政府内でも対立が起きているとのことですが...現在、どのような勢力図になっているのでしょうか?」


副大統領の顔が曇った。これだけ入ってはならないと、ブラックバード大統領から釘でも刺されているのだろう。だが、このような若い人間は、なにかキッカケさえあれば直ぐに口を滑らせてしまう。

ここは一つ、近衛隊の情報からエサを引き出して動揺させるか...


「友人から聞いたのですが、上院か下院のどちらかには世界格好のスパイが潜んでいて合衆国を搾取大将にしようと争っていると」

「その話をどこで聞いた。場合によっては貴様も抹殺しなければならない」

「友人と言っても、先月各国からの刺客を恐れてアフリカに亡命しいたしましたので、足取りはもうわかりませんよ」


副大統領は少し悩んだ後、口をひらいた。


「ここだけの話だ。現在の大統領政権下は非常に不安定なのだ。海外のスパイが入っているとの情報だけでも初めて聞いた」

「ブラフかもしれませんが。あまり鵜呑みになさらないほうがよろしいかと」

「今はブラフでも構わん、貴様が知っている情報を全て教えろ」


餌に食いついたジョニーに、私は知っていることを、答えられる範囲内ですべて話した。

上院議員に確実に紛れていること、軍部でも対立が起きているということ、そしてCode:Clawsが大統領に敵対しているかもしれないということ。

ジュニーは深刻そうな顔で呟いた。


「まずいな。ファリンドンちラッセルめ......」


不意に飛び出した言葉を、ジョニーは慌てて取り繕おうとしたが、私の耳にはもう届いていた。しかし厄介なことになりそうなので聞き返して聞こえていないふりをすると、安心したように私達に分かれの挨拶だけをして足早に去っていった。


「アレックス、Code:Clawsに会いに行くよ。探さなきゃいけない人が一人増えた」

「ああ、会いに行くんだな。その、ラッセルとやらに」


ラッセル、私達はその名前を胸の奥底に刻み、パーティー会場を後にした。

お読み頂きありがとう御座いました。次回もこうご期待!


次回『ギャング・スター』

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