表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/122

記録82:重慶市攻防戦

今回の戦局はお休みです。

◆◇◆◇

兵器フィクション・ウェポン解説 SB-49

初の国産ステルス爆撃機で、SBはステルス・ボマーのそれぞれの頭文字を取ってつけられている。49年製で、米国のステルス機と同じく全翼機であるが、技術不足からか気休め程度の小さな尾翼が付いている。

エンジンは四基搭載されており、B2爆撃機よりも倍程度の積載量を誇ると言われているが、近衛隊と日本軍の最高機密に当たるため、名称程度しか公表されていない。離着陸は主に離島か現地で行われるため、その姿を見ることの出来るものはごく少数である。

空中で楽しそうに飛び回っている護衛用の無人機の下、エンジン音を鳴らしながら、私はとある場所へと向かっていた。


「止まれ、身分証を見せろ」

「はい」

「ッ!失礼しました!どうぞ、天菊戦闘群長殿」


重慶市周辺の司令部の検問を通って、私は基地の内部に入った。

大量のロボットを駆使して、戦闘機の滑走路やドローンの離発着用の土台などはもうすでに出来上がっていた。


「では、司令室へ行きましょうか」

「了解」


護衛のものをつけて私は司令室の天幕に入った。


「お疲れ様です!」


即座に全員が私に敬礼をした。右手を上げて返事をして、私は中央の机に乗っている重慶市の地図を見た。

現地司令官として投入されている李の戦術はどうやらうまく行っているようで、着実に敵主力部隊を包囲している。

一部では掃討戦も始まっているようで、使用している部隊よりも温存して後方に下げている部隊や警戒にあたっている部隊のほうが多かった。


「李さん。SB-49は何機ありますか?」

「三機デス。使いマスカ?」

「ええ。とっておきを。トラックに積んできましたから、それぞれに積ませておいて下さい。準備でき次第、爆撃を開始します」

「了解」


李が無線機でSB-49に爆弾の搭載を命令している間、私は一旦食事を摂ることにした。

近衛隊総司令部ということもあってか、小さいながらもしっかりとした食堂が備え付けられている。

護衛兵を休ませることもあって、今が食事にはちょうど良い。


「李さん、ちょっと食堂に行ってきますね」

「はい。わかりまシタ」


護衛を引き連れて食堂の扉を開けると、調理員が私の顔、いや階級章をみて大騒ぎしていた。

華興大聯邦の人間なのによく私がわかるものだなと思いながら、一旦静まるまで席について待機していると、調理員が料理を作ってくれたようで、私達に出してくれた。


赤い火鍋のスープに辛いものを片っ端から突っ込んだいかにも辛そうな料理だが、香りから山椒と唐辛子が沢山入っていることは分かった。

私と護衛の数人で火鍋を囲むようにして座り直している間、タレを作ってくれたようでそれらも私達の前に食材と一緒に並べられた。


「これは...?」

「重慶火鍋です。センマイ、簡単に言えば牛の第三の胃ですが、それが美味しいんです。ちょっと辛いですから、気をつけて下さい」


煮えたぎる火鍋に長い箸を使ってまずはセンマイをつけて加熱した。


それからタレにつけて口の中に入れた。

程よい辛さと参照の酸味が旨い。


続いて近くにあった麻辣牛肉を鍋で煮込んだ後、タレにつけて口の中に入れた。


「うん、美味しいですね」


私がそう言うと、調理人は困惑した様子で私に聞いてきた。


「辛くないのですか?」

「ええ、問題ない辛さです」


護衛の人間もそれを聞いて少し安心したのか、一口麻辣牛肉を口にした。


そして噎せ返って、涙が出ていた。

屈強な男たちなのに、舌は弱いのかと思いながら、私は一人で食べ続けていた。


「群長、よく一人で食べられますね...」


護衛のうちの一人の谷川が私にそう言った。やはり普通は辛いのだろうか。


「辛ければ無理しないで下さいね。他の料理もあるでしょうし、彼らは気を利かせてこの重慶火鍋を振る舞ってくれただけですよ。意地悪しようとは思っていないはずです」

「そ、そうですか...では、申し訳ありませんが...」


谷川に釣られて他の護衛たちの別の料理を頼みだした。

仕方ないので残っていた火鍋は全て私一人で平らげて、少しだけ水をもらって護衛が食べ終わるまで時間を潰した。


「ごちそうさまでした」


全員で合掌して食堂からでた。

食堂のすぐ側には李が待機していて、彼女はSB-49への爆弾搭載が完了したと報告してくれた。


「わかりました。全機離陸させて重慶中心部に爆弾を投下して下さい」

「......天菊サン、あの爆弾って何デスカ?名前もどこにも書いてなくッテ」

「安心して下さい。近衛隊の期限切れ爆発物処理場から持ってきたものですから、至って普通の期限切れの爆弾ですよ。まあ、期限切れと言っても旧式になっただけですから、全然使えますよ」

「それなら、良いのデスガ...」

「とりあえず管制塔に向かいましょう。よく見えるはずです」



「全機、離陸してください。目標は重慶市中心のビル群」

『了解。光学迷彩システム、爆弾管制システム、エンジン1から4、ターミナルコンピュータ、オールグリーン。一番機、離陸します』

『同じく二番機、オールグリーン。離陸開始』

『三番機問題なし。離陸する』


その図体の割には小さなエンジン音を基地に充満させながら、滑走路を走り出したSB-49はすぐに中国統一戦争の空に消えていき、空の色と完全に同化した。

管制官から『SB-49レーダーから消失』との報告を受け、通常通りに飛行していることを確認して、私達は管制塔を出た。


「あの爆弾、本当に旧式の爆弾なんデスカ?」

「ええ、勿論旧式の爆弾です。名前は確か―――」


―――大都市用特殊爆弾『幻夢』


「なんデスカ?それは...」

「海軍所属だった李さんは知らなくて当然です。空軍のものですから」


私は幻夢がそろそろ投下された頃かと思い、空を見上げた。


相変わらず、曇っていた。

近衛隊内部緊急報告:重慶市内の生物全滅、被害甚大。

華興大聯邦の重慶奪取作戦と並行して行われた国家近衛隊の■■■■■作戦において、幻夢が無許可で使用されました。報告によると七百万人が即死、その他の意識不明の重体及び生死未確認者多数。

また、この爆弾の使用により■■■■■ガス及び■■■■ガスの発生を確認しました。日本本国への飛来の心配なく、近衛隊法務部が調査中。また、旧式爆弾処理場周辺において多数の白骨化死体を確認。

職員と見て調査中。


次回『合衆国の権利と権威』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ