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記録73:中華人民代表議会

西暦二〇五一年 九月 二十日


「只今より、中華人民代表議会を開催する」


全員の拍手が鳴り響く中、ワンが登壇し、咳払いをしてから話し始めた。


「我々は、中華人民共和国から、独立した存在にも関わらず、未だ国家の名前がなかった。それ故、今、この場で、この国家の代表として伝えよう」


僕達も知らされていなかった事実に、会場全体がどよめいた。

ワンが右手をすっと上げると、全員が嘘のように静まり返って、彼の顔をじっくりと見ていた。

彼は一人ひとりの顔を確認するように会場全体を見渡した後、小さく息を吸って言った。


「華興大聯邦。これが、この国家の名前だ。これからは、逆賊にも、中華人民共和国からも、軍閥派という安い名前では、呼ばせない。異論は、ないな?」


全員が深く頷き、すぐにあちこちから拍手が巻き起こり、あっという間に会場は称賛の嵐が渦巻いた。

もう一度ワンが右手をすっと上げると、全員が嘘のように静まり返った。


「そして、ここで正式に発表することがある」


何だ、何だと全員がざわついている中、ワンは誰一人として黙らせること無く芯の通った声で言った。


「我々は、正式に、中華人民共和国に対して、宣戦布告を宣言する!勿論、他の派閥も、同様である!我々は、中華を一つに統一する!米軍の、残党の居座る、台湾もだ!いずれは、世界の覇権を握る、超大国となるだろう!」


しばらくの静寂の後、大きな歓声と拍手が巻き起こった。ワンが一瞬、僕に目配せをした。


ハッとして僕はマークしていた五人を順番に見ていった。


全員椅子に座ったままワンをじっくりと眺め、動かない。表情の際もほとんど無いが、ほんの些細な仕草から、なんとなくであるが、犯人が分かった気がした。


「ラシード、シャムシールを。そろそろだと思うから、ワンのところに急行して。私は最後のひと押しをしてくるから」

「了解。死ぬなよ」

「そっちこそ」


僕は剣の鞘を握って、階段を駆け上がった。

今、すべての観衆の目はワンに向いている。その隙をついて、反乱を起こそうと考えている人物は大胆に動き出すだろう。

まさか外部からはいっていた日本の国家近衛隊の探偵がいるなんて夢にも思わないだろう。


「さて...と」


階段の頂上から、円形になっている議会を見下ろした。今のところ、変わった様子は見られない。

ならば、僕のほうが先手を取ったことになる。この議会の入口はたった一つだ。そこから攻撃を開始する手筈になっているだろう。


僕がゆっくりとドアの横まで移動し、下の人からは一切見えないようにその場に伏せ、単眼の暗視カメラを装着した。


暫く待っていると、急に電気が落ちた。


暗視ゴーグル越しに、その一つの入口がゆっくりと音もなく開くのが見えた。

武装した数名の人間が入ってきている。合計五人程度だろうか。

全員西側、特にアメリカの最新装備をつけている。


シャムシールを引き抜いて、全員が入ったタイミングで斬りかかった。


ドサッ...


イオンに気づいた一人が、こちらに銃を向けたが、交戦距離的に剣のほうが有利であった。


二人目も処理した所で、三人目と四人目が拳銃とナイフをそれぞれ出して僕に襲いかかってきた。

一呼吸置いて、彼らの動きをじっくりと見た。


腕のしなり具合、筋肉の動く方向、足の向き、緊張具合...


矢印が、見えた。


拳銃弾の弾道を予測して一発避けた後、シャムシールを拳銃を持った男につきたて、腰のナイフを抜き取って返す刃でナイフの男も殺した。


バァンッ!


突如ライフルの音が議会の中全体に鳴り響いた。

案の定狙われたのはワンだったが、私が事前にラシードを派遣していたので、ワンは影武者と交代していた。


最後の一人の肩にシャムシールを突き刺してその場に組み伏せて、肩につけていた無線機から爆音で銃声を鳴らした。

電気が復旧しないので、僕はその男を気絶させてから、肩部からシャムシールを引き抜いて鞘に納め、次の襲撃に備えた。

ナイフと拳銃、それから予備のマガジン一個を拝借して、閃光手榴弾も一つ拝借した。


扉に耳をピッタリとくっつけて外の音を聞いた。

微かではあるが靴の音が聞こえる。恐らく相当な手練れだ。

扉の前まで来た所で、急に足音がピタリと止んだ。


危険を察知して扉から遠のくと同時に閃光手榴弾のピンを抜いて空中高くに投げた。


扉が爆薬で吹き飛ばされ、突入してきた部隊の眼の前で閃光手榴弾が炸裂した。


拳銃を使って後ろにいた一人を排除し、その後ろの人間もついでに排除した。

先頭の男が視界を取り戻す前に、私はその男の前に回り込んで首元にナイフを差し込み、男を盾にしながら後方にいた敵勢力ごと突き飛ばした。


その瞬間にアサルトライフルを先頭の男から奪い取って、仲間を受け止めたと思っている後方の敵勢力に大量の鉛玉を撃ち込んだ。


廊下から少し顔を出してこれ以上敵が来ていないことを確認してからひとり小さく呟いた。


「状況終了」


それと同時に、非常電灯がついた。薄暗い明かりの中、ワンの影武者の死体を見た人たちは慌てふためきいろんな言葉が飛び交った。

私も姿を見られたので急いでその場から離れようとしたが、すぐに取り押さえられてしまった。


眉間に拳銃が突きつけられ、今にも引き金が惹かれそうになっていた時、壇上に上がったラシードがマイクを使って大声で叫んだ。


「静まれ!皆のもの!ワン様は生きておられる!犯人は殺すな、尋問するのだとおっしゃって居られるぞ!今すぐ犯人を壇上に連れてこい!」


ラシードに一つ借りができたと思いながら、私と気絶している男は壇上に突き出されたのだった。

お読み頂きありがとう御座いました。次回もこうご期待!


次回『推理魔』

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