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記録69:第二次上海攻防戦

上海に潜伏していた近衛隊の人間に李を預けて、私は上海に入ってきていた主力部隊との合流を目指した。


周囲には戦争の匂いが蔓延している。

まだ目立った戦闘こそ無いものの、いまからここで数十万人は死ぬことになるという、事の大きさをすぐには理解できなかった。


今作戦はCIA対日情報部・米国陸軍大将であり、今はもう死んでしまったロフハーバー・クレイン(記録15参照)のサクラフブキ作戦の足がかり、その第11段階として行われる作戦である。

あと二つで最終作戦のOJE(Operation JAP Extinction)を発動できる。


この上海での作戦名は『ブラッディーシー作戦』だが、完全非公開なので、恐らく戦闘の記録しか残らないだろう。(後に日本では第二次上海攻防戦と呼ばれることとなる)


「隊長!」


ついにCode:Clawsの主力部隊と合流することが出来た。人数をパッと見たが、一人も怪我をしていない。人対人ミサイルも温存しているようで、恐らくここまで接敵したものは全て銃火器か鉤爪で倒してきたのだろう。


「ここからは私が指揮を執る」

「「「Yes,ma'am!」」」


威勢の良いCode:Clawsの隊員を横目に、私は上海タワーの頂上を見た。タワーは未だ崩れておらず、その頂上にいたはずの男はもうどこにもいる気配はない。

あんなのがこの街に入ってきていたのなら、すぐに気づくはずだ。だが、私は話しかけられるその瞬間まで気づけなかった。


一体何者だ?


「隊長、どうかしましたか?」

「ああ、少しな。この男を知っているか?」


私はヘルメット越しに隊員たちとさっきの男の顔の写真を共有した。録画機能をちゃんと活用したのはこれが初めてだった。

しかし、上手く作動していなかったようで、どの隊員も顔だけが認識できていなかった。

また今度技術部に苦情を入れておこうと思い、私は作戦に集中することにした。


「では、始めるぞ。わたしたちのいる場所は上海市西部の青浦区からまっすぐ上海に入ったところだ。別働隊が通信阻害衛生を飛ばしているから一日は猶予がある。その間に徹底的に軍を破壊し、民間人の抹殺をするというのが今回の作戦だ」

「しかし、ここまで来ておいていうのも何ですが、これは反逆ではないのですか?」


「いいや違う。これは今のブラックバード大統領に対してのロフハーバー大将からの警告だ。我々一同、彼には借りがあるからな」

「それも...そうですね。では作戦を」


正直、この作戦はやらないほうが世界のためにはなるとは、ここにいる全員がわかっているはずだった。

それなのにブラックバードを倒すためだけに第四次世界大戦が怒ってもおかしくないような作戦が立案されて、絶対に拒否できないようになっている。


これを作ったロフハーバー大将は一体何者だったのか、そして何故あんなにもあっけなく死んでしまったのか。恐らくあの男が一枚噛んでいると見て間違いないだろうが、それならばあの時、なぜわたしたちを奇襲しなかったのだろうか。


「隊長?」

「あ、ああ。すまない。では、作戦の最終確認だ。我々の成すべきことは唯、一つだ。軍人を殲滅するんだ。それも、一人残らずな。良いな?」

「Yes,ma’am」


暗い声で返事をしたCode:Claws隊員は、三人一組の部隊に分かれて行動を開始した。

私は副隊長のガートンを連れて近衛隊の本部まで急行した。



「李の容態は?」

「司令官は問題ありません。首元に少し弾丸がかすめたと思われる内出血以外はどこにも異常はありません。それに天菊戦闘郡長から直々に部隊も送られていますから」

「どの部隊だ?」

「第一降下猟兵師団第一大隊の方々がいらしています。戦局には余裕がありますし、挨拶でもどうでしょうか」

「いや、結構。わたしたちは利害の一致のみで結成された同盟軍だ。馴れ合う必要性など無い。では、私達は帰るぞ」


医務室のベッドで治療を受けている李をちらりと見てから、私達は作戦に戻ることにした。


「お、これがCode:Clawsか...案外ちっせえんだな」

「貴方は...降下猟兵の方ですね」

「ああ、俺は隊長の鬼島吉塚だ」


鬼島が私を見下ろしながら、握手を求めてきたので、私も彼の手を取って固く握りしめた。


ぎゅっと彼が力を入れきたので、私も全力で握った。


ギュ......


強い。人間の力なのか?機械で進化させた握力でも八十キロはあるはず。

その手を軋ませるレベルの握力ってなんなんだ?


「ま、こんくらいだな。諜報部隊の情報だが、サイボーグが一匹いる。気をつけろよ」

「そうですか。貴重な情報をありがとうございます」

「ケッ、つれねえ女だな。まあいいサイボーグを発見したら俺達に連絡してくれ」


なめられた気がして握っていた手を無理やり振りほどいてぶっきらぼうに言った。


「そんなもの、必要ない!我々は我々のやり方で行く」

「ははは、そうかい。なら、死なねえことだ」


部下を引き連れて、私はさっさと近衛隊基地から出た。

お読み頂きありがとう御座いました。次回もこうご期待!


次回『引き金』

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