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記録54:爆速解決、後出発。

「ラシード様!思いとどまりなされ!!」

「ん?良いじゃないか。少ししたらすぐに戻るからさ。その間はアブラハムが政務をこなしてくれれば良いんだよ。得意でしょ?」

「し、しかし...お父上が心配しますぞ」

「あの人は多分許可してくれるよ。こんなに強い護衛が付くって考えれば、核爆弾じゃない限り死なないさ」


ラシードがアブラハムを説得している間に、ウーヴが隊員たちに即時帰還を命令した。隊員は何も言わずに踵を返して帰っていった踵を返して帰っていった。こんなにすぐに帰って良いのかと思って見ていると、アレックスが僕に近づいてきて言った。


「マジで付いて来させるつもりか?」

「......アレックス。後で話があるんだ」

「おいおい、マジか?まあ良いけどさ。その話とウーヴの付き添いに、関係があるんだろ?」

「うん。だから今は少し私の言うことを聞いて」


アレックスは頷いて下がった。


ラシードの方も、方がついたようで、アブラハムが恐縮して頭を下げながら僕に言った。


「どうか、どうかラシード様をよろしくお願いいたしますぞ」

「ああ、分かってる。彼のことは責任を持って私達が見守っておくよ」

「そう言ってくれると嬉しい限りですな」


アブラハムは笑って、少し準備をしてくると言って、部屋の外に出た。僕はトイレに行ってくると彼らに言って、アブラハムの後を追った。


前々から気になっていたのだ。ラシード家の金庫を開けられるのは彼の父親だけ。なのに、なぜか開いていた。父親の不在の中、金品も取られること無く、ただ監視カメラが破壊されて金庫が解錠させられたなんて話、ある訳がない。

きっとなにか大きなことが裏に隠れている。


彼の後を追っていると、彼はなぜか金庫へと続く道に入っていった。僕は諜報活動でよく使用する小型の自律型マイク付きカメラを彼の後に忍ばせた。


手元の携帯のアプリからその様子を確認していると、急にラシードがそれを覗きに来た。

声を出してアブラハムに何か勘付かれてもいけないので、彼の口に手を当てて黙ってもらっていた。


アブラハムは周囲をキョロキョロ見た後、金庫の扉の前で、なにかゴソゴソとして金庫を開けた。


その瞬間にラシードが扉を蹴破ってアブラハムの背中に携帯していた剣をつきたて、引き抜き、怯んだ所で首を刎ねた。

一瞬だった。何もかもそっちのけで、これまでに強いものがいたのかと感服してしまった。


一瞬でできた血溜まりに倒れ込んだアブラハムの死骸に剣を突き刺し、ラシードは警報装置を作動させた。すぐに使用人たちが勢揃いでやってきて、ラシードがアラビア語で経緯を説明した。


どうやらあとから聞いた話によると、あの扉を開けたものは誰であれ処刑されるとのことだった。

それにしても長年付き添ってくれた人が盗みを働くなんて、と思っていると、彼は死骸の服を剥がして背中を見てため息をついた。


「偽物だね。やっぱりだ」

「偽物?」

「ああ、本物はもうとっくに死んでる。アブラハムは第三次世界大戦の中東戦争で、避難を指示した英雄だったんだ。ねえ、アブラハムの剣はどうだった?明日香はその剣を受けたんだろ?」

「何ていうか、強かったけど、重くはなかったかな...?」

「そうだよね。本来の彼なら鉄筋コンクリート造りの壁に穴を開けるくらいは出来たんだ。老化と思っていたんだけど、まあこれで決心がついたね。ありがとう。あとはあいつのスマホを解析して関係者を家族ごと処刑するから、明日香はもう戻ってて」

「分かった。またなにかあったら言うんだよ」

「そうするよ」


ラシードとは別方向に歩き、僕はアレックスたちの待つ部屋に戻った。彼らに事情を説明しているとラシードがひょうひょうとした様子で戻ってきて言った。


「これで僕の邪魔をする人はいなくなったね。これで僕も同行できる」


猛烈な切り替えの早さに驚いたが、断る理由もないので、僕は彼が一緒についてくるのを了承した。


突然、ウーヴが思い出したように言った。


「移動手段は、どうするのですか?明日香さんが何処の派に与するかで移動方法も変わります。中東は補給が少なすぎて危険ですから、海路か空路...海路は撃沈の、空路は撃墜の可能性もありますがどうしますか?」

「ウーヴの言う通り、実質的に一択しか無いと見えるだろう。シベリアを抜けて中国に入るのは正直期が進まないし、何より、合衆国もロシアも、私を狙ってるんだ。君たちCode:Clawsは別任務、つまり方舟対処に当てられてるから何も知らないだろうけど、時々天菊から聞く話によれば、CIA総出で私を殺しに来てるんだってさ」

「じ、じゃあどうするんだよ?」


アレックスが戸惑いながら聞いてきた。僕は彼の顔を見てニヤッと笑って言った。


「豪華客船に乗り込む。世界中の財閥の人間が乗る世界一周ツアーの時期に被せて行動するんだ。時期的にもそろそろスエズ運河を通過する頃だろうから、その前にアレクサンドリアに停泊する時に乗り込む。流石に度の国も金持ちの乗った船を撃沈する勇気はないだろうしね」

「なるほど、それなら問題ないが...身分証はどうする?」

「中峰」

「ああ...察したぜ。全く、大変だな、あの女も」


そうと決まれば話は早い。僕は中峰に連絡を取って、五人分の偽装したパスポートと身分証明書を受け取った。


そして、出港の日。


船に乗り込んだ僕達は、とある人物から武器をもらった。


「ラシードを、頼んだぞ。探偵たち」

「はい。お任せ下さい、ファールキー様」


アル・ハラータの最高指導者から最新鋭の武器をもらった僕達は船に乗り込んだ。


武器は拳銃で、分解、組み立てがしやすく、一発一発がライフル弾頭を使用しているため貫通力も高い代物である。見たこともない拳銃だから、この共同体特性のものだろう。

技術者はイスラエルからパクってきたに違いない。


いつもの服装に着替え、拳銃を腰のホルスターにしまい、僕は部屋を出た。

部屋の前に待機していた、EVの士官用制服を着たアレックスは、僕を見て「やっぱりその格好だな」と言った。

僕は君も似合っているとだけ言って、甲板に続く道を歩いた。

お読み頂きありがとう御座いました。次回もこうご期待!


次回『諜報員の諜報』

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