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記録36:正しい記憶

※カメラマンはウーヴです。


銃器フィクション・ウェポン解説 XM11

使用弾薬は前作のXM7から変わらず7.62mm弾を使用し、弾薬の形状はより空気抵抗の軽減されたものになった専用の弾丸を使用し、弾頭内部にはホーミング機能をもたせた部品が存在する。。

無人機の発達により、歩兵部隊は精鋭のみの特権になったためこのようなコストの大きい銃を使用する。大量生産向きでないので、一艇一艇丁寧に作り上げられている。

積んでいる制御回路は世界一のもので、照準器のとおりに打てば、まず当たり、少し外れても弾丸のホーミング性能で命中する。

「記録開始」


ウーヴがカメラのスイッチを押した。

他のフルフェイスヘルメットを被った隊員たちがそのカメラを物珍しそうな様子で眺めている。彼女はそこを静止し、こう言った。


「これから北朝鮮の核ミサイルの発射を食い止めに行くんですから、気を引き締めて下さいね」

「そうだ。お前らの一人でも死んだら、オレは容赦しねえからな」


急に後ろからCode:Clawsのトリガー隊長が現れて皆に呼びかけた。全員はぴしっと気をつけの姿勢を取って彼に敬礼した。もちろんウーヴも例外ではない。

彼が手を小さく上げると全員は手をおろした。トリガー隊長が作戦内容について話しだした。


「今回の作戦はさっきウーヴも言ってくれていた通り、北朝鮮の核ミサイルの発射を未然に防ぐことだ。ただ防ぐだけじゃあ意味がない。ガートン、なぜか分かるか?」

「...今作戦には裏の作戦があるからです」


ガートンの返答に、トリガーは顔をしかめて言った。


「それを言うなよ。カメラの前だぞ?正しいことを言っちゃ後世の人間にバレた時どうするんだ」


冗談を飛ばしているトリガーを横目に、ウーヴは持っていた銃に目を落とした。


『XM11』通称、M11と呼称されるこの銃は、XM7の次の歩兵用小銃だ。強力な7.62mm弾はそのままで、性能てんこ盛り。一艇の価格で高級車が買えるような代物だ。


「ま、良いだろう。そろそろ行くぞ」

『Yes Sir!』


トリガーの掛け声に部隊が声を上げた。

そして全員光学迷彩マントを被って平壌の街に潜伏を開始した。



西暦二〇四八年 三月八日 日曜日 午前三時ゼロ分 作戦『Operation:Snake』開始


光学迷彩を纏った数名のCode:Claws隊員が平壌市内の軍事基地に潜入し、それと同時並行でミサイル発射機地に潜入する部隊、本部と連絡を取り続け、陽動作戦を実施する部隊で別れた。


「隊長、本当に三人でいいのですか?」


無線機で隊長に呼びかけた。トリガーの部隊は彼とウーヴ、それからガートンの三人でこの作戦の裏の目的のために行動していた。

今回の裏の目的は『カリスの方舟』のスーパーブルームーンの発動条件の調査だ。


観測と予測によると、平壌の柳京ホテルに一日だけ準備のために方舟の主要メンバーが集まるとのことだ。しかし、そこには日本軍も来る可能性が高く、米国が先に彼らをどうにかしなければ日本軍がどうなるか分かったものではない。


ということで、日本軍には悪いが、こちらの万全を期すためにも、一部の米兵には、日本軍に非殺傷弾を用いて戦ってもらい、一時間ほど時間稼ぎをしてもらっている。


そして、ウーヴたちは誰にも勘づかれること無く柳京ホテルに入ることが出来た。


カメラにはまだ何の不調もなく、ウーヴたちは光学迷彩マントを脱いで鞄の中に入れた。


熱源感知サーマル


ウーヴの声にカメラはサーマルモードに切り替わった。この時、彼女のヘルメットから見える景色も同様にサーマルモードに変化している。

トリガーだけが警戒のためにサーマルモードを使用していなかったが、ここでも特に不審な動きはなかった。


「上に行くぞ」


エレベーターは粗悪で、いつ壊れるかもわからない。第一、電気が通っているかも分からない。

だから、ウーヴたちは階段で移動した。

コンクリートがむき出しになっている階段と壁を伝って、最上階近くまで来た時だった。


「おや?こんな所に来客さんですか?」


窓枠の前に立つ一人の女がいた。周りに護衛の人間など入る様子もなく、彼女は月を見上げていたようだった。振り向くと同時に、トリガーが銃口を彼女に向けた。

しかし彼女は全く怖がる様子すら見せず、むしろ嬉しそうな顔をしていた。


トリガーは銃をおろして彼女に言った。


「お前、誰だ?まず、人間か?」


彼女は微笑み、そして口角を上げ続け、時期に頬の高さ程度まで皮膚が裂けてしまった。しかし血は出ておらず、その裂け目は黒いものが蠢いていた。


「ショータイム、ですね」


彼女がそう言った瞬間、トリガーの腕は宙を舞った。

ウーヴとガートンが急いで銃を構え、応射した。マガジン一つまるっきり撃ち尽くしても、彼女の体には穴が空くばかりで、微動だにしなかった。

そして、昂った声で言った。


「自己紹介、しますね。私は―――」

「カリスの方舟、第Ⅳエージェント、ケセド」


ウーヴたちの後ろから、声がした。ウーヴが後ろをむくと、そこには日本軍の幹部服を着た女性がいた。彼女は後ろについて付いて来ていた部下に、トリガーの治療と後方への輸送を命令した。

ガートンが彼女に銃口を向けた瞬間、彼女は胸元から銃を取り出して撃った。


「あ゛っっ...!」


ウーヴの後ろで、痛みに悶えるケセドの声が聞こえた。

振り向くと、彼女は腹部からどす黒い何かを流していてすぐに地面に倒れ込んで呻いていた。


「安心して下さい。お二方とも、私は日本軍第二十歩兵連隊の一時的なトップを務めています、天菊桜と言います」

「...トップ?貴女、階級は?そして、途中の米兵たちはどうしたんですか?」

「階級は中尉です。途中の米兵たちのことについては、安心して下さい。催涙ガスを迫撃砲に詰めて、大量に打ち込んでやれば大人しく投降してきましたよ。全員無傷です」


彼女の笑顔に、ウーヴの銃を握る手の力が少し抜けた。


その瞬間、天菊は銃をガートンに向けて発射し、それからすかさずウーヴに向かっても発射した。


「どう...してっ!?」


ウーヴが地面に倒れ込んだので、彼女のカメラは地面を映し出して真っ暗になった。

しかし、そこで映像が終わることはなく、今度は天菊がカメラを付けた。そして、地面に倒れ込んでいるケセドの髪の毛を掴んで顔をカメラによく見せた。

依然として鋭い眼光を持っている彼女の顔面に、天菊はもう一発弾丸を撃ち込み、下顎を消し飛ばした。


声にならない音を上げているケセドを殴り飛ばし、窓枠の前に置いた。


そして窓を縦断で割った後、天菊は胸元から注射器を取り出してケセドに差し込み、その体液を吸い取った。それから彼女は自分の体内にソレを流し込み、小さくため息をついた後言った。


「それでは、さようなら。また、どこかで」


天菊はケセドを蹴り飛ばた。すぐにカメラからはケセドの姿は消えて、カメラは天菊を映し出した。彼女は恍惚とした表情で呟いた。


「これで、あと一つです」


そして、最後に本当に小さな声で言った。


「期待していますよ。山原さん」


そこでカメラの映像は停止した。



「これが何だって言うんだ?」


僕はウーヴに聞いた。彼女は僕の方を見て言った。


「天菊戦闘群長。彼女は、恐らくもう人間ではありません。恐らく人類規模で秩序を狂わせにくるようなことを考えています。そうでなければ、エージェントの体液を躊躇なく体に打ち込んだりなんてしませんよ」

「私は、天菊のことはよく知っている。彼女のやろうとしていることだって、おおよそ見当がつくんだ」

「なら、それを阻止しようとは思わないんですか!?」

「阻止はするかもね。私が不利益を被る場合のみだけど。それ以外で、世界の秩序やら何やで彼女と戦うのはあまりにも無謀だ。私だって死にたくないんだ。それに、第一、この世界の秩序なんて、君たち合衆国の作った玩具でしかないだろ?人類に平和をもたらすどころか、三次大戦を巻き起こした、大罪人の国の所業、ナチスと一緒だ」


適当なことを言ったなとか思いつつも、僕は椅子に深く座った。ウーヴは持っていた鉤爪を僕の喉元に当てて低い声で言った。


「次は身体検査です。私以外の前で、このようなことを言うことは禁止します」


僕の腕を強い力で掴んだ彼女に引きずられるようにして、僕は部屋から出されて、今度は別の部屋に向かわされた。

組織解説 Code:Claws

Code:Clawsが世界最強の部隊となったのは戦後のことで、戦時中は半改造人間程度だった。カリスの方舟の実力を知ってからは米国も危機感を持ち、徹底的に強化された人間を作るためにCode:Clawsの隊員を人外レベルにまで改造した。


お読み頂きありがとう御座いました。次回もこうご期待!


次回『カチコミ申す』

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