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ひとりぼっち吸血鬼とその下僕  作者: 亀レオン
下僕のお仕事
4/5

王の下僕、半吸血鬼ロザイ

周りに何も無く、ポツリと建てられた城の前で一人の女性が城を見上げていた。


「ここが吸血鬼が住む城かーやっぱり雰囲気あるわね」


ブロギンド王国消滅から7年。あの事件から吸血鬼に怯える者が一気に増加し。吸血鬼が邪龍と並ぶ第一級特別異端者に認定された。つまり強すぎるから戦うなという事だ。


そして私はそんな吸血鬼を倒す為にわざわざランラインからこの夜孤城までやって来た。そして当然ながらこの夜孤城に来る事は禁止されている。当然親にも反対された。なので今日は親に内緒でこっそり来ている。


何故来る事すら禁止されているのかというと大まかにいうと危ないからと吸血鬼を怒らせない為だ。

ブロギンド王国消滅事件でブロギンド王国があった場所は吸血鬼の王によって跡形も無く消され、魔力が溢れかえる場所になり、今では沢山の魔物で溢れかえっている。そのせいでここに来るまでが苦労した。本当に迷惑だ。


そして何故私が吸血鬼を倒しに来たかというと、昔吸血鬼の城にあった、かなり美味しいらしいお酒をお爺ちゃんにプレゼントするためだ。

お爺ちゃんは吸血鬼と人間の仲が良かった頃の話をよくする。そしてその中に出てくる吸血鬼のお酒の話はよく聞かされた。今でもそのお酒の味は忘れられないようだ。


一週間後はお爺ちゃんの誕生日。なのでお爺ちゃんには魔法の使い方や剣の扱いを教えてもらった、そのお礼として吸血鬼を倒して、お酒を貰いに来たのだ。


(よし、入るか)


そしてその若い女性は城のドアを堂々と開けた。


「頼もうー」


「え?」


大きなドアを押し開けると、中は外の古風な外見と違い、意外に現代風に整理整頓されていた。

そしてそこにはスーツを着た黒髪の男が箒を持って、まるで不審者でも見るような目でこちらを見ていた。


アレ?確かお爺ちゃんが吸血鬼って、小さな少女って言ってたような。でもこの人はお爺ちゃんと言ってた特徴とは全然違う。羽は生えていないし、目も赤く無い。性別も違う。強いて言えば髪の色が黒色という点のみだ。


頭が?で溢れていると、箒の男が首を傾げて、不思議そうな顔をしていたが、何か閃いたような表情に変わった。


「おー珍しい、こんな所に迷子が来るなんて、そんな事もあるんだな」


「??」


男は箒を持ったまま近付いてきた。女性はとっさに腰に掛けた剣を握り身構えた。すると男は軽く手を挙げて。


「違う、違う、何か攻撃するつもりは無い。ここは怖い人の家だからな。あまり遠くまでは行けないが途中までなら送ってやる」


「........!!」


今、やっとこの男の言葉の意味が理解できた。


「........ん?どうしたんだ?」


「私は.....迷子じゃ無い」


「はいはい、わかったわかった。迷子じゃ無いんだな、取り敢えず町へ送ってあげるから安心しろ」


そう言ってその男は女性を通り抜け、閉まった大きなドアをもう一度開けた。


「だから違う。私は迷子なんかじゃない。私はここに吸血鬼を倒しに来たのだ」


「はいはい、わかったわか.....えっ!?」


男は大きく目を見開いて、そして驚きのあまり持っていた箒を落としてしまった。

普通そこまで驚くか?と女性が不思議に思っていると。何故か説得するような口調で。


「君、ってまだ子供だよな」


確かに私は身長が低く、若く見られる事が多いが、子供に間違われることは流石にほとんど無い。この年でたった二度ほどだ。


「違う。私はもう18才で、立派な大人だ」


「え、年上?」


「まさか年下なのか?」


改めて見ると背やスーツのせいで大人びて見えるが、顔を見ると確かに若い。若いと言ってもそこまで私と年は離れていないと思う。


「一応だが、本当に覚悟があるんだな、負ければ対価を頂くぞ」


チラシと見えた男の目は真剣そのものであった。

女性は一瞬顔をひきつらせたものの。すぐに表情を戻し。


「ああ、勿論だ」


この男がいう対価とは「命」という意味であろう。

私とて遊び感覚で来た訳では無い。本気で命の取り合いをする覚悟で来たのだ。


男は箒を拾い上げ、開けたドアを閉めた。そして女性の目の前に立ちふさがり。


「そうか、なら悪いが、ここから先は通すわけにはいかない、カイミサナにも言われているからな」


女性は再び剣を構え。全身に補助魔法を施した。


「ほう、やっと話が分かったか、では行かせてもらうぞ」


男は箒を担ぎ、首をぐるりと回した。


「なら、戦う前に名を聞いておこうか」


「私の名前はサラナだ、お前は?」


「俺はこの夜孤城の門番であり、この城の主の下僕でもある、名はロザイ」


その男は軽く指を鳴らし、首に担いでいた箒の端を握り、箒の筆をこちらに向けてニヤリと口角を上げた。


「さぁ、来い」


「舐めているのか?いくら何でも箒ごとき......」


ロザイはサラナが喋り切る前に地面を強く蹴りあげた。そしてサラナに向かって箒を振り下ろした。


速い


サラナは急な動きに戸惑ったが、なんとかギリギリで横に飛び込むことで回避することに成功した。


「ほう、よく躱したな、なかなかやるじゃねぇか」


サラナは再び剣を構え、ロザイに向けて剣先を向けた。

あの箒はもしかすると魔法で強化された特別性のなのだろう。それじゃないと真剣相手に箒で戦うなんて絶対にしない筈だ。

しかも補助魔法無しでこの速さ。油断すると一瞬で殺られる。


サラナは身を引き締め、剣を更に強く握った。


「行くぞ」


ロザイはまた同じように襲いかかってきた。

ロザイはサラナに向けて飛び込み箒を振り下ろした。サラナは剣で防ごうとすると。


パキっ


「あっ、やべ」 「え?」


振り下ろした箒はサラナに剣の刃に当たり、いとも簡単に折れてしまった。


「やっぱりただの箒じゃんかよ!」


サラナは怒りに任せ思いっきり剣を振るったが、ロザイは折れた箒を拾い上げ後ろに飛び下がり、軽々とサラナの攻撃を躱した。


行動事態はふざけているが、やはりスピードは異常に速い。そしてさっきの一撃も、とても箒とは思えないぐらい重かった。どう考えても人間とは思えない。


「ロザイだっけか、お前本当に人間なのか?」


その男は顎に手を当て。


「いや、俺はもう人間では無いな、って言っても完全な吸血鬼って訳でも無いし。うーん、言わば半吸血鬼って所だな」


半吸血鬼?お爺ちゃんの話でも聞いた事が無いな。だからと言って嘘を付いている訳でもなさそうだし。一応私より年下らしいし。


「ヤバいな、箒折られちまったか。剣士相手に素手っていうのは流石にキツいしな。.....いや、待てよ」


ロザイは一人でにそう呟くと折れた箒を片方ずつ握り。


「普通よりリーチが半分だが、攻撃回転数は二倍。......いける」


取り敢えずこの馬鹿に負ける訳にはいかない。


 



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