表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
笑顔で心を折る籠絡士〜救った最強ヒロイン達と共に聖教会に復讐ざまぁを叩きつける〜  作者: 秋風ゆらら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/8

第8話 手紙


「教会の職員が協力したいって言ってくるなんて、どう考えても罠ね。」


 ノクティスの拠点、広間。

 険しい表情を浮かべたイレーネの視線の先には一通の封書がある。教会の紋章が刻まれた赤い封蝋が、鈍く光っていた。

 

「届いたのは教会の内通者からだろ?本当に困ってるのかもしれないぞ。しかも差出人は女の子みたいだし……。」


 ライネルが口を挟む。

 イレーネはライネルの言葉を無視し、カイルに尋ねた。


「あなたはどう思う?差出人はあなたの知り合いなんでしょ?」


 カイルは黙って封書を手に取る。


 手紙の差出人はティーナという教会職員の女性だった。教会の職員の中では珍しく、カイルに対しても友好的に接していた職員だった。教会の体制に疑問を持っており、しばしばカイルにその話をしていた。教会のはぐれものであるカイルならば、話しても問題ないと考えていたのだろう。


 カイルは筆跡を青い目でじっと見つめる。


「流石のあなたでも筆跡から相手の感情までは読めないわよね?」


 試すような目でイレーネはカイルを見る。


「……うん。字に現れる筆跡の乱れが、本人の書き方の癖なのか、感情の揺れによる筆跡の乱れなのか分からないからね。」


 穏やかにそう言って、カイルは手紙を卓上に戻した。


「確かにティーナは俺の知り合いだ。教会の体制に疑問を持っていたのも事実。本気で協力したいと思っているのかもしれない。」


「……危険すぎます。」


 静かな声で口を挟んだのはノアだった。

 

「セイラさん、グレイスさん、マリナさんを取り戻したい教会はカイルさんを狙っている。そんな状況でカイルさんを呼び出す手紙が来た。この人の手紙は本物かもしれません。それでもカイルさんが行くべきではないです。」


「どうしても行くなら私も行く!」

 

 セイラが声を上げた。


「私も。」


とマリナが続く。


「……カイル、一人で行く気?」


 グレイスが腕を組み、じっと彼を見つめる。


 カイルは少しだけ目を伏せ、即答した。


「俺が行く。一人で。」

 

 カイルは迷いのない声で言う。


「罠かもしれない。でも、もし本物だったら、見捨てたくはない。俺たちは教会に抗う意思を持つ人達のための組織。そうだよね?」


 その言葉に場が静まり返る。


「それに……大人数で行けば、ティーナはきっと警戒する。そうなれば協力関係は築けなくなるかもしれない。」


 イレーネが小さく息を吐いた。


「……つまり、あなたが最も危険を承知で行くのに向いていると。」


「そういうことだ。」


 カイルは軽く頷く。


「ダメよ!私は絶対に一緒に行く!私なら何かあってもカイルを守れる!」


 セイラが机を叩いて叫んだ。


「……考えがあるんだな?カイル。」


 話を黙って聞いていたドグマが口を開いた。

 目が合う。カイルは全く表情を崩さない。


「…………。」


 ドグマは一つ息を吐く。


「行かせてやれ。」


「……ちょっと、ボスまで!」


 セイラが明らかに不満そうな声を上げたが、ドグマに睨まれて黙る。


「大丈夫。危険を感じたらすぐに引くよ。」


 カイルの笑顔は穏やかで、けれどどこか、冷たく静かな覚悟を孕んでいた。



◇◆◇◆



 カイルは自室で手紙を見下ろしていた。

 整った筆跡で書かれていたが、その奥にある感情をカイルの目は正確に捕らえていた。


(……普通、敵対組織に協力を申し出る手紙を書くなら、多少は恐怖が滲むものだ。それなのにこの手紙の筆跡からは恐怖が全く感じられない。むしろ微かに滲む感情は、期待や喜び。)


 カイルは目を細め、手紙を折り畳む。


「お前、嘘ついたろ。みんなには『手紙から感情は読めなかった』って言ったけど、本当は最初から分かってた。これは罠だって。」


 ユユがため息混じりに言った。


「……籠絡士が嘘を見抜くのは当然だろ?恐らくこの手紙を偽装したのはローザだ。」


 ユユは呆れたように笑う。


「籠絡するためなら罠だって分かってても突っ込む。お前は本当に籠絡士の鑑だよ。まぁ、あの大男ボスはお前が嘘ついてること、勘づいていた気がするけどな。」


 皮肉を込めた声でユユが言うのをカイルは黙って聞いていた。

 しばらくの沈黙のあと、低く答える。


「俺が彼女を救えるなら、それが一番平和的だろ。」


「お前、ほんとそういうとこブレねぇな。嘘をつくのも、結局は誰かを救うためか。」


「…そのためなら俺は手段を選ばないよ。それが、リリアナの願いだからね。」


 カイルは淡々とした口調の中にも、微かに優しさを滲ませた。


「罠でも、そこに救える可能性がある相手がいるなら、行く価値はある。俺の技はそのためにあるんだから。」


「……そういう理屈っぽい優しさが、一番危ねぇんだよ。」


 ユユはひょいと跳ねてカイルの肩に飛び乗った。


「……俺はついて行くからな。」


「危険だぞ。」


「知ってる。いつものことだろ?お前が救うつもりで地獄に踏み込むなら俺も一緒に行く。」


 カイルは苦笑し、肩に視線をやった。


「……ありがとな、ユユ。お前がいると、俺の行き過ぎを止めてくれそうだ。」


 ユユは得意げに鼻を鳴らした。


「お前を見張るのが俺の仕事だからな。」


 カイルは静かに頷き、手にしたランタンの火を見つめた。


「行こう。」


「おう!」


 指定された場所は聖都のはずれの森。カイルは拷問の女王の罠が待つ闇夜へと踏み出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ