1年後② 蓮視点
ゆっくりと水族館をめぐり、2人は水族館を後にした。
「ねぇ、あの公園に行かない?」
「いいよ。」
八瑠佳が言ったあの公園といえば、一つしかない。
俺が一度は八瑠佳を拒絶した場所でもあるし、俺が八瑠佳に告白した場所でもある。
「けど、今日はなんでここに来たいと言ったの?」
「付き合ってちょうど、1年経ったし、私たちの思い出を振り返っておきたくて・・・」
八瑠佳はベンチを見ながら、話す。
「ここだよね。蓮君が待ってくれていた場所って・・・」
「そうだ・・・ここだ・・・懐かしい・・・」
「ねぇ、もしあの日私が来なかったらどうした?」
「・・・」
即答するはずだった「次の日も待つよ」って言うはずだった。しかし、俺はすぐに答えることができなかった。
同じことを聞かれた時のことがフラッシュバックしたからだ。
「八瑠佳が来るのをいつまでも待つよ。」
「・・・うん。ありがとう。すごく嬉しい。」
八瑠佳は嬉しそうに、笑う。
「でも、蓮君が風邪ひいちゃったら困るかな・・・」
「あの時は、そんなこと頭になかったな・・・」
あの日の心情を八瑠佳に話すのは初めてだった。
「もし、八瑠佳が来なかったらどうしてたかな・・・終電には帰って、次の日の仕事が終わったらまた来るかな・・・でも、俺はあの日八瑠佳が来なかったらそれはそれで良かったんだよ。」
「どういうこと?」
「俺はあの日待つのは、八瑠佳を傷つけた罰だと思っていたんだ。なのに八瑠佳は10時間で来ちゃんだよね・・・」
「10時間も待ったらそれは、十分罰になっているよ。」
八瑠佳は優しく微笑む。
「それに、あの日蓮君に拒絶されたからこそ、私は自分が蓮君のことを考えていないことに気づけたんだよ。今まで、言えなくてごめんね。」
「八瑠佳・・・」
「私の方が罰を受けるべきだったのかな・・・?」
「そんなことない!俺も罰を受けていないし、お互い様だよ。」
「そっか・・・」
八瑠佳はまだ何か言いたそうだったが、俺はこれ以上八瑠佳に悲しい顔をしてほしくなかった。
「こんな話やめよう。今日は記念日なんだし、楽しい話をしたいな。」
「・・・うん。そうだね。」
「今日水族館に行くことになって、少ししたいことがあって・・・」
「何?」
「改めて、八瑠佳に伝えたいことがある。」
俺は深呼吸をする。
「八瑠佳、俺は八瑠佳さんのことが好きです。これ受け取ってもらえるかな?」
俺は小さな箱を八瑠佳に渡す。
「ええ・・・急だよ。開けていいの?」
「どうぞ。」
八瑠佳は渡した、箱を開ける。
「キレイ・・・」
中にはネックレスが入っていた。桜をモチーフしたデザインだった。
「付き合って1年の記念として受け取って欲しい。」
「・・・・・ありがとう・・・すごく嬉しい。」
「良かった。受け取ってもらえて・・・」
「・・・私、蓮君からプレゼントされたら、なんでももらうよ。」
「それはそうなんだけど・・・八瑠佳ってあんまりおねだりというか、俺に何か買ってほしいって言わないじゃん。」
八瑠佳から、何かを買って欲しいと言われた記憶は蓮は一度もなかった。だいぶ前になるけど、誕生日何が欲しい?って聞いたら八瑠佳がなんて答えたか覚えている?」
「うん。一日中一緒にいて欲しいって言った。」
「彼氏としてはものすごく嬉しかったけど、俺としては何か形になるものを渡したかったんだよね・・・」
「あー。だから、アクセサリーショップに連れていったんだね・・・」
「うん。」
「でも、八瑠佳は今はいいよって言って、店から出ていったんだよね・・・」
「そうそう。」
「この際だから言うけど、もっと俺に甘えて欲しい。頼って欲しい。」
「わかった。私、男性の気持ちわかってないね・・・これからはもっと甘えるようにする。」
「うん。」
「じゃっ行こう!」
八瑠佳は歩き出す。
「あ・・・私も言うことあったんだ。」
「何?」
「私も蓮君のこと好きです。こんな私に1年も付き合ってくれてありがとう。これからもよろしくね!」
「・・・うん。こちらこそよろしくお願いします。」
「あー珍しく蓮君が照れてるー。」
「照れてませんー。」
俺は八瑠佳を追い越していく。
八瑠佳は後ろから、俺の腕に絡んでくる。
少し照れくさいと思いつつ、蓮は幸せを感じていた。
幸せを感じるたびに、俺は同時に罪悪感を感じる。
俺は神谷さんとのキスを言えていないことがずっと引っかかっていたことが原因だろう。
1年も経ったのにだ・・・本当に俺はどうしようもない。
そろそろ前に進まなければならない・・・たとえ、八瑠佳との未来が途絶えてしまっても・・・




