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失ったものと傍にあるもの



「さて、サクラ。病気の進行があまりにも早い。1度症状を整理するか。」

「そうですね。」

あの火傷から3日。結局火傷は癒えることなくケロイド状の痕となってしまった。

あの事件も大事にしてほしくないとグレン様に頼み込んだため報復はされていないようだ。

そして今日、保健室に訪れたのは病状を整理するため。先生の手元にはカルテが置かれていて、私の病気について記録されている。

そのカルテと突き合わせながら記録の抜けがないか調べる。

「今までで何か新しく気付いたことは?」

「そういえば、色が消える前に音がするんです。パチンと。そしてまるでスイッチが消えるように色が消えていきました。」

「…それ、大事な事だろう!」

「ご、ごめんなさい…」

「あー…悪い。けど、その音が合図だったのかもな。色が消える。その前に何かなかったか?変わった行動をした、とか」

「…………ありません。」

「そうか…何か思い出したらすぐに言えよ?じゃ、確認していくか。最初に色が消えたのは、一月前か。」

「はい。黄色でした。気付いたきっかけはタマゴサンドです。」

「その時気になったことは?」

「いえ…ありませんでした。」

5人で食事を摂っている途中で気付いたけれど、原因はわからなかった。

「次はオレンジ色か。」

「確か、黄色が消えてしばらくしてから…妹が転入してしばらくしてからです。クラスの方の髪色が黒く見えました。そして、紫色も。」

「その日は覚えている。サクラが保健室に飛び込んできたからな。」

「あのときは、失礼しました。気が動転していて。」

「まぁ、突然色が消えてしまえばそうなる。」

ほんの1ヶ月前のことなのに、もう随分前のことに感じてしまう。

「そのあとは緑と茶色か。しばらく間が開いたのにこの2色は同時だったな。」

「ジェイト様にもこの病気がバレてしまいました。」

「俺は良かったと思うがな。知っている人間が増えればそれだけフォローもしやすくなる。」

「私は、バレたくはなかったです。」

「…そのあとは青か。お前が無茶しすぎて死にかけた。」

責めるような眼差しに気まずくなり目を逸らす。普通よりも多いと思っていたのに、枯渇するほど魔力が消費されていたことに気付かなかった。

「あれからは気を付けてます。」

「ロストカラーシンドロームと魔力の因果関係はわからないが、見えないということで何らかの影響が出るのかも知れないな。」

ロストカラーシンドローム→魔力の消失と書き込まれて下線が引かれる。

「そして、最後に赤です。」

そう言うと先生の顔が歪む。

「…悪い。癒せなかった。お前の肌に痕が…」

「先生、謝らないでください。先生のせいじゃありません。私が火属性の魔術が使えないことに気付かなかったこと、魔術解除に時間がかかってしまったこと、色んな偶然が重なっただけです。それに、謝るならこの痕をつけた人間が謝るべきです。」

光魔術で痕を癒そうにもなかなか消えない。ただ、この痕を殿下がどう思うか。少し不安で怖くもある。

けれど、その反面、この痕で婚約解消となるなら…殿下と妹が、婚約となるのならそれはそれでいいのかもしれない。


「使える魔術は光と闇。見えない色の方が多い状況だ。絶対無理はするな。何かあったら…小さなことでも保健室ここに来ること。いいな?」

「わかりました。」

「あの時みたいに遠慮はするなよ。俺はお前のことを気に入っている。」

「はい。何かあったら先生を頼りにさせてもらいます。」

たくさんなくした。

色も魔術も信頼も………愛も。

でも、

心配してくれる人がいる。

私の為に怒ってくれる人がいる。

それでいいのかもしれない。




本当に?


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